[サマリー]
・職能資格制度とは、職務遂行能力をレベル化し、等級化する制度のことです。
・職能資格制度はポストや賃金水準に縛られすぎずに人事異動を行うことができるため、人事異動との親和性が高い等級制度であるといえる




職能資格制度とは、等級制度といわれる人事制度のコアとなる制度です。等級制度には職能資格制度以外にも職務等級制度、役割等級制度などがあり、それぞれ特徴が異なります。

今回は、職能資格制度について、人事異動に適しているのかどうかという関係性を説明したいと思います。

職能資格制度と人事異動

等級制度とは?

等級制度とは、地位の序列などの階層区分を等級ごとに区分して人材マネジメントを行う制度のことを指します。 等級 =階層ということなので、等級によって地位序列の上下が生じます。

等級制度には大きく分けて、「人基準」「仕事基準」「業績基準」の3つの制度があります。なにによって等級を決定するかという違いで分類されます。今回説明する職能資格制度は、人基準の等級制度です。

等級制度について更に詳しく知りたいという方は、以下の記事をご確認ください。
等級制度とは?等級制度の定義


職能資格制度とは?

職能資格制度とは、職務遂行能力をレベル化し、等級化する制度のことです。

これが、「人基準」の等級制度に分類される所以です。職能資格制度はその人が持つ能力そのものに着目して、等級を決定しようという制度なのです。

ちなみに「職能」とは、職務遂行能力のことです。職務遂行能力によって等級が決まるから「職能」資格制度という名前だと思ってください。


次に、職能資格制度のメリットとデメリットを説明します。

職能資格制度のメリット:柔軟な賃金制度の運用

職能資格制度の大きなメリットとして、賃金制度を柔軟に運用できるというのが挙げられます。

例えば、仕事基準の等級制度と比較してみます。仕事基準の等級制度(例えば職務等級制度)とは、その人が担当する仕事によって等級を決定しようという等級制度です。逆に言えば、担当する仕事が変わらなければ、賃金が変わることもありません。

では、職能資格制度ではどうでしょうか。職能資格制度では職務遂行能力によって等級が決定するため、どのような仕事をこなしているかは等級と無関係です。極端なことを言えば、能力が高い人であれば、どんなに簡単な仕事をこなしていても高い等級となるのです。このように、職能資格制度では仕事と無関係に等級が決まるため、会社としては社員の能力向上に見合った賃金アップを設計していくことができるのです。


職能資格制度のメリット:能力開発との整合

職能資格制度とは、職務遂行能力(=職能)で等級を決定する制度だということを先ほど説明しました。この制度の背景には、仕事の慣れや能力開発による等級向上があります。つまり、会社として人材を育て、社員の能力開発と共に等級が上がっていくという考え方がベースとなっています。

このような日本的な職務に対する意識が社員にとっても受け入れやすく、職能資格制度は能力開発と整合がとれた等級制度だといえます。


こういった点も、職務等級制度など「仕事基準」の等級制度と大きく違う点です。


ここまで、職務等級制度について定義やメリットを説明してきました。これらを踏まえた上で、人事異動との関係について説明したいと思います。

職能資格制度と人事異動

結論から述べると、職能資格制度と人事異動の親和性は高いといえます。


人事異動の際に問題となるのは、「ポストの数」や「賃金水準」です。
例えば、仕事基準の等級制度(職務等級制度など)の場合で考えましょう。とある営業部長を総務部に異動させなければならないとなった時、賃金水準を一定に保つには総務部長として迎え入れなければなりません。仕事基準の等級制度の場合、賃金はその人に関係なくどんな仕事をするかというポストで決定してしまうため、異動前と同じ「部長」職として異動されなければならないからです。


このように、仕事基準の等級制度の場合、人事異動に大きな制約が発生してしまいます



一方、人基準の等級制度である職能資格制度の場合、このような制約はありません。営業部長が総務部に異動する場合、必ずしも部長として迎え入れる必要はないのです。職能資格制度はその人がもつ能力(職務遂行能力)で賃金が決定されるため、部長ではなくなったとしても賃金は不変なのです。


つまり、職能資格制度は他の等級制度と比べて、人事異動との親和性が高いということができるのです。

以上、職能資格制度と人事異動の関係について説明しました。今回の記事で出てきた「職務等級制度」などについては、以下の記事で詳しく説明していますので、気になる方はぜひご覧頂ければと思います。
職務等級制度とは?職能資格制度との違いとメリット・デメリットを考える
職能資格制度・職務等級制度・役割等級制度の違いを比較する


[まとめ]
・職能資格制度とは、職務遂行能力をレベル化し、等級化する制度のことです。
・職能資格制度はポストや賃金水準に縛られすぎずに人事異動を行うことができるため、人事異動との親和性が高い等級制度であるといえる


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