[サマリー]
・職務等級制度とは、担当する職務内容によって等級を決定する「仕事基準の」等級制度である
・人件費の抑制や年功的運用の排除といったメリットがある一方、人事異動がしづらくなるなどのデメリットもある

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以前、職能資格制度の特徴とメリット・デメリットについて説明しました。今回は、職務等級制度について、職能資格制度との違いやメリット・デメリットを説明していきます。



職務等級制度と職能資格制度の違いとは

職務等級制度とは

職務等級制度とは、担当する職務内容によって等級を決定する制度です。職務の価値が大きいほど、等級も大きく(高く)なります。以前説明したように、この職務等級制度とは「仕事基準」の等級制度に分類されるのが特徴です。仕事基準の等級制度とは仕事によって等級が決まるというものであり、まさに職務等級制度は仕事基準の等級制度になっています。


では、この職務等級制度と職能資格制度の違いについて考えましょう。



職務等級制度と職能資格制度の違いとは

この2つの等級制度の違いはズバリ、

仕事によって等級が決まるか、人によって等級が決まるか


です。では、順番に説明していきます。


まず職能資格制度とは、職務遂行能力によって等級が決まるという制度です。つまり、与えられた仕事に関係なく、本人の能力によって等級が決まる制度になります。これを「人基準の等級制度」と呼んだりします。


ここでもう一度、職務等級制度について考えましょう。職務等級制度は、仕事によって等級が決まるという制度でしたね。つまり、職務等級制度と職能資格制度の違いは、等級が「仕事で決まるか」「人で決まるか」なのです。

非常にシンプルな違いですが、何を基準にして等級が決まるかというのは等級制度の根幹をなす部分ですので、しっかりと使い分けをしてください。
(職能資格制度について詳しく知りたいという方は、こちらの記事を確認ください


では、職務等級制度についてもう少し詳しくみていきます。


職務等級制度の体系

先程説明したように、職務等級制度は担当する職務によって等級の大きさが決まるという制度です。そして、役職と等級を対応させる体系を取ることが一般的となります(特に上位等級についてです)。


例えば、1~9等級の区分を設計している会社の研究開発部を考えます。例えば、研究開発部長という役職は2等級と3等級に与えられ、研究開発本部長という役職は1等級にのみ与えられる、といった体系です。部長や本部長の職務価値が決まっているため、それにあった等級が自動的に決定されるというイメージです。


したがって、職務等級制度で重要なのは、ある職務の内容や責任、必要な能力といったものをマニュアル化(職務記述書といいます)し、しっかりと明文化しておくことです。これによって、従業員の等級制度に対する透明性を高めることができ、等級アップへのモチベーションが高まります。



職務等級制度のメリットとデメリット

メリット①:人件費を抑制できる

先程説明したように、部長や本部長といった役職に等級を対応させる形をとるため、上位役職に就かなければ賃金が上がることもありません。そして高齢化などにより上位ポスト数は制限される傾向にあるため、必然的に人件費が抑制される形になるのです。

くどいようですが職務等級制度は仕事基準の等級制度なので、職務が変わらなければ賃金も不変、ということですね。


メリット②:年功的運用になりにくい

以前、職能資格制度は年功的運用になりやすいというデメリットを説明しました。これとは逆に、職務等級制度は年功的運用になりにくいといえるのです。

職務等級制度は仕事によって等級を決定する制度でしたね。したがって、仕事が変わらなければ等級も上がらないため、「Aさんは社歴も長いし賃金を上げた方がいいかもしれない」といった漠然とした意思決定がなされません。


職務という目に見えるもので等級が決まるため、年功的な要素を排除できるのです。



逆に言えば、先ほど説明したようななんとなくの等級アップがなくなるということで、属人的な要素を排除できるともいうことができます。


デメリット①:人事制度の制約が大きい

職務等級制度は〇〇部長のようにポストに等級がくっついた形をとるため、人事異動の際の制約が大きくなります。例えば、ある部長を他の部に異動させようと思った時、異動先の部でも部長職にしなければ給与が下がってしまうことになります。

もしこれが職能資格制度であれば等級は個人の能力で決まるため、役職にとらわれず自由に異動させることができますよね。これが職務等級制度の大きなデメリットです。

デメリット②:職務として明文化されていることにしか興味がなくなる

先程、等級を設計する上での大切な要素として、職務ごとにしっかりと職務内容や責任を明文化することを説明しました(職務記述書といいます)。この職務記述書の内容をこなすことがその等級の職務となりますので、必然的にその職務記述書に書かれていることにしか興味がなくなってしまいます。

たとえ他の職務をこなすことができても等級アップ(昇級)にならないため、記述された職務しかやらなくなってしまうのです。


以上、職務等級制度について、職能資格制度との違いやメリット・デメリットについて説明しました。会社を設立したり、会社を方向転換したりする際に等級制度の設計は本当に重要な要素となりますので、しっかりと考えて頂ければと思います。

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[まとめ]
・職務等級制度とは、担当する職務内容によって等級を決定する「仕事基準の」等級制度である
・人件費の抑制や年功的運用の排除といったメリットがある一方、人事異動がしづらくなるなどのデメリットもある

人事制度にお悩みの経営者や管理職の方、こちらのホームページからのご相談お待ちしております。

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