[サマリー]
・業務記述書とは、職務や職種によって必要とされる業務スキルを網羅的に記述した書面のことである
・業務内容と共にその業務の重要度や困難度を併記することにより、会社改善に活用することができる
人材育成を行っていくにあたり、欠かせないものが「業務記述書」です。この業務記述書を作成することによって、行き当たりばったりな育成とならず、組織的に必要なスキルを従業員に身に付けさせることができます。
今回はその業務記述書について、サンプルを見ながら特徴や書き方について考えていきたいと思います。
業務記述書のサンプルと書き方
業務記述書とは?
業務記述書(スキルズインベントリー)とは、職務・職種によって必要とされる業務スキルを網羅的に記述した書面のことを指します。イメージするならば、「営業職に必要な業務スキルは〇〇と〇〇と…」のような形です。
そしてこの業務記述書が最も力を発揮するのは、人材育成の場面です。
例えばあるスタートアップの会社を考えてみましょう。この会社は今までは知人や親族と阿吽の呼吸でやってきたタイプの会社であり、どのような業務をこなすべきか、何をするべきかはそれぞれがしっかりと理解しています。そのため、日ごろから高いチームワークにより業績も順調に伸びていました。
そのため、会社規模拡大に伴い新入社員を雇ったとします。ここで問題になるのが、人材育成です。このように個人の力量や暗黙知(書面になっていないノウハウやスキル)に頼ってきた会社は、何も知らない人に対して何を教えればよいのかわからないのです。
その結果、優秀な人材が育たず、会社規模拡大が失敗に終わり会社が傾いてしまう可能性まであります。
これは極端な例に思われるかもしれませんが、小規模な会社になるほど人材育成は重要であり、また人材育成に重点が置かれていないことが多いのです。
それを解決していくツールの1つが、この業務記述書です。
業務記述書の書き方
業務記述書のサンプル
それでは、業務記述書の書き方を説明していきたいと思います。
まずは、実際の業務記述書がどのようなものか見てみましょう。本当に様々な業務記述書のテンプレートがありますが、一例としてこのようなものが挙げられます。
ここでは、営業職社員の業務記述書を例に挙げてみました。
業務内容の項目を5つしか挙げていませんが、これを増やせば実際の業務記述書になります。では、項目について順番に説明していきます。
・業務カテゴリー
業務の大項目を記入します。一般職であれば、「受付」なども大項目の1つです。
・業務内容
その職種の業務内容を書き出します。
・重要度
その業務の重要度を数値で表現します。例えば3段階として、「全員が習得する必要がある」ものであれば「1」、「半数の人間が習得する必要がある」ものであれば「2」などです。
・困難度
その業務の習得困難度を数値で表現します。例えば3段階として、「習得に半年かかる」ものであれば「1」、「習得に3年かかる」ものであれば「2」などです。
もちろん、これよりも細かい項目を設定することもできますが、まずは簡易的なものから作成することをおすすめします。最初から完璧なものを作成しようとすると、途中で作成が難しくなってしまったり、作成する気が減退してしまったりするためです。
このような業務記述書を作成することにより、人材育成を効果的に行うことができます。特に、業務記述書を使うメリットとして、
①育成対象者にヌケモレなく業務スキルを身に付けさせることができること
②指導者側もなにを教えればよいか分かりやすいこと
③今の会社にとってどの業務スキルが手薄か確認し、育成できること
④職能評価の場合、業務記述書に沿って評価することができること
大きく以上の4点です。
①と②は言わずもがなだと思います。
③の手薄スキルの把握は、業務記述書作成の恩恵の1つです。このような業務記述書を作ることにより、新入社員に限らず既存社員の業務スキルレベルを確認することができ、どのスキルを伸ばしていくべきかを検討することができます。
④の職能評価についてですが、そもそも職能評価とは従業員が持っている職務遂行能力を評価するものです。したがって、業務記述書を作っておけば、なにを評価すべきかという評価項目を業務記述書に沿わせて考えることができるのです。
職能評価については、こちらの記事を参考にして頂ければと思います。
→職能資格制度・職務等級制度・役割等級制度の違いを比較する
以上が、業務記述書の内容の説明です。最後に参考として、どうやって業務内容を書き出していくか、ポイントを説明したいと思います。
書き方のコツ(1):実際の業務フローを考える
業務記述書作成において業務内容を書き出していく際の一番のコツは、実際の業務の流れをイメージすることです。
例えば受付の仕事であれば、「まず挨拶をして、要件を聞いて、担当部署に連絡して、……」というような形です。それを一通り書いて言った中で、特に重要と思われるものを最終的にピックアップしていけばよいのです。
このように、業務記述書は人事担当の従業員だけでなく、必ずその業務担当者を交えて作るようにするのがポイントです。
書き方のコツ(2):ブレインストーミング
ブレインストーミング法については、以前このブログでも紹介しました。非常に大雑把に説明すれば、アイデア出しをしていく際に質より数を重視して行っていく手法です。
業務内容の書き出しにおいては、重要な業務のヌケモレ発生が最も恐れるべき事態といえます
「ちょっとそれは違うんじゃない?」という業務が意見として出てきても、最後にまとめる段階で判断すればよいのです。まずは、見落としをなくすために、数多くの意見を出していくことが大切です。
実際のところ、ブレインストーミング法にはもっと細かいルールがありますので、気になる方はこちらの記事を確認ください。
→学校における企画力アップのツール:「ブレインストーミングとは」
タイトルは「学校」となっていますが、もちろん一般企業でも活用できます。
以上、業務記述書について、サンプルを確認しながら書き方を説明しました。
特に中小企業においては人材育成は死活問題ですので、しっかりと重点を置いて対策・改善していって頂ければと思います。
[まとめ]
・業務記述書とは、職務や職種によって必要とされる業務スキルを網羅的に記述した書面のことである
・業務内容と共にその業務の重要度や困難度を併記することにより、会社改善に活用することができる
人事制度や人材育成にお悩みの経営者・管理職の方、こちらのホームページからのご相談お待ちしております。
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