[サマリー]
・基本給設計には、代表として「シングルレート」「等級号棒制」「評価替式」「スライド式」の4つが挙げられる
・簡単であればよい、複雑であればよいというものではないので、会社や従業員の実態に沿った人事制度を考えることが大切である
今回は、賃金制度の中でも重要な位置づけである基本給について、代表的なものといえる、
・シングルレート
・等級号棒制
・評価替式
・スライド式
の4つの決定パターンについて比較していきたいと思います。
基本給の仕組みを比較する
そもそも基本給とは?
基本給とは、月例賃金の中でも一定の基準によって決定された基本となる部分のことです。例として、職能給(職能資格によって決まる賃金)や役割給(枠割等級によって決まる賃金)、勤続給(社歴によって決まる賃金)といったものが挙げられます。
賃金体系における基本給の位置付けについては、下の図をご確認ください。
このように、月ごとに支給される基本給が、臨時的に支給される賞与や退職金とは全く違う性質であることが分かります。また、月ごとに支給されるという面では諸手当と同じですが、あくまでも賃金の「基本」という意味で、基本給と諸手当が異なるということもお分かりいただけるかと思います。
それでは、基本給の決め方4パターンについて考えていきます。
基本給の決め方4つのパターン
その①:シングルレート
シングルレートとは、等級によって基本給の絶対額が決定するという仕組みを指します。つまり、シングルレート最大の特徴は
等級が変わらなければ基本給も変わらない
という点です。
グラフで表すとこのような形になります。
1等級の従業員は2等級に上がらない限り、基本給も不変ということです。
シングルレートによる基本給の決め方について、詳しい説明はこちらの記事をご覧ください。
→基本給とは?:シングルレートによる基本給の決め方
その②:等級号棒制
等級号棒制とは、等級の中に号棒という別の区切りを設け、等級が不変でも号棒によって賃金が上昇していく制度のことです。つまり、シングルレートと違い、1等級の従業員は2等級に上がらなくても基本給が上昇していくということになります。
では、グラフで確認してみます。
このような形です。長方形それぞれが「号棒」だと考えてください。期末評価などにより上昇する号棒数が決定され、それに従って基本給額が上昇するイメージです。
等級号棒制は公務員の賃金体系として広く使われているので、ホームページからも設計例を確認することができます。例えば、俸給表 – 人事院 などを参考にしてください。
等級号棒制による基本給の決め方について、詳しい説明はこちらの記事をご覧ください。
→基本給決定の仕組み「等級号棒制とは?」
その③:評価替式
評価替式とは、毎年の業績評価によって基本給が上下する基本給決定方式のことです。最大の特徴は、
(1)賃金が「上下」するということ
(2)過去実績に関係なく基本給が決定すること
の2点です。
まず、(1)の賃金の上下については、シングルレートや等級号棒制にはなかった設計ですね。シングルレートは賃金が不変ですし、等級号棒制は上昇するのみでした。評価替式は、期末評価によって基本給が下がる可能性があるのです。
次に(2)について、これも他の賃金制度にはない設計ですね。例えば等級号棒制は、期末評価で決定した上昇する号棒分に、現在(過去評価の積み重ね)の号棒を足し合わせることによって基本給が決定する仕組みでした。
それでは、グラフで確認してみます。
このように、等級内をABCDなど区分して起き、年度末個人業績評価が「B」であれば、来年度の賃金は「B」になるというイメージです。つまり、過去の基本給水準を一切考慮せず、単年度の個人評価によって次年度の基本給が決定するという仕組みです。
評価替式による基本給の決め方について、詳しい説明はこちらの記事をご覧ください。
→基本給決定の仕組み「評価替式とは?」
その④:スライド式
スライド式とは、毎年の業績評価の積み重ねによって基本給が上下する方式のことです。最大のポイントは、
(1)賃金が上下するということ
(2)過去実績の積み重ねで基本給が決定すること
の2点です。
まず(1)については、評価替式と同じ設計ですね。逆に、シングルレートや等級号棒制とは異なる設計だと言えます。
次に(2)については、等級号棒制と似たような設計になっています。逆に、過去実績を一切考慮しない評価替式やシングルレートとは異なる設計といえます。
以上がスライド式の概要ですが、実際には等級内をエリア分けし、エリアによって上下する基本給額が異なるような運用をするケースが多いです。この記事では概要説明までにとどめますので、詳細が知りたい方は以下の記事を確認いただければと思います。
→基本給決定の仕組み「スライド式とは?」
最後に
以上、4つの基本給設計のパターンについて説明しました。ご覧の通りですが、最も簡単な基本給の設計はシングルレートであり、複雑な設計はスライド式などになります。パっとみただけでは複雑な設計の方が、人件費削減や個人間の賃金水準の甘辛付けなどでメリットがありそうにも感じます。しかしながら、複雑な設計というのは従業員にとってみれば分かりづらい制度であるということにあります。
経営陣(会社)にとってメリットがあることは前提ともいえますが、従業員にとっても納得性が高く、メリットがあるような制度を設計していくべきだといえます。自社の実情に沿った人事制度を考えて頂ければと思います。
[まとめ]
・基本給設計には、代表として「シングルレート」「等級号棒制」「評価替式」「スライド式」の4つが挙げられる
・簡単であればよい、複雑であればよいというものではないので、会社や従業員の実態に沿った人事制度を考えることが大切である
人事制度にお悩みの経営者や管理職の方、こちらのホームページからのご相談お待ちしております。
「木村税理士・行政書士事務所」