[サマリー]
・評価替式とは、毎年の業績評価によって基本給が上下する基本給決定方式のことである
・基本給の上限を決定できる一方、従業員側の気持ちも考えて設計する必要がある
今回は、基本給決定の仕組みとして「評価替式」という方法を説明したいと思います。
評価替式による基本給の決定
そもそも基本給とは?
基本給とは、月例賃金(毎月支給される賃金)の中でもある一定の基準によって決定される、賃金の基本となる部分のことを指します。職能資格制度で言えば職能給、役割等級制度で言えば役割給などがこの基本給にあたります。「30歳なら〇〇円加算、35歳なら〇〇円加算」といった年齢給も、この基本給のパターンの1つです。
賃金の中に占める基本給の位置付けはこのような形になっています。
上図の賃金の体系については「賃金制度の設計:賃金体系を考える」の記事で詳しく説明しているので、詳しくはそちらをご覧いただければと思います。
それでは、基本給のタイプの1つである評価替式について説明していきます。
評価替式とは?
評価替式とは、毎年の業績評価によって基本給が上下する基本給決定方式のことです。ポイントは、
①賃金が「上下」するということ
②過去実績に関係なく基本給が決定するということ
です。まず①について考えます。
以前「シングルレート」「等級号棒制」という基本給決定の仕組みについて説明しました。シングルレートは賃金が固定されるので言わずもがなですが、これらの特徴は賃金が下がることがないという点です。等級号棒制は毎年の業績評価により号棒が「加算」されるため、必然的に賃金は上がることになります。
つまり、賃金が下がる可能性があるというのが、この評価替式の大きな特徴です。
続いて「②過去実績に関係なく基本給が決定される」ということについて考えます。これも等級号棒制と比較してみると、等級号棒制は過去実績の積み重ねという性質を持っているといえます。それに対して評価替式は、例えば前回の業績評価は一切考慮せず、今回の業績評価によって賃金が決まるという仕組みなのです。
②については少し分かりにくいと思うので、賃金と等級のイメージ図を確認してみます。
評価替式の模式図(イメージ図)
これが、評価替式における基本給と等級、評価の関係のイメージ図です。
まず、1等級の従業員を考えてみます。
この従業員は去年末の業績評価で評価「B」を取りました。すると、今年のこの従業員の基本給額は水色のB長方形の金額になります。
そして、今年の業績評価の時期がやってきました。今年はなかなか仕事が上手くいかず、昨年よりも低い評価である「C」がついてしまったとします。すると、来年のこの従業員の基本給額は、水色のCの長方形になってしまうのです。
つまり、基本給が下がっていますね。
これが評価替式の特徴です。また、下がったことだけでなく、去年の業績評価が来年の基本給額に一切かかわっていないこともお分かりいただけたかと思います。
では最後に、評価替式のメリットについて考えましょう。
評価替式のメリットとは
評価替式のメリットはずばり、
定期昇給をなくせること
です。先ほどのグラフからお分かりいただけたかと思いますが、1級にいる限りはどんなに高くても基本給の水準は「A」までであり、毎年額が上がっていくということがありません。毎年「B」の評価であれば、基本給額も「B」のままでずっと一定なのです。これは逆に、従業員からすればモチベーションが下がってしまいますのね。
そこで、評価替式を採用する場合は、「Aの業績評価を2回取れば等級が上がる」といったような等級アップの基準を設計している会社が多いです。
つまり評価替式は、会社としては賃金の上限を設定できる仕組みのため有効な基本給設定の仕組みである一方、授業員側の気持ちに寄り添った仕組みづくりも求められるということです。
以上、基本給決定の仕組みの1パターンとして、評価替方式についてメリットを踏まえながら説明しました。人事制度の中でも賃金制度については従業員の方も特に重視する項目ですので、会社設立や人事制度再構築の際はしっかりとした制度を設計することが重要です。
[まとめ]
・評価替式とは、毎年の業績評価によって基本給が上下する基本給決定方式のことである
・基本給の上限を決定できる一方、従業員側の気持ちも考えて設計する必要がある
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「木村税理士・行政書士事務所」