[サマリー]
・賞与原資の配分方法は固定支給部分か変動支給部分かによって異なる
・基本的な賞与原資配分の計算式は、基準額×係数 である




今回は、賞与の元となる総額(=原資)の分配方法について、いくつかのパターンを説明していきたいと思います。



賞与原資の分配方法とは

賞与(ボーナス)の位置付け

まず、賃金体系における賞与(ボーナス)の位置付けについて確認します。
(賞与とボーナスは同じ意味で使われます。当ブログでは、「賞与」で統一して説明していきます)

そもそも賞与とは、従業員に対して臨時的に支給される賃金のことです。「臨時的に」支給されるため、定期的に支給される月例賃金とは全く違う体系となっています。図で確認してみましょう。

賃金の体系


これが賃金における賞与の位置付けです。賃金の中でメインとなるのは「基本給」ですが、これについては別の記事で詳しく説明しているので、気になる方はこちらの記事をご確認ください。
基本給とは?シングルレートや等級号棒性の比較



次に、賞与設計の仕組みについて説明します。


賞与設計の仕組み

賞与は基本的に、固定支給部分と変動支給部分の2階建て構造をとることが多いです。イメージは下図のような形です。

2階建ての賞与設計


固定支給部分とは、「基本給の〇か月分」のように、安定支給される部分のことをいいます。それに対して変動支給部分とは、例えば個人業績によって額が変化する部分のことをいいます。
一般企業ではこの2階建て構造が多いですが、公務員の場合は固定支給部分のみの1階建て構造になっています。

この賞与設計の構造については、こちらの記事で詳しく説明しているので、気になる方はご覧いただければと思います。
賞与(ボーナス)の仕組みとは?図で考える



それでは、本題に入りましょう。
以上を踏まえながら、賞与原資の分配方法について説明していきます。


賞与原資の分配方法

(1)固定支給部分

固定支給部分(基本賞与)については、主に2つのパターンに分けられます。


パターン①:基本給×月数
パターン②:(基本給+一部手当)×月数



この2パターンです。まず、固定支給部分については賞与原資の総額という概念がありません。算定式によって当然に支給額が決定するため、理論上は原資の上限もないということです。

次に、算定式について考えます。この「基本給×月数」という算定式は非常によく耳にする式かと思います。パターン②について(一部手当)となっている部分は、例えば役職手当などを加算した額に月数を掛けるようなケースもあるという意味です。



では、変動支給部分について説明していきます。


(2)変動支給部分

変動支給部分(業績連動部分)については、主に3つの算定パターンがあります。

パターン①:等級別の一定額×支給率×成績評価係数
パターン②:基本給×支給率×成績評価係数
パターン③:等級別の成績ポイント×ポイント単価



この3パターンです。


・パターン①について

パターン①は等級別にある一定額が決まっており、その額に支給率と成績評価係数を掛けるというものです。一定額とは、例えば等級の基本給の最低額などです。先ほどの(1)の固定支給部分と大きく違うのは、「成績評価係数」が含まれているという点です。例えば「A評価なら1.0」「B評価なら0.8」のように、高い成績がつけば賞与額も高くなるという計算式になっています。


・パターン②について

このケースも、①のケースと似ています。異なるのは、算定の元となる額が基本給そのものであるという点です。現状の基本給にそのまま係数を掛けていく仕組みであり、分かりやすいといえます。基本給については、場合によっては(基本給+役職手当)のように算定する企業もあります。

このパターン②の計算方法は、固定支給部分の計算に成績評価を掛けるか掛けないかの違いであり、固定支給の算定式と非常に似ているといえます。


・パターン③について

このケースは、「ポイント」という概念が含まれているため、パターン①・②と大きく異なる計算式になっています。

ポイントとは、等級別評価別で決定される数値のことをいいます。例えば、「1級A評価なら50」「1級B評価なら40」「2級A評価なら70」のような形です。等級と個人成績によってこのポイントが決定し、その値に「ポイント単価」を掛けることによって賞与額が決定します。

ここでポイント単価とは、1ポイントあたりの金額を指します。ポイント単価の算定式は、「賞与原資総額 ÷ 全従業員ポイント総額」です。これにより、ポイント単価が算出されます。


ポイント計算による賞与原資の配分は少し独特であるため、別の記事で詳しく説明しています。上記の説明がちょっと分かりにくいなと感じた方は、こちらの記事をご確認ください。
賞与原資の配分方法:ポイント制のメリット・デメリット




以上、賞与原資の配分方法について、固定部分と変動部分に分け、計算式を確認しながら紹介しました。賞与については従業員の方も非常に興味が強い部分ですので、人事制度設計・再構築の際はしっかりと考えて頂ければと思います。


[まとめ]
・賞与原資の配分方法は固定支給部分か変動支給部分かによって異なる
・基本的な賞与原資配分の計算式は、基準額×係数 である


人事制度にお悩みの経営者や管理職の方、こちらのホームページからのご相談お待ちしております。
「木村税理士・行政書士事務所」