[サマリー]
・ポイント制賞与の算定式は、「ポイント数×ポイント単価」である
・年功要素の排除や原資割れ回避などのメリットがある一方、設計面での難しさなどのデメリットがある



以前、賞与原資の配分方法についていくつかのパターンを紹介しました。その中でも、「ポイント制の賞与原資配分」については全体像を説明するに留まってしまったので、今回の記事で詳しく説明していきたいと思います。



ポイント制賞与配分のメリットとデメリット

賞与原資の配分方法のパターン

賞与原資の配分方法にはいくつかのパターンがあります。



[固定支給部分の算定パターン]
パターン①:基本給×月数
パターン②:(基本給+一部手当)×月数


[変動支給部分の算定パターン]

パターン①:等級別の一定額×支給率×成績評価係数
パターン②:基本給×支給率×成績評価係数
パターン③:等級別の成績ポイント×ポイント単価



以上、大きく分けて5パターンです。そもそも「固定支給部分ってなんだ?」と思った方は、こちらの記事で詳しく説明しているので参照頂ければと思います。
賞与原資の考え方:分配方法とは


今回注目するのは、一番下の算定式であるポイント制の賞与配分についてです。それでは、説明していきます。


ポイント制の賞与配分

ポイント制とは?

ポイント制とは、ポイントにポイント単価を掛けることによって賞与額を決定する賞与配分方法のことを指します。重要なのは、


「ポイント決定方法」と「ポイント単価決定方法」



の2つです。
それではまず、ポイント決定方法について説明します。



ポイントの決定方法

ポイントは、等級と個人成績によって決定します。例えば、下の表を見てください。

ポイント制による賞与原資配分の例

非常にシンプルな例で考えます。
ポイント制では、このように等級ごと評価ごとにポイントが決まります。例えば3等級の従業員が「B」の評価をとったとすると、ポイントは「40」といった具体です。

もちろんこのような表が他の等級でも設計されており、さらに職群(営業、製造など)によっても別々に作られているケースもあります。


次に、ポイント単価の決定方法について説明します。


ポイント単価の決定方法

ポイント単価の決定は非常にシンプルです。

まず、先ほどの表などで決定した個人ポイントを、全従業員分足し合わせます。これにより、総ポイント数が算出されます。

次に、賞与原資総額を決定します。絶対額で「〇百万」と決めるパターンもありますが、「営業利益の〇%」などと指標を用いた割合で決めるのが一般的でしょう。

最後に、賞与原資総額を総ポイント数で割ります。つまり、ポイント単価の計算方法は、


ポイント単価=賞与原資総額÷総ポイント数



という形になります。
あとは、このポイント単価に個人のポイントを掛ければ、個人の賞与額が算出できるという仕組みです。他の賞与配分方法と比べると複雑ですが、複雑なりのメリットがあります。

それでは、メリットとデメリットを紹介します。

ポイント制賞与原資配分のメリット

メリット①:年功的要素が排除できる

他の賞与算定方法では基本給をベースに計算するものが多く、どうしても年功的(社歴が長いと賞与も大きくなる)になりがちです。しかしポイント制では、等級が高いほうがポイントも高く設計されてはいるものの、個人成績によってポイントが大きく変わるため、年功的要素を十分に取り除くことができます。これは言い換えれば、過去業績を加味しない配分方法ともいえるので、前年成績が悪かった従業員も、大きなモチベーションを持って賞与に臨むことができるのです。


メリット②:原資割れの事態を防げる

原資割れとは、賞与総額を支給するだけの利益がなくなってしまうことです。賞与を「基本給×月数」のように計算する場合、会社の業績に関係なく賞与が決定されてしまうため、業績不振であれば原資割れの可能性が十分にあります。

それに対してポイント制では、決まった賞与原資総額から賞与を配分するため、原資割れのが生じる可能性が非常に低くなります。
(「営業利益の〇〇%」という決め方の場合、賞与配分後の営業利益は必ず+になるため、赤字になりにくいということです)


ポイント制賞与原資配分のデメリット

ポイント制の賞与原資配分はメリットが非常に大きく、デメリットは少ないと一般的に言われています。それでも、デメリットとしてはポイント算定テーブルの作成などが挙げられるでしょう。ポイント制を採用しなければ、「基本給×月数」のような非常に簡単に賞与決定をすることができるのに対し、ポイント制を採用するならばポイント算定テーブルの作成は必須です。

もし職群別にテーブルを作るとなれば、職群間の不平等や不満をどのようになくしていくかということにも頭をかかえることになります。
(例えば営業と製造のテーブルを分ける場合、同じ3等級A評価のポイントが営業では60、製造では50であれば、製造部員は自分たちの仕事が営業より価値がないといわれていると感じ、強い不満を抱いてしまいます)


このように、ポイント制賞与配分を採用するにあたっては、しっかりとした設計が必要になります。


以上、ポイント制の賞与配分について、メリットとデメリットを説明しながら紹介しました。賞与については従業員の方も非常に興味が強い部分ですので、人事制度設計・再構築の際はしっかりと考えて頂ければと思います。



[まとめ]
・ポイント制賞与の算定式は、「ポイント数×ポイント単価」である
・年功要素の排除や原資割れ回避などのメリットがある一方、設計面での難しさなどのデメリットがある



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