[サマリー]
・役割等級制度とは、職務の内容を決める要素を総合的に(大きく)定義して等級を決める制度である
・職能資格制度や職務超級制度の弱点を補った制度である一方、役職との連携によるデメリットも存在する




今回は、等級制度の1つである役割等級制度について、職務等級制度との違いなどを考えながらメリット・デメリットを考えていきたいと思います。


役割等級制度の特徴とメリット・デメリット

役割等級制度とは

役割等級制度とは、職務の内容を決める要素を総合的に定義して等級を決める制度です。この「総合的に定義」という部分ですが、等級を大きくくくっているようなイメージを持っていただければと思います。

というのも、この役割等級制度は職務等級制度と似ている部分が多くある一方、この等級を大きくくくっているという部分が特徴的な違いだからです。

そもそも職務等級制度とは、担当する職務によって等級が決まるという「仕事基準」の等級制度でした。この考え方は役割等級制度でも基本的に同じで、仕事基準の等級制度なのです。しかし、職務によって等級が決まるというよりは、役割によって等級が決まるという発想になります。そしてこの「役割」というのが、職務を大きくくくったものであると考えてください。


では、実際に体系で確認してみたいと思います。

役割等級制度の体系(例)

例えば、ある製造部の役割等級制度について、体系の例を考えてみます。ここでは、役割区分は全体で5つとし、上位2等級を管理職層として設計してみます。

役割等級制度の体系例

例えばこのような形になります。便宜上、管理職層をprofessionalから「P」、非管理職層をmanufactureから「M」の頭文字で表現しています。


このように、役割等級では職務を大きくくくり等級を設計します(ここでは5等級に区分設計しました)。また、M3からP4への昇級は役割任用という形で行われることになります。級が上がる場合は昇級、下がる場合は後級といいます。


それでは、役割等級制度についてメリットとデメリットを考えていきます。


役割等級制度のメリットとデメリット

メリット①:職務等級制度に比べて人事異動が柔軟である

職務等級制度のデメリットは、ポストが限られているため人事異動が難しいという点でしたね。これに比べて役割等級制度は職務を役割という大きいくくりでまとめているため、人事異動を柔軟に行うことができます。

つまり、役割等級制度は職務等級制度の弱点をカバーした等級制度になっているといえるのです。


メリット②:職能資格制度に比べ年功的な運用になりづらい

職能資格制度のデメリットは、等級を決定する「職務遂行能力」が目に見えないため年功的な運用になりやすいとう点でした。これに対して役割等級制度は、役割基準書という形で役割に求められる内容や責任を明文化するため、年功的になりづらいというメリットがあります。

さらに、上位役職のポストの数は職務等級制度ほどではないにしても限られるため、上位等級者がどんどん増えてしまうといったことも防ぐことができます。

つまり、役割等級制度は職能資格制度の弱点もカバーした等級制度になっているといえるのです。


デメリット:役職が上がらなければ賃金も上がらない

このデメリットは、職務等級制度のデメリットと同じですね。役割等級制度は役職と等級が連動するため、役職が上がらなければ当然等級が上がることもなく、賃金が上がることもありません。このデメリットは、役職と等級を対応させる役割等級や職務等級制度と切っても切り離せないものです。

したがって、上位役職が空かないため長期間同じ等級に留まってしまっている従業員などは、モチベーションが低下してしまうことになります。



以上、役割等級制度の特徴について、職務等級制度との違いを考えながらメリットやデメリットを説明しました。会社を設立したり、会社を方向転換したりする際に等級制度の設計は本当に重要な要素となりますので、しっかりと考えて頂ければと思います。


[まとめ]
・役割等級制度とは、職務の内容を決める要素を総合的に(大きく)定義して等級を決める制度である
・職能資格制度や職務超級制度の弱点を補った制度である一方、役職との連携によるデメリットも存在する


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