[サマリー]
・教育コンサルタントの費用は、原則として教育研究経費として処理するのが妥当だといえる
・経営コンサルタントの費用は、管理経費として処理することにも妥当性がある




学校法人会計基準において、経費の処理には様々な方法があります。事業活動収支計算書の項目としては、「人件費」「教育研究経費」「管理経費」などです。

今回は、学校がコンサルタントに業務を依頼したときに発生した費用について、どのような項目で処理するべきかについて説明します。

学校におけるコンサルタント費用

コンサルタント費用とは?

当然ではありますが、コンサルタント費用とはコンサルタントに仕事を依頼した際に発生する費用のことを指します。「成果物として〇〇の分析に関する資料を作成すること」のように業務委託形式で契約が結ばれることが多いといえます。

コンサルタント側にとって重要なのはひとえに契約に従って業務に励むことですが、学校側にとってはコンサルタント費用の経理処理が問題になってきます。


そこで検討するのが、経費として代表的な項目である「教育研究経費」と「管理経費」です。では、コンサルタント費用は具体的にどちらの費用に該当するのでしょうか。

教育研究経費としての処理

結論から述べてしまうと、基本的には教育研究経費として処理すれば問題ありません。

そもそも教育研究経費とは、教育研究のために支出する費用のことを指します。定義が大雑把な印象を持たれると思いますが、文部科学省の通知により管理経費との違いが以下のように解釈されています。


次の項目に当てはまることが明らかな経費は管理経費とする。それ以外の経費については、主たる使途に従って教育研究経費と管理経費のいずれかに計上する。

①役員の行なう業務執行のために要する経費および評議員会のために要する経費
②総務・人事・財務・経理その他これに準ずる法人業務に要する経費
③教職員の福利厚生のための経費
④教育研究活動以外に使用する施設、設備の修繕、維持、保全に要する経費(減価償却贅を含む)
⑤学生生徒等の募集のために要する経費
⑥補助活動事業のうち食堂、売店のために要する経費



問題は、これら6つの項目にコンサルタント費用が含まれるかという点ですが、基本的には含まれないといえます。
コンサルタントへの依頼内容が「教育に関するカリキュラム編成について」「情報リテラシーや道徳など教育内容に関する資料作成について」などの場合、上記6つの項目に含まれるという解釈はしづらいからです。「解釈」という単語がひっかかる方もいらっしゃるかと思いますが、教育研究経費と管理経費の違いは解釈(裁量)による部分が一部生じているのです。詳しくは、こちらの記事をご確認ください。




以上より、コンサルタント費用は原則として教育研究経費処理すればよいということが分かりました。

次に、管理経費として処理する可能性があるケースを紹介したいと思います。

管理経費としての処理

先程は、教育カリキュラムや教育内容に関する資料作成などをコンサルタントに依頼した例をとって、経費処理を考えました。このように、学校教育を専門領域とするコンサルタントを教育コンサルタントといいます。

教育コンサルタントに業務を依頼した場合、教育研究経費として処理するのが妥当です。
一方、経営コンサルタントに依頼した場合、管理経費として処理するのが妥当なケースがあります。



そもそも経営コンサルタントとは、学校の教育内容ではなく、学生募集や業務改善など経営面の支援を専門とするコンサルタントのことを指します。私も、中小企業診断士や認定経営コンサルタント資格を持っているため、経営コンサルタントの一員です。このような経営コンサルタントに業務を依頼した場合についてですが、先ほどの文部科学省の通知項目⑤「学生生徒等の募集のために要する経費 」などに該当する可能性が出てくるといえます。


経営コンサルタントに学生募集対策の立案を依頼したようなケースでは、この⑤の項目として解釈することも妥当性があります。また、財務分析や人事制度構築改善などを依頼した場合、通知項目②に該当すると解釈することもできるといえます。


つまり、経営コンサルタントに業務を依頼した場合、管理経費として処理することにも妥当性があるのです。



ここでハッキリと「管理経費として処理してください」と断定しないのは、文部科学省の通知に裁量が含まれているからとご理解いただければと思います。

以上、教育コンサルタントもしくは経営コンサルタント費用について、学校法人会計基準に沿ってどのように処理するべきかを説明しました。一口にコンサルタント費用といっても様々な性格が考えられますので、処理の際には注意が必要だといえます。

学校経営にお悩みの校長や管理職の方、こちらのページからのご相談お待ちしております。

事務所代表プロフィール

名前:木村 成(きむら じょう)

保有資格:
・中小企業診断士(経営コンサルタントの国家資格者)
・税理士 ・行政書士(行政手続、法律書類作成の国家資格者)
・日商簿記1級
・認定経営コンサルタント
・1級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP1級)
・中学、高等学校一種教員免許(元高校教員)

業務内容:
首都圏を中心に、学校や教育関連企業等の中小企業支援を業務として行っている。経営コンサルタントとしては、教育現場の業務改善や販路開拓のコンサルティングなどを中心に活動。行政書士としては、会社設立の代理や営業許認可取得の代理を中心に活動している。中小企業診断士・行政書士の2つの資格を活用して、経営面と法務面の2つの視点から、組織・事業の業務改善と拡大支援に励む。


[まとめ]
・教育コンサルタントの費用は、原則として教育研究経費として処理するのが妥当だといえる
・経営コンサルタントの費用は、管理経費として処理することにも妥当性がある