[サマリー]
・会議は数少ない全体顔合わせの場であるメリットなどがある一方、コスト面などで大きなデメリットが存在する
・重要な会議は現状維持とし、重要性が低い会議のみ業務改善を進めていくことが大切である
昨今、教員の長時間労働などを背景にして、学校業務改善の機運が高まっています。それに伴って、悪役として取り上げられやすいのが「会議」の存在です。
今回は、学校における会議について、無駄なのか否かについて説明していきたいと思います。
学校の会議は無駄か
会議が無駄ではない根拠
会議が「無駄である根拠」「無駄ではない根拠」両者を考えた上で、どちらを優先するべきか説明していきたいと思います。
まず、会議が無駄ではないという根拠から考えます。
根拠①:意思疎通の場として重要である
先生方の業務は基本的に授業を中心としており、個人プレーが中心です。したがって、全員が顔を合わせるという機会は会議がなければなかなか実現しません。
多くの学校が「朝打ち合わせ」という形で簡易的な会議を朝の時間に設けているのも、毎日の顔合わせの重要性を表しています。単純に連絡事項を伝えるならばメールで済みますが、毎朝校長や管理職の一言を聞くということで、組織としての一体感が醸成されるのです。
根拠②:全員にまとめて周知することができる
当然ながら、会議で伝達すれば全教員に一度で連絡事項を伝えることができます。さらに顔を合わせていることのメリットとして、その連絡事項に対してた教員が質問した内容を、さらに他の教員も共有することができます。
もしも会議ではなく、プリントなどを作成してレターボックス(教員の個人用連絡ボックス)に投函するというような方法を取ったとしましょう。すると、同じような質問が多数の教員から出て、さらにそれに対して個別に同じ回答を何度もしなければならないという事態が起こりかねません。
全教員に対してリアルタイムに質問事項を共有することができるという点で、会議は優れているといえます。
根拠③:(会議によっては)気軽に相談できる場である
これは全体会議では難しいですが、分掌など小規模な会議では当てはまるかと思います。
会議以外の時間ですと、分掌業務で不明な点があってもなかなか他の先生に質問しづらいということが往々にしてあります。授業直前だから忙しいかもしれないという遠慮や、そもそも職員室にいる時間が少ないからといった理由です。
一方、会議の場では比較的質問しやすい雰囲気であるケースが多いといえます。生徒対応などでも自分から問題提起や相談をすることで、他のクラスの先生が気軽にアドバイスをくれるといったこともよくあります。
小規模集団(分掌や委員会など)の情報共有や団結力を高めるという意味で、会議は有効であるといえます。
会議が無駄である根拠
ではここからは反対に、会議が無駄であることの根拠を説明したいと思います。
根拠①:膨大な時間的(金銭的)コストがかかる
会議には膨大な時間的コストがかかります。
例えば教員数60人の高校で、全体会議が2時間かかったとしましょう。
これを学校経営という立場(学校全体の立場)で考えた場合、損失時間は2時間ではありません。
2時間×60人、つまり学校全体では120時間の損失になります
もちろん教員個人個人で考えれば2時間の損失ですが、校長や管理職の方は学校経営の視点として、学校全体の損失時間を考える必要があります。
そして、120時間の損失が生じているということは、その分だけ金銭的コストが生じているということと同義です
例えばこの学校の先生方60人の年収の平均値を600万円としましょう。年間出勤日数を240日、1日当たり労働時間を8時間とした場合、時給は3,125円です。
つまり、60人が参加する2時間の全体会議では、約40万円のコストがかかっていると考えることができるのです
このように、大きな時間的(金銭的)コストがかかるという点で、会議は無駄であるといえます。
根拠②:当事者意識が低いケースが多い
・会議が定時で始まった試しがない
・会議中に寝ている先生がいる
・プリントの読み上げしかしない
ほとんどの先生は、このような会議に遭遇したことがあるのではないでしょうか。
学校の会議や人数が増えれば増えるほど、当事者の参加意識が低下する傾向にあります
会議に参加さえすればいい、座ってさえいればいい、配布資料を読み上げればいい、というような意識を持っている方も存在するというのが現状です。これも、会議が無駄といわれている1つの根拠となっています。
根拠③:代替的手段が存在する
例えば、連絡事項を全員に伝達するだけならメールを使うという手があります。アンケートなどを紙媒体で直接配布したいということなら、レターケースに直接投函すればよいかもしれません。分掌内の連絡事項なら、ホワイトボードに書いておけばだいたいのことは伝わります。
もちろん、先ほど「会議が無駄ではない根拠」で述べたように直接顔を合わせるメリットはありますが、このような代替的手段でもおおまかの役目は果たすことができます。
特にメールについては、使われていない学校ではとことん使われていないのが現状です。メールを2週間に1度しか開かないという先生にもあったことがあります。しかし、紙媒体が主流の学校であれば、確かにわざわざ来てもいないメールボックスを開く意味はありませんよね。
以上が、会議が無駄であるという根拠になります。
会議の二面性
このように、会議には二面性があります。良い面もあれば、当然悪い面もあるのです。
昨今は業務改善の機運から、特に悪い面が注目されています。しかし私は、本当に必要な会議まで省略することは逆に業務改善を阻む結果になると思っています。
例えば、
・生徒部が主導となる行事前の打合せ会議
・進級などに関わる成績調整会議
これらを省略してしまえば、学校行事の失敗や成績付けの不手際に直結しかねません。必要な会議は、むしろ時間をかけて丁寧に行うべきなのです。
逆に言えば、必要性が低い会議は効率化していくべきです。では、どのように効率化を図っていくべきでしょうか。
学校会議の効率化に向けて
会議効率化に向けたステップは、
①効率化すべき会議の決定
②効率化の実行
③改善結果の確認
④調整
このような形になります。順番に、いわゆるPDCAサイクルと対応していることが分かります。効率化すべき会議の決定や実行は、以前書いた記事でざっくり説明していますので、ぜひそちらをご覧頂ければと思います。
→学校会議の効率化|会議調査分析
→学校会議の無駄を省き効率化する方法
終わりに
以上、学校における会議が無駄なのかどうかについて、両者の立場を考えながら説明しました。重要なのは、効率化すべき会議とすべきでない会議をはっきり分けるという点です。ぜひこれから、管理職の方々が主導となって学校業務改善を進めて頂ければと思います。また、実務において業務改善を進めていく上では、専門家の協力も重要となります。お悩みの際は、ぜひご相談ください。
学校の業務改善にお悩みの校長や管理職の方、こちらのホームページからのご相談お待ちしております。
事務所代表プロフィール
名前:木村 成(きむら じょう)
保有資格:
・中小企業診断士(経営コンサルタントの国家資格者)
・税理士
・行政書士(行政手続、法律書類作成の国家資格者)
・日商簿記1級
・認定経営コンサルタント
・1級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP1級)
・中学、高等学校一種教員免許(元高校教員)
業務内容:
東京都銀座にて、学校や教育関連企業等の中小企業支援を業務として行っている。経営コンサルタントとしては、教育現場の業務改善や販路開拓のコンサルティングなどを中心に活動。行政書士としては、会社設立の代理や営業許認可取得の代理を中心に活動している。中小企業診断士・行政書士の2つの資格を活用して、経営面と法務面の2つの視点から、組織・事業の業務改善と拡大支援に励む。
[まとめ]
・会議は数少ない全体顔合わせの場であるメリットなどがある一方、コスト面などで大きなデメリットが存在する
・重要な会議は現状維持とし、重要性が低い会議のみ業務改善を進めていくことが大切である