[サマリー]
・学校戦略マップとは、学校における戦略を見える化(可視化)したものです。
・バランストスコアカードを活用することで、有用な学校戦略マップを作成することができる
今日、一般企業では戦略や戦術という言葉が浸透していますが、中学や高校・大学など学校ではあまり使われていない状態です。しかし、学校においてこそ、戦略の立案は重要です。実際に校長や副校長、管理職の方はそういった意識を持っていらっしゃるかと思います。
しかし、実際にはどのようにして戦略を立てていくべきか、悩まれることも多いと思います。今回は、戦略策定の1つの方法として、バランストスコアカードの活用による戦略マップ作成について説明したいと思います。
学校戦略マップの作成
戦略策定はなぜ重要か?
特に中学校や高校では、理念を掲げている学校は多くても、具体的な戦略を策定していないというケースは非常に多いかと思います。「理念だけあればいいじゃないか」と思われる方もいるかもしれませんが、理念の作成だけでは全教職員の具体的行動にまで理念を落とし込むことができないのです。
それを示したのが下の図です。
当然、学校の最上位に位置するのは理念です。その下に経営ビジョンがあります。実際に学校でも、経営ビジョンを作成しているケースは多いかと思います。しかし、経営戦略はいかがでしょうか。
経営戦略を意識せず経営計画を立てている学校は非常に多いといえます。
戦略を意識せず計画を立ててしまうと、①理念とかけ離れた計画が出来上がってしまう、②メリハリのない計画が出来上がってしまう、などのデメリットが生じます。「進学実績も、部活動も、地域貢献も、残業時間削減も、」というように、全てについて最高の数値目標を掲げるようなケースがよくあるパターンです。
先程のピラミッド図が示すように、経営戦略をしっかりと立案することによって、学校の理念から教員の具体的行動までが一本の線でつながるのです。
もし理念についてもっと詳しく知りたいという方がいらっしゃいましたら、以下の記事をご参考にしてください。
→経営理念浸透の具体策①
学校戦略マップとは?
学校戦略マップとは、学校における戦略を見える化(可視化)したものです。
統一された定義はありませんので、どのような形であれ戦略を見える化できれば、それが戦略マップとなります。
一部の学校では戦略マップの作成が行われていますが、内容としては十分とは言えないものが多い印象です。というのも、戦略マップどのような視点(フレーム)で作るかで内容が全く変わってきます。我々コンサルタントはこのような視点のことを「フレームワーク」と呼んでいますが、戦略マップの作成に適したフレームワークの選択が重要です。
そこで学校戦略マップ作成にオススメしたいのが、バランストスコアカードなのです。
バランストスコアカードとは?
バランストスコアカードとは、「財務」「顧客」「業務プロセス」「学習と成長」の4つの視点で、戦略策定や業績評価を行うツールのことです。
Blanced Score Card でBSCと略すこともあります。一般企業では戦略策定の際往々にしてバランストスコアカードが使われていますが、学校で使われている例は少ないのでぜひ活用して頂ければと思っています。
実際に、バランストスコアカードを見てみましょう。
このような形の表で表します。実際に、とある学校を想定して書き入れていってみましょう。
ここで一番重要なのは、「財務の視点」が学校としてのゴール、「学習と成長の視点」が学校としてのスタートだという点です
学習と成長この項目は組織としてどう動くかという人の項目ですが、人の行動が結果としての数字に結びついていくという過程を、バランストスコアカードは下から上方向に向かって表現しているのです。
そしてもう一つ重要なのが、上から書き込んでいくということです
目標ありきで、そのために何をすべきなのかを考えていくのです。つまり、書き込んでいく方向は上から下方向ということになります。
少し分かりにくいと思うので、実際に書き込んでいってみます。
バランストスコアカードによる学校戦略マップ作成
まず、財務の視点(数値目標)から書き込んでいきます。
例えば、「志願生徒20%増加」「残業時間月平均10時間削減」という目標を立てたとしましょう。次に、その目標をどうやって実現させていくか、顧客の視点から考えます。学校における顧客なので、生徒や保護者・地域の方をイメージするとよいかと思います。
書き込んでみました。志願生徒増加と残業時間削減は異なる目標ですので、それぞれ別々に実現させるための戦略を練っていきます。この例では2つのみ戦略を挙げていますが、いくつあっても構いません。
残業時間削減の下の各種アンケートとは、行事などにおける生徒アンケートのことです。学校業務の中でも時間がかかる場合が多い作業ですよね。
では、それを踏まえて業務プロセスの視点を書き入れましょう。
書き込んでみました。募集対策の仕組み作りのところで2つの矢印が出ていっていますが、このように矢印は発散しても収束しても構いません。1つの目標に2つの手立てがある場合、2つの目標に1つの手立てで対応できる場合と、様々なパターンが想定されるからです。
では最後に、学習と成長の視点を書き込みましょう。学習と成長という単語は少し分かりづらいですが、組織や1教員としてどのようなことをすべきかというイメージです。
出来上がりました。例ということで非常に大雑把に作りましたが、バランストスコアカードによる学校戦略マップの策定により、
・数値目標を具体的な行動指針に落とし込んでいくことができる
・落とし込む過程で、経営戦略についてしっかりと検討することができる
・視点が分かれているため、見落としが発生しづらい
などのメリットを得ることができます。
実際に学校戦略マップをバランストスコアカードで作成してみようと思った場合、全職員レベルでの作成はおすすめできません。4つしか視点がないといっても、一般の教員の方には分かりづらい部分もあるため多くの時間を要してしまいます。実務においては、管理職レベルで戦略マップを作成し、合意形成の段階で一般教員の方の意見も取っていく、という順番が効率的かと思います。
以上、学校戦略マップについてバランストスコアカードを使った作成方法を説明しました。学校においても「戦略」を意識することは非常に重要です。最後に、戦略について興味があるという方は、以下の記事もご参考頂ければと思います。
→学校や塾における戦略策定
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また、当事務所は学校教職員の業務改善・業務負荷軽減にも精力的に取り組んでおります。詳しくは、こちらのホームページをご覧ください。
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名前:木村 成(きむら じょう)
保有資格:
・中小企業診断士(経営コンサルタントの国家資格者)
・税理士
・行政書士(行政手続、法律書類作成の国家資格者)
・日商簿記1級
・認定経営コンサルタント
・1級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP1級)
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業務内容:
東京都銀座にて、学校や教育関連企業等の中小企業支援を業務として行っている。経営コンサルタントとしては、教育現場の業務改善や販路開拓のコンサルティングなどを中心に活動。行政書士としては、会社設立の代理や営業許認可取得の代理を中心に活動している。中小企業診断士・行政書士の2つの資格を活用して、経営面と法務面の2つの視点から、組織・事業の業務改善と拡大支援に励む。
[まとめ]
・学校戦略マップとは、学校における戦略を見える化(可視化)したものです。
・バランストスコアカードを活用することで、有用な学校戦略マップを作成することができる