[サマリー]
・ランチェスター戦略とは、弱者の立場と強者の立場に分け、それぞれの立場にあった戦略をまとめた考え方のことである
・「全てにおいて勝つ」では全てにおいて負けることになる。弱者は差別化戦略や一転集中戦略を取ることが重要である




経営戦略の考え方の1つに「ランチェスター戦略」というものがあります。これは、企業(学校)を強者と弱者に分類し、弱者が強者に勝つための経営戦略の考え方をまとめたものです。

一般的に、このような経営戦略は一般企業が使うものというイメージが強いかもしれません。しかし、少子化などで学校間の生徒募集競争が激しくなっている今日、学校においても経営戦略は重要なのです。

今回は、私立学校が考えるべき経営戦略の中でも「ランチェスター戦略」について紹介したいと思います。

私立学校のランチェスター戦略

ランチェスター戦略とは?

ランチェスター戦略とは、弱者の立場と強者の立場に分け、それぞれの立場にあった戦略をまとめた考え方です。特徴は、「弱者と強者の立場に分け」という部分です。

そもそも、弱者は真正面から戦った場合、強者には勝てません



これがランチェスター戦略の大前提にある考えです。もし真正面から戦って勝てるのであれば、もはや弱者とは呼びません。強者同士の戦いです。

では、弱者とは具体的にどういったものを指すのでしょうか。弱者とは一般的に、企業で言えば市場シェアが少ない企業や顧客認知度が低い、職員数が少ないなどが挙げられます。


学校も全く同じように考えてください。例えば、
・志願者数や受験者数が定員割れ、または定員割れに近い状態になりそうである
・近隣に競合校や人気校がある
・商圏内の生徒や保護者からの学校認知度が低い
・教職員の入れ替わりが激しく、学校へのロイヤルティ(忠誠心)が低い


こういった条件が当てはまった場合、「弱者」状態である可能性が高いです。(あくまでもランチェスター戦略の定義上の弱者です。それ以上の意味はありませんので、尖った表現であることは御了承頂ければと思います)


そして、この弱者と強者の戦い方をまとめたのがランチェスター戦略です。具体的には、以下のような戦い方です。

私立学校のランチェスター戦略


順番に説明していきます。

・基本戦略:強者のミート戦略(幅広く扱う)に対し、弱者は差別化戦略(個性を尖らす)をとるべきである

・商品,サービス:強者の物量戦(様々なモノに資源を投入)に対し、弱者は一転集中主義をとるべきである

・地域戦略
:強者の広域戦に対し、弱者は局地戦をとるべきである

・流通戦略
:強者の遠隔戦(顧客と距離を置く)に対し、弱者は接近戦をとるべきである

・顧客戦略
:強者の確率戦(たくさんの客を狙う)に対し、弱者は一騎打ち戦(一人ひとりを狙う)でいくべきである

・戦法
:強者の誘導戦(他社にマネさせ個性をなくす)に対し、弱者は陽動戦でいくべきである

イメージ頂けるでしょうか。とにかく重要なのが基本戦略で、「強者はミート戦略」「弱者は差別化戦略」を取るべきであるというものです。

よく中小企業の経営者に密着するような番組で取り上げられるのが、この弱者の戦略「差別化戦略」で成功しているケースです。

・「磨きの技術だけは日本一」という町工場
・「接客サービスに特化」した中規模タクシー会社
・「伝統的な祭りのみを支援」するイベント会社



実際に最近新聞やテレビで目にしたのがこのようなケースです。全て中小企業ながらも、大企業を脅かす成長・特定分野でのシェアを見せています。共通点は、ターゲットや自社の生存領域を絞っているという点です。全てに対して経営資源を投入するのではなく、特定のターゲットに絞って経営資源全てを投入しています。それによって、大企業に対しても局地的な勝利を収めることができるのです。


では実際に、私立学校についてランチェスター戦略を考えてみたいと思います。


私立学校の場合

もう一度、ランチェスター戦略の表を確認しながら例を考えてみましょう。

私立学校のランチェスター戦略

・基本戦略:大前提の考え方になります。「受験指導」「学習指導」「進路指導」「部活動」「英語教育」「理数教育」「体験学習」「地域活動」「ボランティア活動」など、全てにおいて勝とうとしてはいけません。


全てに平等に力を注いだ場合、有名校や競合校に対し全てにおいて負ける可能性が高いです



なぜなら有名校や競合校は、自校よりブランド力が高く、知名度があり、経営資源(教職員、設備、資金)が豊富であり、塾にも強い連携を持っています。自校がターゲット全てに均等に経営資源を注いだ場合、経営資源が分散してしまうため、全敗という可能性が高くなります。

学校の場合、一般企業と比べ勝ち負けが分かりづらいですが、「敗北」が続けば志願倍率や口コミとして必ず現れることになります。

先程挙げた 「受験指導」「学習指導」「進路指導」「部活動」「英語教育」「理数教育」「体験学習」「地域活動」「ボランティア活動」などのうち、どれを学校の柱に据えるか、経営資源を集中させるか、積極的に訴求するかを決定する必要があるのです。


そしてこの考え方は、そのまま商品・サービス戦略につながります。一般企業でいうところの商品・サービスとは、顧客に提供するもののことです。学校の場合、「受験指導」「部活動」などは、顧客に提供するサービスそのものなのです。


・地域戦略
:どの生徒,保護者層をターゲットとするか決定しなければなりません。先ほどの商品・サービス戦略で決めた訴求ポイントに見合った地域戦略を立案します。例えば、「受験指導」「学習指導」を最大の柱とすることを決めたならば、営業先は学習塾の中でも難関校受験を中心に扱っている塾が中心となるかもしれません。

もしここで、「全ての塾に営業を行う」というような地域戦略を立ててしまった場合、有名校・競合校に敗北する可能性が飛躍的に高まります。

彼らは人や資金が豊富なため、全ての塾に営業を行うだけのパワーがあります。しかし、「弱者」である学校にはそのような余裕がなく、全ての塾に営業を行うことは大きなムダです。

勇気を持って一転集中することが、弱者にとって何より重要なのです




・顧客戦略
:例えば、1人1人に合った説明やサービスを行います。これは、有名校などたくさんの生徒や保護者が集まる学校では絶対にできません。ある程度、集まる人数が限られている学校だからこそできる戦略なのです。

学校説明会だけで考えても、
・個別相談ブースの新設、拡充
・本校生徒による志願者相談ブースの新設
・管理職クラスによる相談ブースの新設
・校舎見学グループの小ロット化(少人数で見学・解説を行う)


アイデアベースだけでもこのような案が出てきます。これらの取り組みは、説明会に大人数が集まる有名校では現実的に実施が困難であり、弱者としての学校のみ行うことができます。参加した生徒・保護者からすれば「私たちのことを見てくれている」という1対1の印象を残すことができ、大きく心に残るはずです。


このように、弱者は強者に対して「全てにおいて勝つ」という戦略を取ってしまってはいけません。「ここでは負けても仕方ない。しかし、ここに特化して勝利するんだ」という差別化戦略・一転集中戦略が重要である、というのがランチェスター戦略の考え方になります。


以上、私立学校のランチェスター戦略について説明しました。実はこのランチェスター戦略の背後には「競争地位別戦略」というものがあるのですが、もし気になる方はこちらの記事でご確認頂ければと思います。
「競争地位別戦略」


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「木村成コンサルティング事務所」

また、当事務所は学校教職員の業務改善・業務負荷軽減にも精力的に取り組んでおります。詳しくは、こちらのホームページをご覧ください。
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事務所代表プロフィール

名前:木村 成(きむら じょう)

保有資格:
・中小企業診断士(経営コンサルタントの国家資格者)
・行政書士(行政手続、法律書類作成の国家資格者)
・日商簿記1級
・認定経営コンサルタント
・ファイナンシャルプランニング技能士2級
・中学、高等学校一種教員免許(元高校教員)

業務内容:
首都圏を中心に、学校や教育関連企業等の中小企業支援を業務として行っている。経営コンサルタントとしては、教育現場の業務改善や販路開拓のコンサルティングなどを中心に活動。行政書士としては、会社設立の代理や営業許認可取得の代理を中心に活動している。中小企業診断士・行政書士の2つの資格を活用して、経営面と法務面の2つの視点から、組織・事業の業務改善と拡大支援に励む。




[まとめ]
・ランチェスター戦略とは、弱者の立場と強者の立場に分け、それぞれの立場にあった戦略をまとめた考え方のことである
・「全てにおいて勝つ」では全てにおいて負けることになる。弱者は差別化戦略や一転集中戦略を取ることが重要である