[サマリー]
・学校関係者は生徒だけではないため、経営理念も対生徒向け以外のものも作るべきである
・特に対教員向けの理念は教員のモチベーションの観点からも重要である
以前、経営理念の位置付けやその重要性、経営理念浸透の具体策について説明しました。これらを踏まえた上で、学校法人や教育業界の企業がどのような経営理念を掲げるべきか考えたいと思います。
学校が掲げるべき経営理念
学校における経営理念の問題点
学校法人が経営理念について抱える問題は、大雑把に以下の3点です。
・経営理念が非常に抽象的である
・主に生徒に向けた経営理念のみである
・経営理念が教員に浸透していない
自分の学校におきかえて考えてみて、いかがでしょうか。ほとんどの学校法人についていずれかの問題点が当てはまるかと思います。
では、順番に考えていきます。
問題点①:経営理念が抽象的
まず、「経営理念が非常に抽象的である」についてです。これは、必ずしも抽象的な経営理念が悪いという意味ではありません。経営理念は細かすぎると単面的であったり、数多くの理念を設定しなければならなかったりとデメリットも生じます。
しかしながら、抽象的すぎるものは理念を設定した校長の中では理解されていても、それを見た教員や利害関係者へは正しく伝わらない可能性が高いといえます。
例えば、「努力、忍耐」や「明るく元気な〇〇校」というようなものの場合、誰が努力するのか(実は生徒という意味でした)、どうやって元気な学校を作るのかというような部分が全く見えてきません。
したがって、初めて見た人が誤解しないような経営理念を作ることが重要です。
問題点②:生徒向けの経営理念のみである
次に、「経営理念が主に生徒に向けた経営理念のみである」について説明します。
まず、経営理念の内容に生徒に対するものを入れるということは、非常に重要なことです。学校法人は生徒ありきのものである以上、こういった理念を掲げないということは、学校法人の存在意義と矛盾することにもなりかねません。
しかし、生徒に対する理念しか掲げないのはいかがでしょうか。後述しますが、学校関係者にとってこのような一面的な理念はモチベーションの低下や判断基準のブレなどを生む要因になりかねません。
では、生徒に対する理念以外に、どのような理念を掲げるべきか考えましょう。
一般的な企業の場合、利害関係者は「仕入先」「売り先」「従業員」「株主」などです。ここで、仕入先や売り先については学校法人で置き換えるのは困難かつ重要でないため、おいておきましょう。残った「従業員」「株主」については、学校でいうところの「教員」と「生徒や保護者」であると考えてください(厳密には生徒や保護者は出資者ではないため、あくまでイメージです)。
したがって、「生徒向けの理念」だけでなく、「教員向けの理念」を作成することを推奨します。教員も立派な学校関係者です。教員の立場になって考えましょう。もし、自分が勤める学校に「先生が伸び伸びと働ける職場を目指します」といったような教員向けの理念があったとしたら、その先生はどう思うでしょうか。おそらく、この学校(もしくは校長)は自分たちのことまで考えてくれているのだ、という満足感を得ることができると思います。
繰り返しになりますが、一般企業では対社員向けの経営理念を設定することは基本となっています。良い学校を作るために、ぜひ教員向けの経営理念を掲げてもらえればと思います。
さらに、3つ目の経営理念を作るとしたら、候補となるのが「地域貢献」です。地域や社会への貢献は、昔で言えば「三方よし」、現代では「CSR」などの考え方で実践されてきました。
学校はその特性上、地域に貢献する存在であります。また、どの学校も日ごろから地域に根差した活動を行っているかと思います。
その行動指針となるような理念を、ぜひ掲げてほしいと思います。
問題点③:教員への浸透が薄い
これはもうほとんどの学校に当てはまるのではないでしょうか。
この問題については、経営理念浸透の具体策のページで詳しく説明しているので、そちらをご覧いただければと思います。
以上、学校法人が掲げるべき経営理念について説明しました。
次回は、教育業界企業が掲げるべき理念について考えます。
[まとめ]
・学校関係者は生徒だけではないため、経営理念も対生徒向け以外のものも作るべきである
・特に対教員向けの理念は教員のモチベーションの観点からも重要である
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