[サマリー]
・経営戦略の立案は、経営理念や経営ビジョン、経営計画の策定が終わって初めて実行していくこととなる
・不十分な検討の結果立案された経営戦略は塾の存続に関わるため、慎重な検討が必要といえる


当方、中小企業診断士・認定経営コンサルタントとして、塾や教育業界企業へのコンサルティングを行うことがしばしばあります。その際に、「経営戦略を立案してほしい」というご要望を頂くことも多いです。このような時、どのようにして塾などの経営戦略を立案するのか、私の手法を簡単に解説していきたいと思います。

手法と言っても、最も意識するのは経営理念から経営戦略に至る一連のステップです。このステップについて説明したいと思います。

コンサルとしての塾戦略立案

経営戦略の位置付け

経営戦略の立案を行う上でまず重要なことは、企業活動全体における経営戦略の位置付けを知ることです。

企業活動全体における経営戦略立案のステップは、以下のような位置付けにあります。

塾の経営戦略立案プロセス

経営理念の明確化→経営ビジョンの決定→経営計画の策定→経営戦略の立案→経営戦術の実行


このような流れです。つまり経営戦略の立案は、経営理念から経営戦術に至るまでの企業活動一連の流れの中にあるという認識がまず重要となります。


つまり、経営戦略の立案を行う際は、「自塾にとっての経営理念とは何か」「それを達成するためのビジョンはどのようなものか」「それを実現するための計画は何か」を先に決定しなければならないのです。実際にコンサルティングに入った先の塾では、このような経営戦略より上流過程がしっかりと確定していないというケースが多いです。


では、「経営理念」「経営ビジョン」「経営計画」という上流過程を考える上で、重要となる概念を解説していきます。

経営理念・経営ビジョン・経営計画

この3つの要素を考えていく上で重要なのは、「抽象から具体へ」というイメージです。


先程の経営理念から経営戦術に至る企業活動一連の流れは、上流過程であればあるのど抽象的になっています。逆に、下流にいくにつれて抽象が具体化されていく構造なのです。

最も抽象的なものが「経営理念」です。経営理念とは、自塾が経営活動を行っていく上でのポリシーや目標です。「子供たちに学びの楽しさを知ってもらう」「日本の学力向上に貢献する」など、大きな目線で掲げられることが多いです。この経営理念の明確化を行う段階では、「それってどうやって実現するの?」という疑問が湧くような表現で問題ないのです。経営理念は抽象的に、企業のあるべき姿を語るものだからです。


そしてその経営理念を実際にどのように実現するかについて、経営ビジョンや経営計画で説明していくのです。これが「抽象から具体へ」のステップです。


ここで経営ビジョンと経営計画の違いですが、先ほどの一連の流れの図からも分かるように、「経営理念を具体化したのが経営ビジョン」「経営ビジョンを具体化したのが経営計画」です。ここでも、抽象から具体へという流れを抑えておくのがポイントです。

さらに説明すると、経営ビジョンや経営計画は数値目標を掲げることになります。経営理念はあくまでも理念ですので、〇年後に売上高〇円などの数値目標を掲げることはありません。一方で、それを具体化した経営ビジョンは基本的に数値目標を掲げることになります。さらにそれを具体化する経営計画では、部門別の売上高や費用など、詳細な数値目標を掲げることとなるのです。

経営戦略の立案

ここまでできて、初めて経営戦略立案のステップに入ります。経営理念から経営計画までがしっかりと設計されていなければ、経営戦略が形骸化してしまうからです。

経営戦略には様々な立て方がありますが、フレームワークを知っておくと非常に便利です。フレームワークとは、経営戦略を立案する上で検討するべき視点のことを指します。今日までたくさんの経営者や戦略家が考えてきた経営戦略の概念をまとめたものがフレームワークなのです。これを使わない手はありませんね。

経営戦略立案の代表的なフレームワークは、以下の通りです。

STP(セグメンテーション、ターゲティング、ポジショニング)
ドミナント戦略
ランチェスター戦略
競争地位別戦略
差別化戦略
戦略マップ



このようなフレームワークが、経営戦略の立案実務においてよく使われています。

全てのフレームワークに共通する内容は、競合を踏まえた戦略立案を行うという点です。戦略とはそもそも、敵と戦うための作戦です。敵のことを考慮しない戦略というのは、戦略ではありません。それは経営活動においても同じです。

協業他社(他塾)がどのようなコンセプトを持ち、どのような価格戦略やサービス面での特徴を有しているのかを踏まえた上で自塾の戦略を決定するというステップが非常に重要なのです。


終わりに

以上、塾における経営戦略の立案について解説しました。ここでは学習塾を意識して記事を書きましたが、音楽教室や英語教室など教室ビジネス全般に共通する考え方ですので、ぜひ活用して頂ければと思います。

一方、実務において経営戦略を立案する際は、財務分析や外部環境分析、従業員の意識分析などを幅広く行った上で、他塾に勝つべく慎重な検討を行います。勘や雰囲気による経営戦略の立案は、塾の存続に関わり命取りとなりかねません。

経営戦略や募集対策など、塾経営にお悩みの際はぜひ我々専門家に御相談頂ければと思います。

ご相談はこちらのホームページからお待ちしております。
「木村税理士・行政書士事務所」


[まとめ]
・経営戦略の立案は、経営理念や経営ビジョン、経営計画の策定が終わって初めて実行していくこととなる
・不十分な検討の結果立案された経営戦略は塾の存続に関わるため、慎重な検討が必要といえる