[サマリー]
・減価償却比率とは、学校法人の有形固定資産について減価償却がどれだけ進んでいるかを示す財務指標である
・学校法人は、総資産に占める有形固定資産の割合が大きいため、非常に重要な指標であるといえる
学校法人の財務分析における指標の1つに「減価償却比率」というものがあります。今回は、この減価償却比率の意味や計算式を解説するとともに、名前が似ているといえる「減価償却費率」との違いなどを説明していきたいと思います。
学校法人の減価償却比率
そもそも減価償却とは?
減価償却とは簡単に言うと、建物や機械などの固定資産を使用するについて減少する分の価値を、費用として計上する会計処理のことです。
例えば1,000万円で建てた倉庫も、時間が経つにつれて老朽化などで価値が減少していきますよね。例えば、倉庫が10年程度使用できるものとするのであれば、10年後に価値が0になると言い換えることができるので、毎年100万円ずつ価値が減っていっていくと考えることができます。この100万円という数字を、毎年費用として計上する手続きを減価償却と言います。
当然、1,000万円の倉庫が100万円分だけ価値が減少するため、倉庫の価値は900万円になります。つまり、貸借対照表(BS)に計上される倉庫の金額(簿価)は、取得した原価である1,000万円から減価償却の累計額100万円を差し引いた900万円となるのです。
もし、貸借対照表についてよくわからないという方は、こちらの記事をご確認して読み進めてください。
では本題の、減価償却比率について解説していきたいと思います。
減価償却比率とは?
減価償却比率とは、学校法人の有形固定資産について減価償却がどれだけ進んでいるかを示す財務指標です。
減価償却比率が高ければ、その学校法人の有形固定資産は減価償却が進んでいるという事が分かります。逆に低ければ、あまり減価償却が進んでいないという事です。
実は、一般企業における財務分析では、減価償却比率の計算をすることは非常に稀です。ではなぜ学校法人では減価償却比率の計算を行うのでしょうか。
その大きな理由の1つは、学校法人の資本構造にあります
学校法人は、有形固定資産が非常に大きなウエイトを占めています。BS(貸借対照表)でいうと、有形固定資産が多額で流動資産が少額という構造です。
例えば、以下のBSを見てください。これは、専修大学附属高等学校のホームページ上で公開されている、平成30年度の貸借対照表です。
この学校の場合、
・有形固定資産:4,363,309,531円(およそ43億円)
・流動資産:583,898,642円(およそ6億円)
このような金額です。有形固定資産は流動資産の7倍以上であることが分かります。また、有形固定資産は総資産の約61%を占めており、それほど多額なのです。
つまり、この多額な有形固定資産の減価償却の状態を知るという事は、学校法人の財務状況を知る上で欠かせない事だといえるのです。
では、減価償却比率の計算式を説明します。
減価償却比率の計算式
減価償却は、以下の計算式で求めることができます。
減価償却比率=減価償却累計額÷減価償却資産取得価額
このような計算で求めることができます。減価償却累計額とは、当該有形固定資産の当年度までの減価償却の合計額のことです。減価償却資産取得価額とは、当該有形固定資産を取得した時の金額のことです。つまり、元の値段に対してどれだけ減価償却をしたんですか?という計算式になっています。
ここで1つだけ気を付けなければならないのは、減価償却比率の計算において、有形固定資産から図書を除かなければならないという点です。
図書は基本的に減価償却を行わないなど建物等と違う性質ですので、減価償却比率の計算からは除外して計算します。
(図書も総合償却という会計処理によって減価償却と同様の手続きをとるケースがあります。詳しくはこちらの記事でご確認ください→学校法人における図書の減価償却と会計処理)
では最後に、減価償却比率と非常に言葉が似ている「減価償却費率」について説明したいと思います。
減価償却費率との区別
減価償却費率とは、売上高に対する減価償却費の割合のことを指します。
つまり、計算式は 減価償却費÷売上高 です。BSを使わずPLのみから算出することができます。また、減価償却がどれだけ進んでいるかという減価償却「比」率に対して、減価償却「費」率は当年度の減価償却の大きさを表す財務指標といえます。このように、性質が全く異なるのです。
ちなみに、減価償却「費」率は一般企業の財務分析でも算出することは多々あります。一般企業の財務分析では利益構造の分析をすることが非常に重要であり、減価償却費はそのキモともいえるからです。
このように、漢字一文字の違いではありますが全く意味が異なってくるので、注意して使い分けて頂ければと思います。
以上、学校法人における減価償却比率について意味や計算式を説明しました。自校の財務分析にぜひ役立てて頂ければと思います。
[まとめ]
・減価償却比率とは、学校法人の有形固定資産について減価償却がどれだけ進んでいるかを示す財務指標である
・学校法人は、総資産に占める有形固定資産の割合が大きいため、非常に重要な指標であるといえる
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