[サマリー]
・学校法人において、原則として図書は減価償却処理する必要はないといえる
・総合償却処理する際は、類似の備品などの耐用年数を参考にし、学校の実態に合った耐用年数を決定する必要がある

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学校における図書には、一般的に耐用年数が存在します。そのため、どのような減価償却・会計処理をすればよいのか、迷われている方もいらっしゃるかと思います。

今回は、学校法人における図書の減価償却・会計処理の考え方について解説したいと思います。

図書の減価償却と会計処理

原則:図書は減価償却しなくてよい

結論から先に述べてしまうと、学校法人において図書は減価償却する必要はありません。

これは、昭和47年の文部省管理局通知「図書の会計処理について(報告)」という通知で明らかにされています。


この通知の要点は、以下の通りです。


1. 長期間にわたって保存・使用することが予定される図書は、取得価額に関わらず固定資産として取り扱う。


2. 上記図書については、原則として減価償却を行わないものとする。この場合、除却の処理が行われた時は、当該図書の取得価額相当額をもって消費支出に計上するものとする。

(除却による経理が困難な時は、総合償却の方法により減価償却経理を行うことができる)

3. 学習用図書や事務用図書等のように、通常その使用期間が短期間であることが予定される図書は、取得した年度の消費支出として取扱うことができる。


4. 図書と類似の役割を有するもの(テープやレコードなど)は、図書に準じて会計処理を行うものとする。




この2番が、図書について減価償却を行う必要はないという事の根拠通知となります。つまり、長期間にわたって保存や使用する図書については、取得時に固定資産として計上し、土地などと同じく減価償却はしなくてよいのです。


また、3番については「することができる」という表現であることに注意が必要です。使用期間が短期間の図書については、消費支出として計上「しなければいけない」のではなく、あくまでも「することができる」だけです。つまり、消費支出として処理することもできるし、固定資産に計上することもできるのです。
当然、これによって固定資産に計上した図書に関しても、減価償却を行う必要はありません。


これで一件落着かと思いきや、2番の( )書きが少し意味深ですよね。


「除却による経理が困難な時は、総合償却の方法により減価償却経理を行うことができる」


これはそのまま、創業償却の方法によれば減価償却をすることができるということを示しています。
では、詳しくどのようなことなのか説明していきたいと思います。


例外:総合償却による減価償却処理

まず総合償却とは、減価償却の適用方法の一つであり、複数の固定資産をグループ単位でまとめた上で一括して減価償却計算を行う処理のことです。


企業会計において総合償却処理が使われるのは、工場における生産ラインなどまとまって1つの役割を果たすような機械などを1グループとするケースです。このような場合、それぞれの機会・装置の平均耐用年数を用いて減価償却を行うような処理が一般的です。


では、学校法人における図書の総合償却について考えます。
まず、図書については耐用年数が決まっていないため、他の備品などと平均耐用年数を算出するという方法は使えません。ここで参考になるのが、東京都主税局のホームページ上で公開されている「減価償却資産の耐用年数表」です。
こちらからご覧ください


しかし、こちらの耐用年数表にも当然ですがはっきりと該当するものはありませんね。
したがって、器具及び備品の「11 前掲のもの以外のもの」の中で「その他のもの」のうち「主として金属製のもの」ではないものの耐用年数「5年」は1つの参考になるといえます。


また、先ほどの文部省通知の4番にあったように、テープやレコードなどは図書と同様の性質として扱われます。よって、耐用年数表の「磁気テープ及びレコード」の耐用年数「2年」についても1つの参考になるといえるでしょう。


このように、図書を減価償却処理する際の耐用年数に決定した数値はありませんので、経理担当者の方が説明できるような根拠を基に、自校に合わせた耐用年数の決定をすることが必要になるといえます。

以上、学校法人における図書の減価償却処理について解説しました。学校法人の会計や経営についてお困りの際は、我々専門家にご相談下さい。
学校経営・財務にお悩みの校長や管理職の方、こちらのページからのご相談お待ちしております。

事務所代表プロフィール

名前:木村 成(きむら じょう)

保有資格:
・中小企業診断士(経営コンサルタントの国家資格者)
・税理士 ・行政書士(行政手続、法律書類作成の国家資格者)
・日商簿記1級
・認定経営コンサルタント
・ファイナンシャルプランニング技能士2級
・中学、高等学校一種教員免許(元高校教員)

業務内容:
首都圏を中心に、学校や教育関連企業等の中小企業支援を業務として行っている。経営コンサルタントとしては、教育現場の業務改善や販路開拓のコンサルティングなどを中心に活動。行政書士としては、会社設立の代理や営業許認可取得の代理を中心に活動している。中小企業診断士・行政書士の2つの資格を活用して、経営面と法務面の2つの視点から、組織・事業の業務改善と拡大支援に励む。

[まとめ]
・学校法人において、原則として図書は減価償却処理する必要はないといえる
・総合償却処理する際は、類似の備品などの耐用年数を参考にし、学校の実態に合った耐用年数を決定する必要がある