[サマリー]
・学校法人の財産目録は、貸借対照表の明細書にあたる性格を持っているといえる
・貸借対照表では分からない財産の種類や各金額の情報を知ることができる
学校法人が作成しなければならない財務諸表の１つに「財産目録」があります。財産目録は貸借対照表と性格が似ている計算書類ですが、作成根拠や内容などに大きな違いがあります。
今回はこの、学校法人の財産目録について解説していきます。
学校法人の財産目録
財産目録とは？
財産目録とは、学校が保有する財産の種類や数量、金額を記載した書類のことを指します。
大雑把にいうと、財産目録は貸借対照表の明細書にあたるのです。
ではなぜ明細書といえるのか、ここから財産目録と貸借対照表の違いを比較して解説します。
財産目録と貸借対照表の違い
内容の違い
先程、財産目録は貸借対照表の明細書にあたると説明しました。なぜ明細書といえるのか、両者の内容について比較します。
まず貸借対照表は、財産の総額を記載した書面です。「土地〇〇千円」「建物〇〇千円」のように、項目ごとの総額が記載されています。
一方で財産目録は、財産の種類ごとの金額と数量を記載した書面です。 例えば、「□キャンパス土地〇〇千円」「△キャンパス土地〇〇千円」というように、財産の種類ごとの金額が記載されているのです。貸借対照表ではこれらの合計額しか記載されていないため、土地ならばどんな土地を保有しているのかを知ることはできません。
財産目録は、学校法人の保有財産について貸借対照表では分からない詳細な情報を提供しているのです。
作成根拠の違い
作成根拠についても、財産目録と貸借対照表では違いがあります。
貸借対照表の作成根拠は、学校法人会計基準です。
学校法人会計基準とは学校法人が財務諸表を作成するにあたり適用される会計基準であり、貸借対照表だけでなく事業活動収支計算書や資金収支計算書も学校法人会計基準によって作成が要求されています。
一方で、財産目録の作成根拠は、私立学校法です。
私立学校法とは、私立学校の健全な発展を図ることを目的として作られた、私立学校に適用される法律です。財産目録の作成はこの私立学校法の47条に定められています。
第47条：「学校法人は、毎会計年度終了後二月以内に財産目録……を作成しなければならない」
つまり、学校法人は５月の末までに財産目録を作成し、資産総額の登記をする際に添付資料として必要となるのです。
作成方法の違い
貸借対照表は、日々の会計記録の結果として作成されます。
一般的な企業と同じく、会計処理→会計帳簿の作成→それを基にした財務諸表の作成 という流れを踏み、貸借対照表は作成されます。
一方、財産目録は基本的に実地調査によって作成されます。
実地調査とは、実際にその資産について本当に存在するのかや価値が著しく低下していないか等を確認することを指します。財産目録は貸借対照表の明細書という性格を持っているため、このように詳細な調査を行うことになるのです。
終わりに
以上、学校法人の財産目録について、内容や作成根拠の違い、作成方法の違いなどについて説明しました。学校法人の会計処理や財務諸表作成は一般企業に適用される企業会計基準とは異なる点も多いため、意味をしっかりと理解した上で行っていくことが重要です。
また一方で、作成した財務諸表を活用した財務分析や経営課題抽出については、会計基準では要求されていない事項になります。こういった部分は法人外部の第三者的目線が重要となってきますので、お困りの際はぜひ我々専門家に御相談頂ければと思います。
ご相談はこちらのホームページからお待ちしております。
「木村税理士・行政書士事務所」
また、当事務所は学校教職員の業務改善・業務負荷軽減にも精力的に取り組んでおります。詳しくは、こちらのホームページをご覧ください。
事務所代表プロフィール
名前：木村 成（きむら じょう）
保有資格：
・中小企業診断士（経営コンサルタントの国家資格者）
・税理士
・行政書士（行政手続、法律書類作成の国家資格者）
・日商簿記１級
・認定経営コンサルタント
・ファイナンシャルプランニング技能士２級
・中学、高等学校一種教員免許（元高校教員）
業務内容：
首都圏を中心に、学校や教育関連企業等の中小企業支援を業務として行っている。経営コンサルタントとしては、教育現場の業務改善や販路開拓のコンサルティングなどを中心に活動。行政書士としては、会社設立の代理や営業許認可取得の代理を中心に活動している。中小企業診断士・行政書士の２つの資格を活用して、経営面と法務面の２つの視点から、組織・事業の業務改善と拡大支援に励む。
[まとめ]
・学校法人の財産目録は、貸借対照表の明細書にあたる性格を持っているといえる
・貸借対照表では分からない財産の種類や各金額の情報を知ることができる
