[サマリー]
・退職金の支給制度には、大きく分けて「額方式」「ポイント方式」の2つがある
・額方式は計算式が分かりやすいというメリットがあり、ポイント方式は勤続年数に対し退職金が原則増加していくというメリットがある
現在、日本のほとんどの会社には退職金制度があります。退職金について算定式などを気にすることは日ごろほとんどないと思いますが、いざ退職するとなると俄然興味が湧いてくる部分でもあります。
今回は、その退職金制度について、計算式を考えなら種類を説明したいと思います。
退職金制度の種類について
そもそも退職金制度とは?
そもそも退職金制度とは、従業員が退職する際に支給する賃金のことを指します。この退職金制度の意味としては、
①従業員の会社への貢献に対して支払う報奨
②退職後、老後の生活の保障
③早期退職者への転換支援
などが挙げられます。特に、近年は早期退職制度が広まり、③の転換支援的な意味での退職金も一般的になっています。
では、実際に退職金を支給する際、どのような計算によって支給するのか、退職金制度の種類を説明していきます。
退職金制度の種類
(1)「額」による支給方式
最もシンプルな退職金のスタイルが、この額による支給方式です。そして会社の多くはこの額による支給方式を採用しています。公務員の退職金支給方式もこの方式です。
額による支給方式の場合、例えば下のような計算式が一般的に当てはまります。
退職金=基礎額×勤続年数×退職事由係数
です。
まず基礎額とは、退職金算定の基礎となる金額のことです。例えば、従業員の基本給や当該する等級の最低額などが当てはまります。
勤続年数は文字通り、入社してから何年経ったかというものです。端数月数は切り上げる場合など様々です。
最後に退職事由係数とは、退職理由による退職金減算の係数です。例えば定年退職なら係数「1.0」、入社してから5年以内の退職なら「0.6」といった具体です。会社としては従業員には長く勤めてもらいたいですし、急な退職なども望まないため、そういった事由の退職について退職金を減額するための係数です。
この額方式の退職金支給は分かりやすく、従業員にもなじみやすいというメリットがあります。反面、定年に近づくと基本給が下がる会社の場合退職金額も低くなってしまうため(基礎額が下がるため)、勤続年数が伸びているにも関わらず退職金が低下していくという状態を生みやすく、従業員からの反発を受けるというケースもあります。
(2)「ポイント」による支給方式
最近主流になりつつあるのが、このポイントによる退職金支給方式です。ポイントによる支給方式とは、ある基準によって決まるポイントを毎年積み上げていき、退職時にその累計ポイントに見合った退職金を受けるという方式です。
一例として式に表すと、このような形になります。
退職金=ポイント合計×ポイント単価×退職事由係数
このような計算式で退職金を決定します。
毎年積み重ねていくポイントについては、「2等級なら〇ポイント」「A評価が取れれば〇ポイント」「1年働くごとに〇ポイント」というような形で、等級や評価、勤続によって決定します。
ポイント単価については等級に対応させている会社が多いようです。
退職事由係数については先ほど説明したものと同じで、退職事由によって退職金額を減額する効果があります。
ポイントによる退職金支給方式のメリットは、先ほどの額方式のように勤続が長くなると退職金が減額される可能性があるといったおそれがないという点です。ポイントは積み重ねていくだけなので、退職金額は単純に増加していきます。
一方でデメリットとしては、額方式に比べれば全体像の把握が難しい制度ですので、一部従業員にとっては分かりづらく感じるかもしれないという点です。しかし、比較すれば難しいというだけで、十分わかりやすく導入しやすい制度だと個人的に感じます。
以上、退職金の計算式について、退職金支給の種類ごとに説明しました。退職金の種類によってメリット・デメリットが分かれるため、自社の状況(特に財務状態と従業員)を踏まえた退職金制度設計が重要です。
[まとめ]
・退職金の支給制度には、大きく分けて「額方式」「ポイント方式」の2つがある
・額方式は計算式が分かりやすいというメリットがあり、ポイント方式は勤続年数に対し退職金が原則増加していくというメリットがある
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