教育公務員の給与は人事委員会などのホームページに公開されています。しかし、非常に分かりづらい印象を持っている方も多いのではないでしょうか。

私自身、東京都に教員として入都した頃は、自分の年収がいくら程度になるのかも大まかにしか分かっていませんでした。

今回は、東京都の教員のボーナスである「期末・勤勉手当」について、成績率など算定式の解説やいつ支給されるのか、初任者がもらえる額はおよそいくらなのかなどを説明していきます。
(※2020年1月時点での東京都人事委員会の情報や条例を基準にして記事を作成しておりますのでご留意ください。


なお、当方は現在は税理士として活動しています。東京銀座に税理士・行政書士事務所を構えていますので、税務に関するご相談があるという方はこちらのお問い合わせフォームからご連絡下さい。また、当事務所ホームページはこちらをご覧ください。


関連として、教員がもらえる給与や年収の詳細や概要については、以下のリンク記事で解説していますので、気になる方は合わせてご確認ください。




東京都教員の年収構造

まず始めに、東京都の教員の年収構造について簡単に説明します。

東京都の教員の場合、月収に当たる「給与」と、ボーナスに当たる「期末・勤勉手当」を合計した額が年収になります。


東京都教員の年収の構造


ちなみに、給与の算定式をおおまかに説明すると、

給料表額+教職調整額+地域手当+義務教育等教員特別手当+管理職手当

このような形です。これに加えて住居手当や扶養手当なども算入しますが、これらは人によって額が異なる上に、給与計算においては比較的金額が小さいものといえます。
一方、上記の項目は管理職手当以外はほぼ全ての教員に支給さますし、管理職手当は副校長以上の役職にしか支給されないものの金額が非常に大きいです。
(地域手当は島しょ地域の教員には支給されませんが、その代わりへき地手当が支給されます)


今回の記事は、一般企業のボーナスにあたる期末・勤勉手当に絞って説明していくので、給与についてはここまでとします。しかし、後ほど説明する期末・勤勉手当の詳しい計算式にはこの給与計算が必要になってくるので、頭の片隅に入れておいてください。

それでは、東京都教員の期末・勤勉手当について解説していきます。

東京都教員のボーナス:期末・勤勉手当

いつ支給されるのか

支給時期は6月と12月の年2回です。

それぞれ6月の給与、12月の給与とは別に算定され支給されます。この月は2回給与がもらえるような気分になるので嬉しかったのを覚えています。


詳しく説明すると、
・6月の支給については「支給日6月30日」「基準日6月1日」
・12月の支給については「支給日12月10日」「基準日12月1日」

となっています。支給日が実際に支給される日、基準日は期末・勤勉手当の金額の算定基準になる日のことを指します。


ちなみに、6月と12月で同じ金額が支給されるというわけではありません。金額や算定式については、後程詳しく説明していきます。


いくらぐらい支給されるのか

期末・勤勉手当の金額は、およそ給与の4か月分になります。

先程説明したように期末・勤勉手当は年に2回支給されますが、その合計額が給与の4か月分となります。

ちなみに、私が教員だった頃の期末・勤勉手当で「570,732円」の支給というときがありました。この時の私の給与(月収。住居手当などを除く)は 「269,892円」でしたので、1回あたり2.1か月分という事になります。2回分ならおよそ4か月分という計算になることが確認できますね。


東京都の場合、教員に限らず区役所などの公務員も期末・勤勉手当の金額は給与の4か月分として概算する見方が一般的です。
給与に16を掛けると年収になるという事で、計算しやすいですね。

初任者はいくら支給されるのか

次に、初任者の期末・勤勉手当の支給額について説明します。

先程のように、期末・勤勉手当は給与のおよそ4か月として概算できるので、初任者の給与が分かればボーナスの金額も分かるという事になります。


まず、初任者は大卒ストレートを想定し、23歳になる年に入都(教員になる)したとしましょう。この場合、初任者の給与(月収)はおよそ25万円(248,760円)です。

先程の繰り返しになりますが、東京都教員の給与は

給料表額+教職調整手当+地域手当+義務教育等教員特別手当+管理職手当

という計算式で求めることができます。ここで、住居手当や通勤手当などは計算外としています。また、管理職手当は副校長以上にしか支給されません。

上の式で特に重要なのは「給料表額」という部分で、給与算定の基準になる部分になります。大卒23歳の場合、給料表額は2級9号というものを基準として197,300円と決まっています。
その197,300を基準に3つの手当を合計した金額が、およそ25万円(248,760円)なのです。


ここで、級や号などの給与計算・給与や年収について知りたいという方は、以下のリンクの記事をご確認ください。1つ目のリンクは概要の説明、2つ目のリンクは詳細の説明になっています。詳細の方はかなり細かいので、気合を入れて読んでいただければ幸いです。


これを参考に、初任者の期末・勤勉手当の金額を計算します。期末・勤勉手当の金額は給与のおよそ4倍でしたので、

248,760円×4か月分=995,040円(およそ100万円)

ということが分かります。1年目からボーナスが100万円近くもらえるということで、給与の面では非常にありがたいといえますね。

ちなみに、年収計算の場合は給与の金額に16を掛ければよいので、
248,760円×16か月分=3,980,160円(およそ400万円) という風に年収も簡単に求めることができます。

なお、初任給についてもっと詳しく知りたいという方は、以下のリンク記事をご確認ください。


東京都の教員のボーナスである期末・勤勉手当について、おおまかな説明は以上になります。ここからは期末・勤勉手当の計算式について詳しく解説していきたいと思います。少し長く、細かくなりますがお付き合い頂ければと思います。


詳しい計算式

期末・勤勉手当の計算式は以下のようになっています。


・期末手当:(給与の月額+扶養手当+地域手当+職務段階別加算額)×支給率×支給割合

・勤勉手当:(給与の月額+地域手当+職務段階別加算額)×期間率×成績率



なかなか分かりにくいかと思います。しかし、2つの式を見比べてみると非常に似ていることが分かりますね。違いは扶養手当があるかどうかという点と、支給率×支給割合 が 期間率×成績率になっているという点だけです。


それでは、要素を1つ1つ説明してきます。

給与の月額

給与の月額は、「給料月額+給料の調整額+教職調整額」で求めることができます。

まず、給料月額(給料の月額ではありません)とは、人事委員会のホームページで公開されている給料表額のことです。「〇級〇号」のように、成績などに応じて教員の給与算定上の地位が決められており、それに応じた金額が支給されます。

東京都職員給料表

次に、給料の調整額とは職務の複雑性や環境等が著しく特殊な職務に対し支給される金額です。公立の特別支援学校の教員などに支給されます。


最後に、教職調整額とは教員の残業代として支給される金額です。一律で給料表額(上記の給料月額)の4%が支給されます。
4%しか支給されないという点が非常に問題となっていますが、この記事ではあくまでボーナスの算定を解説していきたいと思います。


これら3つを足し合わせたものが給料の月額です。


扶養手当

扶養手当とは、配偶者や子どもの存在に対して支給される手当です。

扶養手当には2つの基準があり、
・配偶者6,000円、子9,000円、その他の扶養親族1人につき6,000円
・満16歳の年度初めから満22歳の年度末までの子の場合、1人につき13,000円

となっています。

地域手当

地域手当とは、地域による物価の違いなどを考慮して支給される手当です。

東京都の場合、23区や多摩地区を勤務校とする場合、給料月額(〇級〇号によって決定される給料表額です)に扶養手当を加えた額の20%、都外地域の場合12%が支給されます。

東京都の教員の手当の中でも大きな金額となるのが地域手当です。


職務段階別加算額

職務段階別加算額とは、名前の通り役職によって加算される金額のことです。
この加算される金額は、

給料の月額×(1+地域手当支給割合)×0~15%

と決まっています。地域手当支給割合とは先ほど説明した、23区と多摩地区は20%、都外地域は12%という割合のことです。

次に、「0~15%」という数値は、以下のように決定されます。

東京都教員の職務段階別加算額


・15%:統括校長、校長
・10%:副校長
・6%:主幹教諭、指導教諭
・3%:主任教諭、主任養護教諭
・0%:それ以外

このようになっています。


支給率

支給率とは、期末手当の算定に用いる指標で、役職によって変化する支給月数のことです。

支給率は以下のように決定されています。

東京都教員の期末手当、支給率


この数字を2倍にするとおよそ4か月に近づくという事も、先ほど概要のところで「教員の期末・勤勉手当はおよそ4か月」というように説明した1つの根拠となっています。


支給割合・期間率

次に、支給割合と期間率についてです。支給割合・期間率とは、ここまでの要素によって計算された数値を減額するか否かを決定する割合のことです。

支給割合と期間率は同じ意味と思っていただいて問題ありません。

期末・勤勉手当支給の基準日まで6か月働いていれば、満額の100%が支給されます。一方で、5か月以上6か月未満であれば80%の支給になってしまうなど、在職期間によってボーナスを減額する役割を果たすのがこの支給割合と期間率です。

成績率

成績率とは、勤勉手当の算定に用いる指標で、役職によって変化する支給月数のことです。学校教員の場合、以下のように決定されています。

東京都教員の成績率

・統括校長、校長:0~1.95か月
・副校長、主幹教諭、指導教諭:0.89~1.55か月
・主任教諭、教諭:0.9~1.5か月



このようになっています。
そしてこの成績率は、勤勉手当算定の上で曲者なのです。

「〇歳の主任教諭のボーナスを調べる」となったとき、この成績率は確定した数値を求めることができません。
毎回支給の度に変化する数値であり、予想が困難なのです。(「成績」なので当たり前といえば当たり前ですが…)




以上で、期末・勤勉手当の計算の説明が終わりました。

「全然わからない…」

という感想を持った方も多いかもしれません。
ここからは、この内容を噛み砕いた算定式のまとめと、モデルケースを用いて実際に期末・勤勉手当の計算をしていきたいと思います。


計算式のまとめ

ここまで計算してきた各要素を並び替えたり、くくったりしていきます。
まずは期末手当から計算していきましょう。

期末手当

まず、期末手当の計算式をおさらいします。

期末手当=(給与の月額+扶養手当+地域手当+職務段階別加算額)×支給率×支給割合


次に、それぞれの要素を展開してみます。

期末手当=(( 給料月額+給料の調整額+教職調整額)+扶養手当+(給料月額+扶養手当)×地域手当支給割合+((給料月額+給料の調整額+教職調整額) ×(1+地域手当支給割合)×0~15%))×支給率×支給割合

となります。ここで、「23区勤務」「扶養なし」「教諭」「普通校勤務」を想定すれば、
給料月額×1.24×支給率×支給割合

ここまで簡略化することができます。
(上の3つの条件によって、「給料の調整額=0」「扶養手当=0」「地域手当支給割合=20%」となるからです)


さらに、ボーナスまでの在職期間6か月かつ2回分のボーナスの合計額を求めるのであれば、

給料月額×1.24×2.6 = 給料月額×3.224


と簡略化することができました。1つ1つの要素は難しいですが、自分の状態に合わせて数字を入れていけば、簡単な式で表すことができます。



次に、勤勉手当の計算を行います。

勤勉手当

期末手当と同じように勤勉手当も計算式をまとめてみましょう。
おさらいですが、勤勉手当は以下の式で表すことができました。


勤勉手当=(給与月額+地域手当+職務段階別加算額)×期間率×成績率



ここから、それぞれの要素を展開していくと、
勤勉手当=((給料月額+給料の調整額+教職調整額)+(給料月額+給料の調整額+教職調整額)×地域手当支給割合+( (給料月額+給料の調整額+教職調整額) ×(1+地域手当支給割合)×0~15%))×期間率×成績率


となります。ここで先ほどと同様の仮定として「23区勤務」「扶養なし」「教諭」「普通校勤務」を想定すれば、

給料月額×1.24×期間率×成績率

ここまで簡略化することができます。さらにまた先ほど同様に、ボーナスまでの在職期間6か月とすると期間率は100%ですので、


給料月額×1.24×成績率



このようになりました。問題は成績率ですが、成績率を考える前に一旦期末手当と勤勉手当を合計したいと思います。


期末・勤勉手当の合計額


ここまでの条件の上での計算より、1年分のボーナス総額は、


給料月額×3.224+給料月額×1.24×成績率


となりました。もう一度条件をおさらいすると、「23区勤務」「教諭」「扶養なし」「普通校勤務」というケースです。では最後に、成績率と給料月額の条件を決定してボーナス総額の算定を行います。


まず、給与月額は「大卒ストレートで入都した23歳の教諭が、2校目への転勤を迎える27歳」時点を想定しましょう。丁度節目の時期ですので、ボーナスを考えるのもいいのではないでしょうか。
このようなケースの場合の給与月額ですが、大卒初任23歳では「2級9号」という給与の地位から始まり、27歳時点で「2級25号」という地位になっているケースがほとんどです。一般的に、教員は1年に4号ずつ地位が上がっていきます。
(〇級〇号という人事制度の仕組みについて詳しく知りたい方は、このリンクをご確認ください。→基本給決定の仕組み「等級号棒制とは?」


この2級25号の給料月額は、「232,100円」と決まっています。

東京都職員給料表より



最後に、成績率について考えます。教諭の場合、成績率は0.9~1.5か月と決まっています。したがって、2回の支給とも0.9か月だったと仮定すれば合計1.8か月となります。


以上の条件ものと、期末・勤勉手当の年間総額は、

給料月額×3.224+給料月額×1.24×1.8
約126万円



やっと求めることができました。ちなみに、給与の4か月分という目安で計算したところ117万円でしたので、おおむね4か月分という計算で問題ないと思います。というより、計算の手間を考えれば4か月分として概算した方がよいでしょう。



以上、東京都教職員のボーナスについて解説しました。教員として働いており今後のライフプランを立てたい方、これから教員を目指している方の参考になれば幸いです。また、当記事は東京都の教員に絞って計算・解説を行いましたが、東京都以外の教員もおおよそこのような計算構造になると思いますので、初任給の割合を給与に乗ずるなどして、ご自分の自治体の教員のボーナスを概算することができるかと思います。参考にして頂ければ幸いです。

なお、当職事務所ですが、税理士・行政書士事務所として、個人で事業をやっている方の申告や相続税・贈与税申告などを業務として行っています。公務員は副業禁止ではありますが、許可を得た上で副業を行っている方、相続によって親族の不動産賃貸事業を引き継いだ方や、親族の不幸があり相続税申告が必要な方など、税務に関するお悩み・ご相談があるという方は、お気軽に当事務所までご連絡ください。

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