[サマリー]
・成長ベクトル論とは、企業・集団の成長の方向性を決定するための手法である
・塾や教育業界の企業においては有効だが、学校法人での適用は少し難しく、特に多角化戦略については関連が薄い
以前当ブログでは、学校分析のフレームワークについて説明ました。
このような現状分析を行った次は、具体的な戦略策定のステップに入ります(この戦略策定のステップに至るまでの流れは、以前の記事をご覧ください)
今回は、戦略策定の代表的な考え方の1つである「成長ベクトル論」について説明します。
経営戦略策定:成長ベクトル論の活用
成長ベクトル論とは
成長ベクトル論とは、企業・集団の成長の方向性を決定するための手法のことです。具体的には、商品やサービスの軸と市場の軸に分け、それぞれ既存のものなのか新規のものなのかという4つに分類して考えます。(アンゾフという人が考えたので、アンゾフの成長ベクトルとか、アンゾフの成長マトリクスと呼ばれることもあります)
…言葉だと分かりづらいですね笑
実際に分析するときは下のような表に書き込むと良いので、これを使って説明していきます。
・市場浸透戦略:商品・サービスが既存であり、市場も既存の領域。
つまり、今ある商品やサービスを活用し、今の市場をさらに深堀していく戦略である。例えば、今ある商品の顧客1人当たりの購入量や購入頻度を増加させるプロモーションの強化など。
・市場開拓戦略:商品・サービスが既存であり、市場は新規の領域。
つまり、今ある商品やサービスを活用し、新しい市場に向けて販売していく戦略である。例えば、高齢者向け健康飲料を若年層にも向けて販売していくなど。
・新商品開発戦略:商品・サービスが新規であり、市場は既存の領域。
つまり、今の市場に向けて、新しい商品やサービスを開発・提案していく戦略である。例えば、肩こり解消の効能を持つサプリメントに加え、新しく美肌効果を持つサプリメントを開発するなど。
・多角化戦略:商品・サービスが新規であり、市場も新規の領域。
つまり、新しい商品やサービスを開発・提案し、それを新しい市場に向けて販売していく戦略である。例えば、健康グッズ販売企業が学習塾を始めるなど。
このような形です。商品やサービスがある程度自由に創造できる状態を前提にしていますので、学校法人でこの成長ベクトルを適用して戦略策定を行うのは、少し難しいかもしれません。
しかし、塾や教育業界の企業に関しては、このようなツールを使って考えることは非常に有用といえます。
成長ベクトル論の具体例:学習塾
例えば塾において成長ベクトル論を用いて戦略の方向性を考えるならば、このような部分の検討をすることになります。
・市場浸透戦略:既存の生徒と同様の属性(志望校、偏差値、居住地域など)の生徒の新規獲得、夏期講習等の講座選択数増加促進
・市場開拓戦略:新たな属性の生徒の獲得(志望校、偏差値、居住地域、塾へのニーズなど)
・新商品開発戦略:夏期講習や授業の新規メニュー作成、新規サービスの検討(web授業動画配信や帰宅見守りサービスなど)
例えばこのような形です。ここまで行ってきた現状分析を踏まえた上で、どのような戦略が自社・自校にとって最も有効かということをしっかりと考える必要があります。
また、「多角化戦略」については具体例を書きませんでしたが、実行するときはしっかり注意する必要があります。特に塾や教育業界企業においては進むべき道がある程度はっきりしているため、そぐわない可能性が高いです(例えば学習塾がトレーニングジムを始めたとして、リスクのわりにあまり大きな効果が見込める可能性は一般的に高くないです)。そして、学校法人においては多角化は無縁です。
戦略策定については、先ほど挙げたような細かすぎない表現で問題ありません。具体的にどんな行動をとっていくかという部分は、戦略策定から先のステップで決めることです(こちらの記事のピラミッド型の概念図をご覧ください)。
以上、成長ベクトル論の説明でした。
次回は、同じく戦略策定のツールであるPPMについて説明します。
[まとめ]
・成長ベクトル論とは、企業・集団の成長の方向性を決定するための手法である
・塾や教育業界の企業においては有効だが、学校法人での適用は少し難しく、特に多角化戦略については関連が薄い
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