[サマリー]
・学校現場は非常に時間に追われており、業務改善に費やす時間がないという不合理が生じているケースが多い
・その他、組織風土や業務特性が業務改善実施の阻害要因となっているといえる


昨今、学校現場では残業時間問題などを受け、業務改善の実施が叫ばれています。一方で、なかなか業務改善が進んでいない状態にある学校も多いのではないでしょうか。実際に、組織全体で業務改善に取り組んでいるという学校はごく僅かだと思います。

今回は、学校業務改善がなかなか進まない原因について考えたいと思います。

学校業務改善の阻害要因

なぜ業務改善は必要性か?

前提として、なぜ学校に業務改善が必要であるのかを説明します。ずばり、最大の問題として知らているのは教員の長時間労働問題です。


教員の残業時間調査

これは、文部科学省「教員勤務実態調査(平成29年度)」の概要です。小学校と中学校の先生を対象に、学内勤務時間と有給取得日数を調査したというものです。

この結果から、
・1日当たりの残業時間はおよそ3時間
・有給(年休)はおよそ10日しか消化できていない


という2点が示唆されたことになります。また、1日当たりの残業時間がおよそ3時間という事は、1か月あたり60時間程度の残業が発生していることになります。いわゆる過労死ラインが単月で100時間、2月連続で80時間となっていることも踏まえ、学校教員の残業時間は深刻な状態にあるということができるのです。


この残業時間を短縮していくには、業務改善が有効だと知られています


業務改善とは、業務の手順や内容そのものを見直し改善することにより、業務効率化や生産性向上を図っていく活動のことを指します。業務改善を学校全体という組織単位で進めていくことで、残業時間削減に向けて歩んでいくことができるのです。


実際に、業務改善の取り組みを行っている(もしくは行おうとしている)学校も多くあります。しかし、業務改善がなかなか進んでいないという学校もまた、多いのです。ここで、その要因について共有したいと思います。

なぜ業務改善は進まないか

①改善風土が根付いていない

学校全体として、改善の風土が定着している学校は非常に稀でしょう。そもそも学校は、毎年同じ行事を繰り返し行っていくという性質上、前年踏襲の考え方が主流です。また先生方も、指導要領改訂や教科書改訂がない限りは毎年同じ内容の授業がベースとなり、そこから一部の手直しをして授業を行うという形になります。つまり、一般企業と違って新しいものや革新を追求するような風土にはないのです。


しかし、これは決して悪い事ではありません。教育機関として、一定以上の水準の教育を児童生徒に提供していくためには、ある程度の型が必要不可欠です。またこれは、お役所などミスが許されない職場でも往々にしてあることです。

一方で、業務改善など新しい取り組みをしていくという点においては、このような風土は阻害要因の1つとして働いてしまうことになります。


②業務が属人化している

属人化とは、仕事が人についた状態です。この人にしかできない仕事やこの人だけのやり方のようなものが広がっている状態を、属人化と言います。


学校現場は、属人化が顕著です。


学校の先生方は分掌こそ他の先生と連携するものの、授業は当然自分のみの裁量で内容が決まります。また分掌事務も基本的には分業制で、自分流で作業をされている方が多いかと思います。このように、学校教員という仕事は職人的一面を持っているということができます。


このような傾向が強い場合、業務改善の実行が難しいのです。改善対象の業務を決定し、「このように変更していきましょう」と具体的な改善策を立案したところで、「自分には自分のやり方があるから…」というように当事者意識が欠落するケースが往々にしてあります。

業務が属人化した状態は、業務改善の実施に対する大きな阻害要因となりうるのです。

③業務改善を行う時間がない

これは、非常にシンプルな話です。先ほど説明したように、学校の先生方は月60時間程度の残業をされているといわれています。そのような状態で、新たな業務を行う余裕があるのでしょうか。

そもそも、業務改善の実行そのものにも大きな時間を必要とします。


業務改善とは一口に業務を見直せばよいというものではなく、

・どの業務を改善すべきなのか
・その業務を改善するとどれだけの効果が見込めるのか
・具体的にどのように改善するのか
・ほかの分掌にどのように展開してくのか
・改善後の効果測定はどのように行うのか


このような着眼点から分析・調査を行ったり、改善策の立案をしたりする必要があります。このような作業には長い時間がかかります。さらに、学校の先生方の専門は授業や教科であり、業務改善自体の専門性はあまりないというケースがほとんどです。そのような状態で、1日あたり3時間の残業をこなしながら、業務改善を実施していくというのが非現実的であることは明白だと思います。


最後に

以上、学校現場において業務改善が進まない理由について共有しました。大げさな表現もあったかもしれませんが、現場で働いている先生方や管理職の方は納得する部分もあったのではないでしょうか。

業務改善の阻害要因として、特に3つ目の「時間がない」というものは大きな問題です。1や2の要因については丁寧な説明や粘り強い働きかけで克服することもできますが、時間がないというのはどうしようもない問題です。

また、業務改善は専門的知識や経験を必要とする作業でもあります。専門性を持つ外部人材の活用なども、検討する余地は大きいと思われます。

学校業務改善についてお悩みの方は、認定経営コンサルタント・中小企業診断士の当事務所までご相談頂ければ幸いです。ご相談はこちらのホームページからお待ちしております。



[まとめ]
・学校現場は非常に時間に追われており、業務改善に費やす時間がないという不合理が生じているケースが多い
・その他、組織風土や業務特性が業務改善実施の阻害要因となっているといえる