[サマリー]
・駅や電車に載せる広告はマイナスにもなり得る。デザイン面と商圏の面からしっかりと考え抜いたものを掲載するべき
・ホームページ最上部の写真は、自校の最も強みであるものを載せるべき
以前当ブログでは、マーケティング・ミックスの4Pの「Promotion」にあたる販促戦略・プロモーション戦略について説明しました(詳しくはこちらの記事をご確認ください)。
今回は、プロモーションミックスの基本的な考え方を使って、学校における広告戦略について考えます。
学校における広告戦略のポイント
プロモーションミックスのおさらい
それでは、例のごとくプロモーション・ミックスのフレームワークを活用して考えていきます。おさらいすると、フレームワークの分類は「広告」「販売促進」「人的販売」「パブリシティ」「口コミ」でしたね(忘れた!という方はこちらの記事をご確認ください)。今回の記事では広告戦略について考えていきます。
学校における広告戦略
学校における広告には、駅や電車などに載せる広告と、ネットを活用するパターンに大別されます。順番に説明してきます。
駅や電車などに載せる広告
非常によく見かけます。私の事務所の近くの駅にも中高一貫や附属の学校の広告がたくさんあります。ここで重要なのは、広告を掲載する場所(駅)です。
学校は生徒が実際に当校してサービス(授業など)を受けるという性質上、商圏外に広告を設置してもほとんど効果がありません。非常に簡単な例でいうと、学校から電車で2時間離れた駅に広告を設置しても、効果は薄いでしょう。余程強い特色を持った学校であるようなケースを除き、広告は学校から距離が近い場所に設置すべきです(在学生との通学時間や住所から、自校の商圏を考えるのが効果的です)。
では、電車の車内に載せる広告はいかがでしょうか。よくあるケースは、「〇〇線沿いの学校」みたいな形で、路線図と共に四角い学校の広告が並ぶケースです。こんな広告です。
かなりカンタンに作ったので、イメージだけ伝わればと思います。実際の広告には学校の詳細な説明分が添えられています。
このような広告は、その路線を使っている方からすれば自分の家から近い学校を一覧形式で検討することができ、分かりやすい広告といえます。
しかし、広告の出し方によっては逆効果です。イメージが落ちます。
実際に、神奈川県~東京都を走る田園都市線内にこのタイプの広告がありました。1つの広告の中に10ほどの学校が広告を載せるパターンで、生徒の写真や校舎の写真などを背景として、学校の特色を文字で表現していました。
その中で、ある一校が完全に浮いているのです。
その学校は写真やイラストを使わず、深緑一色の背景に大きな文字で学校名を書くとういスタイルの広告でした。
これを田園都市線沿線に住む、子どもを持つ親が見たときどう思うでしょうか。
ほぼ間違いなく、選択肢から外れてしまいます。
少なくとも、プラスの印象を受けることは絶対にありません。
校名が書いてなければ、学校の広告であることすら分かりません。特色である学科の説明も文字が小さく、主張しているのは学校名のみです。さらに、学校名もブランド力が強い(知名度が高い)とはいえない学校です。
もしこの学校が広告を出すのなら、背景には学生や行事・校舎など自校の雰囲気が伝わる写真を使い、説明文には特色ある学科を前面に押し出すべきです。
このように、広告は出せばよいというものではありません。完成度の低い広告は、±0ではなくマイナスの効果を及ぼします。それが他校と並べられた広告でしたら尚更です。顧客は他校に乗り換えてしまいます。
(詳細にかきましたが、学校の特定は控えていただけると幸いです)
ネット広告(ホームページ)
学校におけるネット広告(広義で考えます)として代表的なものは、ホームページでしょう。
学校名で検索したとき一番上に表示されるのはやはりホームページであり、広告として重要な位置付けとなります。
このホームページですが、効果的に作成できている学校は少ないです。
というのも、こちらの画像をご覧ください。
こちらは、googleで「学校 ホームページ」と調べたときの検索上位のキーワードです。
「学校 ホームページ ダサい」がランクインしてしまっています。
つまり、学校のホームページを「ダサい」と感じている人は非常にたくさにるのです。
では、なぜダサいのでしょうか。そもそもテンプレートやスタイルが昔のものをそのまま使ってしまっているようなケースは「ダサい」といえますが、ホームページの印象というのはページを開いた瞬間に決まります。
つまり、トップページの上部を工夫する必要があるのです。
もっというと、トップメージ上部の写真やイラストの工夫が必要です。
また、具体例で説明したいと思います。
今回は、東京都立日比谷高等学校のホームページで考えます(誹謗中傷する内容ではありません。一般論の参考として使用させて頂きます)。
こちらが、日比谷高校のホームページを開いた瞬間、目に入るです。この高校のホームページを見た保護者や関係者は、どういった感想を持つでしょうか。
「歴史のありそうな校舎だな」
これです。逆に、これしか印象は生まれません。
しかし、日比谷高校ではこの方向で間違っていないのです。
なぜなら日比谷高校は創立140年にのぼる歴史を持つ学校であり、夏目漱石や横山大観といった偉人を輩出しています。高校が持つ歴史そのものが日比谷高校の強みであり、前面に訴求するべき要素だからです。
さらに言えば、日比谷高校は東京都立高校の中で典型的な「リーダー」校です。
ここでいう「リーダー」は抽象的な意味ではなく、競争地位別戦略におけるリーダーです(競争地位別戦略につていはこちらの記事をご覧ください)。
つまり、日比谷高校は「特定の学校行事」や「特定の進路指導の取り組み」をアピールするのではなく、学校教育そのものを押し出すべきです。これが競争地位別戦略のリーダーにおけるフルライン戦略です。「ここがすごいよ!」とアピールするのではなく、「全てしっかりやっています」という姿勢でいくべきなのです。
そういった意味で、日比谷高校のホームページのトップ画像は戦略に適しています。
逆に言えば、「歴史が深くない学校」や「リーダーでない学校」は、このようなホームページにしてはいけません。全ての面で勝負をかける戦略では、リーダーに勝てる要素がなくなってしまいます。
学校がとるべきホームページ戦略とは
現在の都立高校のホームページを見ると、ほとんどの学校が校舎の写真をトップに据えます。特に疑問を持ったこともないかもしれませんが、その写真が訴求したいポイントを考えてみてください。
校舎の写真を見て「この学校に入りたい!」と思う生徒・保護者はほとんどいません。
先程の日比谷高校の例のように、校舎そのものが学校の歴史を物語っているケースなどを除き、校舎の写真をトップに据えるのに意味はありません。ましてや改築予算がおりず校舎が老朽化しているにも関わらず、校舎の写真を載せている学校も非常に多いです。逆効果です。
では、なにを載せるべきなのか。
ずばり、自校が持つ最大の強みを写真で載せましょう。
学校行事が非常に盛り上がり力を入れている学校は、学校行事の写真を載せるべきです。進学指導に励む学校は、勉強している生徒の写真を載せるべきです。
こういった写真をトップページの一番目に入る場所に載せることで、「この学校や行事が楽しそうだな」「この学校に入れば勉強できるようになりそうだな」というイメージを、ホームページを見た生徒・保護者に一瞬で抱かせることができます。
最後にもう一度だけ考えてみてください。自校の強みは本当に校舎でしょうか。校舎の写真を見せることで、生徒・保護者にどんな印象を持たせたいのでしょうか。
以上、学校における広告戦略について考えました。広告戦略は非常に奥が深く、ここで書いたのはほんの一例にすぎません。私自身、学校へのコンサルティングではこういったことを踏まえて改善を行っております。
自校の広告について、もう一度考える機会になったなら幸いです。
次回は学校や塾における販売促進戦略について考えます。
[まとめ]
・駅や電車に載せる広告はマイナスにもなり得る。デザイン面と商圏の面からしっかりと考え抜いたものを掲載するべき
・ホームページ最上部の写真は、自校の最も強みであるものを載せるべき
学校の生徒募集対策にお悩みの校長・管理職の方、こちらのホームページからのご相談お待ちしております。
「木村税理士・行政書士事務所」