[サマリー]
・販売促進戦略には、生活者・消費者向けと流通チャネル向けの戦略がある
・学校の場合、生徒・保護者向けには学校説明会などにおいて、流通チャネル向けには塾や中学校に向けて重点的に対策を行っていく必要がある


以前当ブログでは、マーケティング・ミックス「4P」のうちPromotion:販促戦略の中でも、プロモーション・ミックス「広告」について、学校を例にして考えました。
ここで、プロモーション・ミックスのフレームワークは「広告」「販売促進」「人的販売」「パブリシティ」「口コミ」に分かれていましたね。詳しくはこちらの記事を参照してください。

今回は、「販売促進」について考えていきます。

販売促進戦略のポイント

学校における販売促進戦略とは

販売促進戦略は、生活者・消費者向けと、流通チャネル向けに大別されます。それぞれの例として、生活者・消費者向けにはPOPやサンプル配布・ポイントカードが、流通チャネル向けにはリベートや協賛といったものが挙げられました(これらの具体例についてはこちらの記事を参照してください)。
これら2つの観点に分けて考えてみます。


(1)生徒・保護者向けの販売促進戦略

自校に入学してもらう(入試を受けてもらう)ためには、生徒(入学前のという意味です)・保護者向けの販売促進は非常に重要になります。しかし、先ほど挙げたPOPやポイントカードといった例は一般的には小売業で使われるものであり、学校業界には全くなじみません。

では、学校においてどのように考えればいいでしょうか。
これは、直接生徒や保護者と接点が生じるアクションを検討すればよいのです。

つまり、「学校説明会」「部活動体験」などを考えてください。これらにおいてどのような戦略や対策を取っていくかということが、学校業界における販売促進の手法であると捉えましょう。

では、学校説明会を例に挙げて、どういった対策を取るべきか考えます。
まず、学校説明会における「学校」と「生徒・保護者」が対面する瞬間を想像します。ここでいう「学校」とは校舎という意味ではなく、学校が提供するサービスや場という意味です。

具体的に考えます。生徒・保護者が学校説明会に来ました。生徒・保護者の行動を追ってみます。

・校舎を発見する
・下駄箱を通る
・受付を済ませる
・体育館まで廊下を歩く(説明会は体育館で行うと仮定します)
・体育館に入り、見渡す
・座る
・話を聞く
・校舎案内役の生徒に付いていく
・案内役生徒の話を聞く
・教室に入り眺める
・校舎案内が終わり、アンケートを提出し下駄箱へ
・帰る

例えばこんな流れです。少々細かいと思うかもしれませんが、この項目のすべてが「学校と生徒保護者が対面する瞬間」です。この対面する場面で、学校に対する評価が決定します。

例えば下駄箱を通るとき、下駄箱の上に生徒の靴が乗っかっていれば「荒れている学校だな」という評価がくだり、保護者からの印象が下がります。
教室に入った時、汚れていても同じですね。
他にも、案内中に保護者が本校の生徒とすれ違った際、生徒側から挨拶があれば「しっかり生活指導もしている学校だな」というプラスの印象が生まれます。

このように、生徒・保護者向けの販売促進戦略とは、学校と生徒・保護者が接する場面を想定して、その場面ごとに対策を打っていくことが大切です。徹底的に生徒・保護者の立場になって対策を行うことが、募集倍率向上につながっていきます。



(2)流通チャネル向けの販売促進戦略

学校において流通チャネル向けに販売促進を行うということはどういうことでしょうか。
先程の(1)は直接生徒や保護者に向けた働きかけでしたね。この流通チャネル向けというのは、生徒・保護者に対して自校を紹介してくれるような存在に対しての働きかけになります。

つまり学校(ここでは高校を仮定します)で言えば、「塾」や「中学校」です。

塾は中学校に自校の価値をしっかりと伝えることができれば、こちらが宣伝しなくても塾や中学校が自分の生徒に対して宣伝してくれます。

では、自校が塾や中学校へどんなはたらきかけをしているかということを考えてみてください。おそらく、「塾への宣伝はほとんど行わず」、「中学校に対しては教員訪問(一部は生徒訪問のみ)」という学校がほとんどかと思われます。
特に、塾へのはたらきかけは非常に重要です。現在、全国中学生の通学率は61%、つまり2人に1人以上は塾に通っています。一位の奈良県に至っては通塾率74%にのぼります。
※数値データは2017年全国学力テストより抜粋しております

そして、生徒の塾への信頼は厚いです。学校教員であれば感じている方は多いでしょう。実際に私も、教員時代に塾講師へ絶対的信頼を持つ生徒を何人も見てきました。教員としては悲しいことでもありますが、少人数の指導で毎日塾に通っているようなケースであれば、信頼が厚くなるのも当然といえます。そして、志望校の決定理由に「塾の先生に勧められたから」を挙げる生徒も少なくありません。依然として生徒の志望校決定には教員の勧めの影響が大きいというのは事実ですが、他校が塾への営業を行っていないのであれば、自校が先行利益を得ることができとても有効な手段になります。

つまり、塾への営業は想像以上に重要です。商圏外(遠いというイメージで大丈夫です)の中学へ説明訪問に行くより、近場の塾に営業に行くほうが遥かに効果的です。同じ塾に2回であっても、3回であっても行くべきです。
塾の先生方も悪い気はしないはずです。地域の学校と有効な関係を作ることは塾にとっても有意義であり、塾は決して営業し辛い相手ではありません。

高校であれば、高校受験を扱う塾にぜひ営業に行き、信頼関係を築くべきです。

以上、学校における販売促進戦略を2つの視点から説明しました。
次回は、プロモーション・ミックスのフレームワークの1項目である「人的販売」について説明します。今回の記事で書けなかった塾への具体的な営業方法についてなど、次回の記事で説明したいと思います。

[まとめ]
・販売促進戦略には、生活者・消費者向けと流通チャネル向けの戦略がある
・学校の場合、生徒・保護者向けには学校説明会などにおいて、流通チャネル向けには塾や中学校に向けて重点的に対策を行っていく必要がある


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