[サマリー]
・価格戦略とはマーケティング・ミックスにおける価格面での戦略だが、多く場合価格の主導権は消費者にあることに注意が必要である
・価格戦略には大きく分けて、「コスト志向型価格設定」「需要志向型価格設定」の2つのパターンがある
以前当ブログでは、マーケティング・ミックスの4Pということで、「Product:商品戦略」について説明しました(詳しい説明はこちらの記事をご確認ください)。
今回は、4Pの続きということで「Price:価格戦略」について説明します。
マーケティング・ミックスの価格戦略について
価格戦略とは
価格戦略とは名前の通り、マーケティング・ミックスにおける価格面での戦略です。一口に「価格」といっても、そう簡単なものではありませんよね。高すぎれば誰も買ってくれませんし、安ければ利幅が小さくなってしまいます。
このように、価格は企業が一方向的に決定するものではなく、価格の主導権は消費者・購入者にあるといえます。つまり、企業にとっては「価格」でも、消費者・購入者にとっては「コスト」である意識が重要となります。
具体的に、価格戦略には2つの大きなパターンがあるといわれています。
パターン①:コスト志向型価格設定
コストの視点から売価を設定する戦略です。2つのパターンがあります。
(1)コストプラス価格設定
製品を作るのにかかった費用に、「これだけ利益が欲しい」という目標利益を足すことによって、売価を決定する方法です。とてもシンプルな価格戦略であるため設定が簡単ですが、
(2)目標価格設定
「これだけの数量が売れれば元がとれるだろう」というような利益が±0になる売上高を想定し、それにそって一定の利益が確保できるように価格を設定する戦略です。このような丁度利益が0になる売上高を「損益分岐点売上高」といいますが、詳しくは別の機会に説明します。
計算が複雑になることもある一方で、設備投資などが大きい業界では使われる戦略です。
パターン②:需要志向型価格設定
顧客の視点から売価を設定する戦略です。2つのパターンがあります。
(1)知覚価値価格設定
顧客が認識している価格を軸に、売価設定を行う戦略です。言葉にすると簡単ですが、実際には「PSM分析」などによる詳細な調査と分析が必要になります。
(2)需要価格設定
顧客のセグメントによって価格を変化させるよう法です。「セグメント」は細分化された市場単位のことでしたね(こちらの記事を参照)。
例えば、早割(早朝は安く設定)、季節割(閑散期は安く設定)、学割(学生は安く設定)などが挙げられます。
では、私立学校における価格戦略について考えてみます。
学校における価格戦略
私立学校で価格戦略が重要となるのは、入学金や学費になります。そしてこの入学金や学費ですが、実際に自校が「コスト志向型価格設定」「需要志向型価格設定」のどれで価格設定をしているか確かめてみてください。
・①のコストプラス価格設定を採用している学校は少ないかと思います。学校に限らず、このコストプラス設定で商品・サービスが十分に売れるというのは、余程商品・サービスに魅力があるか、貴重であるか、需要が大きいかなどレアケースかと思われます。
・②の目標価格設定を採用している私立学校は一定数あるかと思います。ここで重要となるのが、利益が丁度±0になる売上高を算出する損益分岐点の考え方になります。これは、かかるコストを「変動費」と「固定費」に分け計算を行いますが、ある程度の会計知識が必要です。会計士や税理士が顧問でいましたら相談してみるか、いなければ我々コンサルタントの出番となります。
・③の知覚価値価格設定については、採用している私立学校はとても少ないでしょう。というのも、調査・分析が非常に複雑だからです。アンケートなどで学費に関する質問(高いか安いかなど)をしている学校はあっても、それを定量的に分析して実際に価格改定を行うというケースはほとんどないでしょう。
しかし、アンケートを取らなくとも、商圏内の競合他校の入学金や学費を調査して、それと比べてこの値段なら保護者の方は高いとは感じないだろう、というような分析を行うのは十分有効です。
ポジショニングマップの説明で「価格」の軸をいれて説明したように、ぜひ商圏内の競合他校の学費や入学金を調査して、分析することをおすすめします。
・④の需要価格設定については、検討する要素は他と比べて少ないですね。
しかしながら、進学校における特待生学費免除の制度などはまさにこの需要価格設定戦略です。「高学力層」のセグメントをターゲットとして、価格を設定します(「S」と「T」の考え方ですね!)。
自校がターゲットとするセグメント(顧客層)の特性をしっかりと考えることができれば、需要価格設定も有効であるといえます。
以上、マーケティング・ミックスの4Pのうち、Price:価格 について説明しました。
先程知覚価値価格設定の説明の中で、「PSM分析」という専門的分析が必要になります。という説明をしたかと思います。
次回はこの「PSM分析」についてカンタンに説明したいと思います。
[まとめ]
・価格戦略とはマーケティング・ミックスにおける価格面での戦略だが、多く場合価格の主導権は消費者にあることに注意が必要である
・価格戦略には大きく分けて、「コスト志向型価格設定」「需要志向型価格設定」の2つのパターンがある
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