[サマリー]
・付加価値とは、会社が事業によって生み出した製品やサービスの中で、会社が付け加えた部分のことである
・日銀方式による付加価値の計算は、経常利益に5つの科目を加算することによって行う




付加価値の計算方式には、大きく分けて3つの方法があります。「日銀方式」「中小企業庁方式」「簡便法」です。今回はこの中でも、日銀方式による付加価値の計算方法について説明したいと思います。

日銀方式の付加価値計算

付加価値とは?

付加価値とは、会社が事業によって生み出した製品やサービスの中で、会社が付け加えた部分のことを指します。


上記の定義の中の「付け加えた部分」というニュアンスが非常に重要です。
例えば、商品を400円で仕入れ、それに手を加えて600円で売ったとします。この場合、600円という数字は売上高でしかありません。もともとこの商品は400円の価値があったわけですから、この企業が600円分の価値を生み出したわけではないのです。

つまり、この企業が「付け加えた価値」は、売上高の600円から仕入値の400円を引いた200円という事になります。この200円が付加価値です。


付加価値のイメージはこれで問題ありませんが、実際に決算書から計算する場合には少し複雑な計算式となります。今回は、日銀方式に絞って付加価値の計算方法を解説します。

付加価値の計算:日銀方式

日銀方式による付加価値の計算式は、以下の通りです。

日銀方式による付加価値の計算


付加価値=経常利益+人件費+賃借料+租税公課+金融費用+減価償却費



このような計算式で付加価値を求めることができます。それぞれの科目を足していくため、加算法による付加価値計算と呼ばれることもあります。

それでは、それぞれの科目について説明していきます。

経常利益

経常利益とは、企業が生み出した利益の中で臨時の損益を除いた部分のことです。

売上高から売上原価と販売費および一般管理費を差し引き、営業外収益・費用を加減したものが経常利益です。経常利益は財務分析において非常に重要な位置づけとなるので、少し自信がないという方は下の損益計算書での位置付けを確認してみてください。

損益計算書の見方


人件費

人件費とは、従業員に支払った費用のことです。

賃借料

賃借料とは、土地や建物などの賃貸料として支払った費用のことです。

租税公課

租税公課とは、事業税や印紙税、登録免許税など経費として計上できる税金のことです。

他にも、自動車税や事業所税、固定資産税なども租税公課にあたります。一方で、租税公課にあたらない(経費として計上できない)税金として、法人税や住民税などが挙げられます。これらの項目は、経費とは別に損益計算書において税引き前当期純利益から減算する項目となります。

金融費用

金融費用とは、金融資産・負債に関わって発生した費用のことです。

金融費用の代表的な項目が支払利息です。借入金等の保有に伴って発生する利息は、損益計算書において金融費用として計上されます。

減価償却費

減価償却費は、固定資産の時の経過に伴って発生するとみなされる費用のことです。

100万円の倉庫も耐用年数が10年であれば、1年あたり10万円ずつ価値が下がっていくと考えることができますね。このような考えのもと、1年あたり10万円を費用として計上したものが減価償却費です。

日銀方式による計算のポイント

日銀方式は、付加価値の計算方法の中でも考慮する項目が多く、複雑であるといえます。一方で、全ての項目が損益計算書から拾うことができるというもの特徴の一つです。

加算していく項目は多いですが、損益計算書を見ながら1つずつ加算していけば、日銀方式による付加価値の計算を行うことができます。

焦らず1つ1つ計算していきましょう。


また、付加価値の計算できたからそこで終わりというわけではありません。
付加価値の算出の後は、労働生産性や労働分配率の計算をして初めて分析の意味があるといえます。労働生産性や労働分配率については以下の記事で意味や計算方法を解説しているので、参考にして頂ければと思います。
日本の労働生産性:計算式と付加価値との関係を考える
労働分配率の計算方法:日本における平均値とは?



終わりに

以上、日銀方式による付加価値の計算方法を解説しました。先ほどの説明した通り、付加価値の計算はその数値を活用して更に分析を行っていくことで、大きな意味が現れてきます。自社の生産性に関する状態や課題について知りたいなどお悩みの際は、我々専門家に御相談頂ければと思います。

販路拡大や資金繰りなど会社経営にお悩みの社長や管理職の方、こちらのホームページからのご相談お待ちしております。
「木村税理士・行政書士事務所」


[まとめ]
・付加価値とは、会社が事業によって生み出した製品やサービスの中で、会社が付け加えた部分のことである
・日銀方式による付加価値の計算は、経常利益に5つの科目を加算することによって行う