近年、ダンスや音楽を中心としたクラブやホストクラブなどが若者を中心に人気となっています。渋谷や新宿にはたくさんのクラブがあり、毎夜賑わっています。そこで、クラブ経営をしたい、クラブを開業したいと考える方もいらっしゃるのではないでしょうか。
一方で、クラブは家賃の負担などが大きく、飲食店や小売店と比べて利益を上げる上でのポイントが見えづらい事も特徴といえます。
そこで当記事では、クラブ経営で儲けるには?をテーマとして、業界の利益率など指標の平均値、抑えておくべき利益率のポイント、シミュレーションなどについて解説していきます。
クラブ経営で儲けるには
クラブ経営の特徴
クラブは、他の一般的な飲食店や小売店と比べて、以下のような違いがあります。クラブを経営していく上では、このような経営上の違いをしっかりと抑えた上で、事業を推進していく事が重要です。
特徴①「固定費支出が大きい」
クラブの財務的な特徴の一つは、固定費の支出が大きいという点です。
そもそも固定費とは、売上高がある程度変化しても、基本的には変化しない費用のことをいいます。その中でも代表的なものが、「家賃」と「人件費」です。家賃はクラブにどれだけお客さんが入っても変わりません。人件費についてはよほど売上が大きくなれば新しく人を雇うため変化しますが、基本的には変化しない費用です。
ちなみに、固定費と反対に、売上の変化により変化する費用を変動費と言います。変動費の代表例は、原材料費、水道光熱費などです。例えばラーメン屋の場合、ラーメンを売るには(売上を増やすには)ラーメンを売る必要があるため、原材料である小麦粉やメンマを仕入れ、鍋で煮る必要があります。このように、原材料費や水道光熱費は変動費としての性質があるのです。
さて、固定費と変動費、何が言いたいのかというと、固定費が大きいクラブ経営はハイリスクハイリターンの経営であるという事です。
少し専門的となるので解説はここでは控えますが、固定費が大きいということは、売上が増加した場合の利益の増加幅が非常に大きいということなのです。つまり、「繁盛すれば、大きな利益が見込める」ということです。逆に、売上が減少した場合の赤字幅も非常に大きくなります。つまり、「繁盛しなかった場合、大きな赤字となる」ということです。
そして、固定費は簡単に削ることができません。家賃を下げる、人件費を下げるというのは難しいものです。したがって、開業段階から緻密な収益計算をしておく必要があるのです。
特徴②「競合の存在が大きい」
クラブ経営が他のお店の経営と大きく違うところに、「競合の存在」が挙げられます。
競合とは、簡単に言えばライバル店のことです。一般的なお店では、競合となり得る相手が非常に多いというケースがほとんどです。例えば、「昼ご飯を食べたがっている人」に対する競合店舗は、飲食店全店です。非常に数が多く、絞ることが困難となります。また、「昼に牛丼が食べたい」と決めている方でも、おいしそうなカレー屋の前を通れば、そのカレー屋に入ってしまうかもしれません。
一方で、クラブは飲食店などと違い個性が強いため、来店する方の多くは「今日はクラブへ行こう」という明確な意思を持っています。したがって、競合となり得るのは基本的に近隣の他のクラブとなります。
ここで重要となるのが、競合クラブとの差別化です。
差別化(他との違いを作ること)によって、顧客を自店舗の引き込むことができます。
特徴③「人員の維持が重要」
クラブなど深夜営業のお店の「存続」について重要となるのが、この人員の維持です。
現在、最低賃金の引上げや企業の採用状況を総合し、労働者の立場が強くなってきています。実際にアルバイト等をしている方も、「仕事が合わなかったら辞めて、次へ行く」という姿勢が非常に一般的です。これを受け、小売や飲食店は深刻な人手不足の状況が続いています。
クラブ経営は、その事業内容の特殊性や深夜営業という特徴があるため、働きたいと思う方が最初から限られています。その限られた方たちの中から、自店舗で働いてくれる人材を維持しなければいけません。また、特にホストクラブなどの場合、従業員のレベルは店の業績に直結すると言っていいでしょう。それほどに重要と言えます。
このように、クラブ経営を継続していく上では、重要視すべきポイントがあるのです。また、ここまで解説したものと同様に、以下のような財務的な視点も重要となります。
業界の指標の平均値
クラブ経営をされる方であれば、数字のことをある程度知っておく必要があります。(正確には、自分が知らないなら知っている人を顧問につけたりする必要があります)
重要な財務指標の業界平均値は、おおむね以下の通りとなっています。なお、数値は「日本政策公庫 小企業の経営指標調査(興行業)」を参考としております。
全体指標
全体指標は、ざっとこんな形となっております。一応、以下に列挙します。
総資本経常利益率 (%) :-0.8
自己資本経常利益率 (%) :56.3
売上高総利益率 (%) :66.4
売上高営業利益率 (%) :-1.1
売上高経常利益率 (%) :-0.6
売上高経常利益率(償却前) (%) :0.6
人件費対売上高比率 (%) :24.9
諸経費対売上高比率 (%) :47.3
金融費用対売上高比率 (%) :0.3
総資本回転率 (回) :3.6
受取勘定回転期間 (月): 0.9
支払勘定回転期間 (月) :1.1
従業者1人当たり売上高 (千円) :17,624
従業者1人当たり粗付加価値額 (千円) :4,198
粗付加価値額対売上高比率 (%) :25.9
従業者1人当たり有形固定資産額 (千円) :1,281
粗付加価値額対有形固定資産額比率 (%) :3,418.5
有形固定資産回転率 (回) :150.7
従業者1人当たり人件費 (千円): 3,949
人件費対粗付加価値額比率 (%) :95.5
当座比率 (%) :127.6
流動比率 (%) :169.1
借入金回転期間 (月): 5.0
固定長期適合率 (%) :45.0
自己資本比率 (%) :-81.8
損益分岐点比率 (%) :104.8
……細かいですよね笑 あまり財務に詳しくない方は、これらを見てもよく分からないと思います。ですので、重要な指標だけ抜粋して紹介します。
重要指標
総資本経常利益率 (%): -0.8
売上高総利益率 (%) :66.4
売上高営業利益率 (%) :-1.1
売上高経常利益率 (%) :-0.6
従業者1人当たり売上高 (千円): 17,624
従業者1人当たり人件費 (千円) :3,949
流動比率 (%) :169.1
自己資本比率 (%): -81.8
損益分岐点比率 (%): 104.8
最低限、この数値を抑えておけば大丈夫です。なお、表の色分けは「収益性(黄)」「安全性(緑)」「効率性(青)」を示しています。もし既にクラブ経営をされている方であれば、自分のクラブのこれら指標の数値がどのような値なのか、上記の業界平均と比べて高いのか低いのかを確認してみて下さい。
シミュレーションの重要性
ここまで、クラブ経営に重要な視点や財務指標を説明しました。この記事を読まれている方は、これからクラブを開業したいが儲かるのか不安な方、クラブ経営をしているが上手くいっていない方など様々かと思います。
しかし、皆さんに共通して重要だといえるのが、「収益・利益のシミュレーション」です。
これから開業される方であれば、開業によってどれだけの収益が得られるのかは何より大切です。クラブ経営は前述の通り固定費や初期投資が大きいため、「やってみたけど失敗した」では済まされません。開業する以上、必ず成功させる必要があります。
同様に、既にクラブ経営をされている方でも、ここまで説明した「競合との差別化」「業界指標との比較や財務分析」などについて、もしご自分が分からないならば専門家に依頼する必要がでてきます。
ちなみに、収益シミュレーションとは以下のようなものです。
開業・起業にはいくらかかる?失敗しないためには
上記の記事では「開業にはいくら必要か」と題しシミュレーションをしていますが、これはそのままクラブ経営にも当てはまります。最も恐れるべきは、開業する段階で赤字が確定している開業です。
カフェなどで特にありがちですが、店舗の大きさ、従業員の数、競合の存在などにより、開業前からすでに赤字が確定してしまっているようなケースがあります。クラブ経営も同じことです。
クラブ経営を成功させるには、経営やマーケティングの視点などが必要不可欠といえます。
クラブ開業のことは、行政書士にお任せ下さい
以上、クラブ経営における利益率などに関する重要なポイントを解説して参りました。クラブを経営していく上で何より重要なことは、開業・起業前の調査分析です。顧客の目線、財務の目線に立って事業を分析することにより、どの程度の利益が見込まれるのか、それとも赤字が見込まれるのかを判断することができます。一世一代の起業・開業であるからこそ、専門家に依頼しリスク低減を図るべきだと考えております。
当事務所は、開業手続の国家資格である「行政書士」、経営コンサルタントの国家資格である「中小企業診断士」、双方を保有した専門家が依頼者の方の御要望に丁寧にお応えして参ります。
クラブ経営をしていく上で必要となる収益シミュレーションや開業手続について、十分な知識と経験から業務を遂行いたします。それぞれの御依頼の価格については、以下のようになっております。
・収益シミュレーション:15万円(詳細はこちら)
・開業手続に関する申請書作成、申請代理:25万円(詳細はこちら)
どうぞお気軽に御相談ご相談ください。
ご相談・ご依頼は以下のお問い合わせフォームからお願い致します。
当事務所について
氏名:木村 成(きむら じょう)
保有資格:
・中小企業診断士(経営コンサルタントの国家資格者)
・税理士
・行政書士(行政手続、法律書類作成の国家資格者)
・日商簿記1級
・認定経営コンサルタント
・1級ファイナンシャルプランニング技能士
業務内容:
東京都銀座にて、中小企業・小規模事業者の方の支援を業務として行っております。経営コンサルタントとしては、販路開拓や補助金申請、創業融資支援などを中心に活動。行政書士としては、会社設立の代理や営業許認可取得の代理を中心に活動しております。中小企業診断士・行政書士の2つの資格を活用して、経営面と法務面の2つの視点から、依頼者の方の事業拡大を業務として行っております。