「風俗営業」という言葉を聞くと、特定のサービスを提供するようなお店のイメージが強いかと思いますが、必ずしもそうではありません。例えば、キャバクラやホストクラブも風俗営業に区分されています。また、深夜にお酒をメインに提供するようなお店(居酒屋やバーなど)は深夜酒類提供飲食店という分類になるため、同じく風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律 )に定められているのです。

今回は、このような風俗営業についてどのような区分がされるのか、どんな事業・営業が風俗営業に当たるのかについて行政書士が解説したいと思います。

風俗営業とは

風俗営業とは、風営法(風俗営業等の規制及び業務の適正化等に関する法律 ) 第2条に規定される一定の営業のことを指します。

この風営法第2条に規定される営業とは、キャバクラやホストクラブ、マージャン店、ゲームセンターなどのことを指します。つまり、風営法で定義されている「風俗営業」には、いわゆる性的なサービスを目的とする店舗は含まれていません。これらの店舗は風営法第2条の4項以下において、「性風俗関連特殊営業」として規定されています。つまり、狭義の意味での風俗営業に、これら性的サービスを目的とした営業は含まれていないという事になります。


実際に、風営法に定められている区分を見ながら確認していきます。

風俗営業の区分

風営法に規定されている営業を表にしたのが、以下の図です。

風俗営業の区分


このように、風営法に規定されている営業は「風俗営業」「性風俗関連特殊営業「特定遊興飲食店営業」「深夜酒類提供飲食店営業」に分類されます。

では、それぞれ解説していきます。

風俗営業

接待飲食等営業

風営法において「接待」とは、「歓楽的雰囲気を醸し出す方法により客をもてなすこと」と定義されています。具体的には、以下の1号~3号の営業が規定されています。

1号営業

1号営業は、料理店・社交飲食店と規定されています。

これに該当するのは、キャバクラやホストクラブなどのお店です。接待を目的とする営業であるため、接待飲食等営業の第1号として規定されています。

2号営業

2号営業は、低照度飲食店と規定されています。

ここで低照度とは、「営業所内の照度を十ルクス以下として営むもの」と定義されています。簡単に言うと、暗い室内での営業がこの2号営業にあたることとなります。

3号営業

3号営業は、区画席飲食店として規定されています。

区画席とは、「他から見通すことが困難であり、かつ、その広さが五平方メートル以下である客席を設けて営むもの」として定義されています。

遊技場営業

遊技場営業には名前の通り、ゲーム・遊びに関する営業が規定されています。

4号営業

4号営業には、マージャン店やパチンコ店が規定されています。

詳しく説明すると、「まあじやん屋、ぱちんこ屋その他設備を設けて客に射幸心をそそるおそれのある遊技をさせる営業」として定義されます。ちなみに、射幸心とは人間が幸運を得たいと思う感情の事です。

5号営業

5号営業は、ゲームセンターなどが規定されています。

少し細かくなりますが、定義としては「スロットマシン、テレビゲーム機その他の遊技設備で本来の用途以外の用途として射幸心をそそるおそれのある遊技に用いることができるもの(国家公安委員会規則で定めるものに限る。)を備える店舗その他これに類する区画された施設(旅館業その他の営業の用に供し、又はこれに随伴する施設で政令で定めるものを除く。)において当該遊技設備により客に遊技をさせる営業(前号に該当する営業を除く。)」となります。

ここまで説明したものが、風営法における狭義の意味での「風俗営業」です。

一般的なイメージでの風俗営業はむしろここから説明するような営業だと思いますので、許可申請を考える際はしっかりと違いを意識する・使い分けることが大事だといえます。

性風俗関連特殊営業

性風俗関連特殊営業は、「店舗型性風俗特殊営業」「無店舗型性風俗特殊営業」「映像送信型性風俗特殊営業」「店舗型電話異性紹介営業」「無店舗型電話異性紹介営業」に分類されます。

店舗型性風俗特殊営業

店舗型性風俗特殊営業には、1号~6号の営業が規定されています。

1号営業

1号営業は、いわゆるソープランドが規定されています。

定義としては、「浴場業の施設として個室を設け、当該個室において異性の客に接触する役務を提供する営業」となります。

2号営業

2号営業は、いわゆる店舗型のファッションヘルスが規定されています。

定義としては、「個室を設け、当該個室において異性の客の性的好奇心に応じてその客に接触する役務を提供する営業」となります。

3号営業

3号営業は、ヌードスタジオなどが規定されています。

定義としては、「専ら、性的好奇心をそそるため衣服を脱いだ人の姿態を見せる興行その他の善良の風俗又は少年の健全な育成に与える影響が著しい興行の用に供する興行場として政令で定めるものを経営する営業」となります。

4号営業

4号営業は、ラブホテルなどが規定されています。

定義としては、「専ら異性を同伴する客の宿泊(休憩を含む)の用に供する政令で定める施設を設け、当該施設を当該宿泊に利用させる営業」となります。

5号営業

5号営業は、アダルトショップなどが規定されています。

定義としては、「店舗を設けて、専ら、性的好奇心をそそる写真、ビデオテープその他の物品で政令で定めるものを販売し、又は貸し付ける営業 」となります。

6号営業

6号営業には、いわゆる出会い系喫茶などが規定されています。

定義としては、「1号~5号に掲げるもののほか、店舗を設けて営む性風俗に関する営業で、善良の風俗、清浄な風俗環境又は少年の健全な育成に与える影響が著しい営業として政令で定めるもの」となります。

6号営業のように、ここまで説明した定義には「店舗を設けて」という表現(個室なども含む)が入っていることが分かるかと思います。店舗型性風俗特殊営業ということで、店舗を設けて営む営業が規定されているのです。

一方、店舗を設けないで営む営業がこれから説明する「無店舗型性風俗特殊営業」です。

無店舗型性風俗特殊営業

無店舗型性風俗特殊営業には、1号~2号の営業が規定されています。

1号営業

1号営業は、いわゆる派遣型ファッションヘルスが規定されています。

定義としては、「人の住居又は人の宿泊の用に供する施設において異性の客の性的好奇心に応じてその客に接触する役務を提供する営業で、当該役務を行う者を、その客の依頼を受けて派遣することにより営むもの」となります。

2号営業

2号営業は、アダルト画像送信営業が規定されています。

定義としては、「電話その他の国家公安委員会規則で定める方法による客の依頼を受けて、専ら、前項第五号の政令で定める物品を販売し、又は貸し付ける営業で、当該物品を配達し、又は配達させることにより営むもの」となります。途中で出てくる前項第五号とは、店舗型性風俗特殊営業第5号のアダルトショップなどのことです。

映像送信型性風俗特殊営業

映像送信型性風俗特殊営業とは、インターネット等を使ったアダルト画像送信の営業のことです。

定義としては、「専ら、性的好奇心をそそるため性的な行為を表す場面又は衣服を脱いだ人の姿態の映像を見せる営業で、電気通信設備を用いてその客に当該映像を伝達すること(放送又は有線放送に該当するものを除く。)により営むもの」となります。先ほど説明した無店舗型性風俗特殊営業の第2号との違いは、「電気通信設備を用いて」という部分になります。インターネットなどを使って画像を送信・販売する場合、この営業に該当することになります。

店舗型電話異性紹介営業

店舗型電話異性紹介営業とは、入店するタイプのテレホンクラブのことです。

定義としては、「店舗を設けて、専ら、面識のない異性との一時の性的好奇心を満たすための交際(会話を含む。次項において同じ。)を希望する者に対し、会話(伝言のやり取りを含むものとし、音声によるものに限る。以下同じ。)の機会を提供することにより異性を紹介する営業で、その一方の者からの電話による会話の申込みを電気通信設備を用いて当該店舗内に立ち入らせた他の一方の者に取り次ぐことによつて営むもの(その一方の者が当該営業に従事する者である場合におけるものを含む。)」となります。

非常に詳細な定義と、お店の目的とのギャップを感じますが、これが法律の面白い部分ともいえますね。

無店舗型電話異性紹介営業

無店舗型電話異性紹介営業とは、無店舗タイプのテレホンクラブのことです。

定義としては、「専ら、面識のない異性との一時の性的好奇心を満たすための交際を希望する者に対し、会話の機会を提供することにより異性を紹介する営業で、その一方の者からの電話による会話の申込みを電気通信設備を用いて他の一方の者に取り次ぐことによつて営むもの(その一方の者が当該営業に従事する者である場合におけるものを含むものとし、前項に該当するものを除く。)」となります。

「店舗を設けて」「店舗に立ち入らせ」などの表現がない点が、先ほど開設した店舗型電話異性紹介営業との違いとなります。

特定遊興飲食店営業

特定遊興飲食店営業には、ナイトクラブなどが規定されています。

定義としては、「ナイトクラブその他設備を設けて客に遊興をさせ、かつ、客に飲食をさせる営業(客に酒類を提供して営むものに限る。)で、午前六時後翌日の午前零時前の時間においてのみ営むもの以外のもの(風俗営業に該当するものを除く。)」となります。

深夜酒類飲食店営業

最後に解説するのが、深夜酒類提供飲食店営業です。深夜酒類提供飲食店営業に該当する可能性があるのは、居酒屋やバーなどお酒を提供するお店です。しかし、これらのすべてが深夜酒類提供飲食店営業に該当するわけではありません。
(詳しくは、こちらのページをご確認ください。

深夜酒類提供飲食店営業に該当するかの判断基準は、大きく2つです。

①メインとしてお酒を提供しているか
②深夜0時~6時も営業を行うか


この2点を満たす場合には、深夜酒類提供飲食店営業に該当することになります。飲食店営業許可に加えて深夜酒類提供飲食店営業の手続きもする必要があるため、大変な手続きとなります。飲食店営業は保健所とのやりとりですが、酒類提供飲食店営業は風営法に規定されているため、警察とのやりとりが必要となります。当然、手続きの複雑さやかかる時間も大きなものとなります。


ここで、先程説明した条件の①「メインとしてお酒を提供しているか」についてもう少し詳しく解説します。ここで言うメインとは、「お客さんがお酒を目的に来店するか否か」で判断されるものです。

例えば、ファミリーレストランや牛丼屋、うどん屋などもお酒を提供していますよね。しかし、こういったお店に「お酒を飲むために来店する」という方は基本的にはいないかと思います。うどん屋でしたら、うどんを食べるためにお店に行きますよね。

しかし、居酒屋はどうでしょうか。居酒屋に行く目的は基本的にはお酒を飲むためです。このようなお店が、「メインとしてお酒を提供するお店」と判断されることになります。


風俗営業許可は行政書士にお任せ下さい

以上、風俗営業の定義、そして風営法に規定される営業について解説しました。

風営法に規定される営業はそもそも区分が多岐にわたり、また区分の判断も複雑です。また、営業許可の申請をする際も、施設・設備の要件や人的要件、店舗図の作成など一般的な飲食店と比べて難易度が非常に高いことが知られています。
実際にお店を経営したいと思っている方のなかには、申請したのになかなか通らないという方も多いのではないでしょうか。


このような、風俗営業に関する営業許可申請の手続きは、ぜひ行政書士にお任せ下さい。

当事務所は飲食店や接待店を専門として、申請手続きの代行業務を行っております。正確かつ迅速な申請手続代行を念頭に活動しておりますので、どうぞお気軽にご相談ください。

ご相談・ご依頼は、こちらのホームページからお待ちしております。
行政書士「木村税理士・行政書士事務所」

事務所代表プロフィール

氏名:木村 成(きむら じょう)

保有資格:
・中小企業診断士(経営コンサルタントの国家資格者)
・税理士 ・行政書士(行政手続、法律書類作成の国家資格者)
・日商簿記1級
・認定経営コンサルタント
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首都圏を中心に、中小企業・小規模事業者の方の支援を業務として行っております。経営コンサルタントとしては、販路開拓や補助金申請、創業融資支援などを中心に活動。行政書士としては、会社設立の代理や営業許認可取得の代理を中心に活動しております。中小企業診断士・行政書士の2つの資格を活用して、経営面と法務面の2つの視点から、依頼者の方の事業拡大を業務として行っております。

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