[まとめ]
・PPM(プロダクトポートフォリオマネジメント)とは、キャッシュフローの観点から、事業や商品の最適な投資配分を検討するためのツールである
・PPMでは事業相互の関係(シナジーなど)や人材の視点が考慮されていないという弱点がある
以前当ブログでは、PPM(プロダクトポートフォリオマネジメント)の基本的な考え方について説明しました(前回の記事はこちらから)。
今回は、PPMの活用について考えていきたいと思います。
学校・塾におけるPPMの活用
PPMとは(おさらい)
まず、おさらいです。PPM(プロダクトポートフォリオマネジメント)とは、キャッシュフローの観点から、事業や商品の最適な投資配分を検討するためのツールでした。また、「相対的市場シェア(=お金の流入)」「市場成長率(=お金の流出)」として、事業や商品・サービスを4つに分類することが特徴でしたね。
「何のことやらさっぱり!」という方は、もう一度 前回の記事 を確認してください。
これが、PPMの模式図でした。では、これをどのように活用するかを考えていきます。
結論からいうと、「いかに問題児の事業を花形→金のなる木に移行させていくか」という部分がポイントとなります。
具体的に、学習塾の事業(サービス)を例に取って考えてみます。
PPMの具体例「学習塾」
このようにプロットできたとしましょう。
この学習塾の現状としては、
・小学生対象事業:業界(地域内など区切って考えても良い)でトップシェアを誇っている。また、中学受験のブームは収まりつつあり、市場全体の成長率は高くない。「金のなる木」であり、大きなキャッシュの流入がある。
・中学生対象事業:業界では高いシェアを誇っている。都立高校受験を強みとしており、一時ほどではないが市場は成長基調にある。「花形」であり、キャッシュの流入も流出も多い。
・幼児対象事業:業界ではまだシェアは高いとはいえない。幼児教育市場は依然と比べ大きくなっているといえる。「問題児」であり、キャッシュの流入が少なく、流出が多い。
・高校生対象事業:業界シェアは低く、市場成長率も高いとはいえない。「負け犬」であり、キャッシュの流入・流出ともに少ない。
このような形です。市場成長率などは日本全体のマクロの視点だけでなく、地域というミクロの視点での分析も重要なので、ぞれぞれの塾によって変わることになります(特に塾は商圏が限られているので、地域規模での環境分析が大切です)。
そしてPPMの考え方は、「金のなる木」で流入したお金を、問題児などに投資して市場シェアを伸ばす、というものです。
まず、花形はある程度の投資を続け現状のシェアを維持できれば、時間と共に市場成長率が鈍化し、金のなる木になる可能性が高いといえます。
しかし問題児は市場シェアが低い何もしなければ負け犬になってしまう可能性もあり、積極的な投資が必要ということです。
そしてここまで読んだ方は、「負け犬事業は撤退するべきだな」と思うかもしれませんが、一概にそうともいえません。負け犬事業はキャッシュの流入は少ない一方で流出も少ないため、利益額は少なくても利益率が高い事業にできれば続行の価値はあるといえます(狭い市場で戦う戦略をニッチ戦略と呼んだりします)。
つまりこの学習塾のPPMの観点からした戦略例としては、
・「花形」の中学生対象事業は現状維持投資を行う→「金のなる木」へ
・「問題児」幼児対象事業は積極的な投資を行う→「花形」へ
・「負け犬」高校生対象事業は撤退・縮小か維持かの意思決定を行う
というような形になります。
少し取っつきづらい戦略ツールですが、事業やサービスが複数ある企業・組織において視覚的に戦略策定が行えるため、便利であるといえます。
一方、デメリットしては、
・お金の流れとして可視化しづらい学校法人では適用が難しい(お金ではなく効果の大きさとして捉えていく必要あり)
・事業相互の関係(シナジーなど)や人材の視点が考慮されていない
などが挙げられます。こういった弱点を補強するために、その他の戦略策定の考え方も織り交ぜていくことが重要です。その他のツールに関しては次回以降説明していきたいと思います。
[まとめ]
・PPM(プロダクトポートフォリオマネジメント)とは、キャッシュフローの観点から、事業や商品の最適な投資配分を検討するためのツールである
・PPMでは事業相互の関係(シナジーなど)や人材の視点が考慮されていないという弱点がある
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