[サマリー]
・ポジショニングマップは軸の決定が重要。代表的な軸の例は「生徒の学力」「部活動」「学校行事」「校則」「入学金・学費」「サービス品質」など。
・2軸固定によるポジショニングマップだけでなく、他の軸によるポジショニングマップの検討も必ず行うべき


以前当ブログでは、経営戦略策定のツールとして「STP」の「P」にあたるポジショニングについて基本的な考え方を説明しました(「STP」についてはこちらの記事を、「P」ポジショニングについてはこちらの記事をご覧ください)。

今回は、ポジショニングを学校で考えてみるとどうなるかについて説明します。

学校におけるポジショニング活用のポイント

ポジショニングマップのおさらい

ポジショニングを考える際に便利なツールが「ポジショニングマップ」でしたね!前回の記事で説明した図をもう一度載せます。

ポジショニングマップ

このように2つの軸で他社とのポジションを見える化し、現状の当社のポジションを分析した上で、どのポジションに移行するべきかという経営戦略を策定する、というのがポジショニングマップの活用方法でした。忘れた!という方は前回の記事の確認をお願いします。

では、学校におけるポジショニングマップの活用について考えてみましょう。


学校におけるポジショニングマップ

まず、学校におけるポジショニングの軸となる要素(差別化要素)とはなんでしょうか。代表的なところでいくと、「生徒の学力」「部活動」「学校行事」「校則」「入学金・学費」「サービス品質」などが挙げられます。

ここまでの記事を読んできて下さっている方はお分かりかと思いますが、「入学金・学費」は安ければよいというわけでもなく、「校則」は開放的であればよいというわけでもありません。どちらも保護者・生徒に評価が高そうなので安くしたり開放的にしたりする案が思いつきますが、これらの指標はあくまで競合校とのポジションによって決まります。他校の学費が十分に高い状態で、自校の学費を下げても、有効な募集対策にはならないでしょう。
逆に、「サービス品質(授業や指導)」は高ければ高いほど評価が上がる要素になります。


ではまず、「生徒学力」と「校則」でポジショニングマップを作ってみます。
よりリアルなポジショニングを体感していただくために、私が勤務していた高校をモチーフにポジショニングマップを作成したものが以下になります。

学校におけるポジショニングマップ

このような結果になりました。「都」は都立高校、「私」は私立高校です。「都C」が自校で、競合校は商圏内の高校と特色が重なる部分があり生徒の取り合いが想定される高校をマップ化しています(商圏などについては専門的分析が必要ですので、詳細が知りたい方はお問い合わせ下さい)。

当校は都立K高校と進学校としてのポジションが重なっていることが分かります。
さらに校則を差別化の軸として見た場合でも、重なっている部分が大きいことがわかります。実は、都立K高校は場所も近く、戦略上非常に大きな競合校であることが想像されます。

では、このポジショニングマップから考えられる経営戦略について考えましょう。考えられるのは以下の2点です。

・現状より低学力、校則を開放寄りにすることで差別化を図る

あくまでポジショニングマップ上では差別化できますが、進学校が学力を下げていうというのは考えられません。この案は必然的に却下です。

・学力はあくまでも上昇努力に留め、校則を厳格よりにすることで差別化を図る

このポジショニングマップから立案される戦略があるとすれば、これです。
「校則を厳格化するってどういう意味だろう」という方も多いと思います。厳格化とは、校則を厳しくするということだけでなく、授業やその他指導・サービスもピシっと行うようなイメージが当てはまります。学校全体で、活動を真剣に取り組ませるイメージです。

生徒は全員が開放的・自由な校風を好むというわけではありません。生徒にも様々なニーズがあり、しっかりとした環境や雰囲気で学びたい、ルールもある程度厳しいほうが良いという意見も十分に見られます(行き過ぎはもちろんNGですが…)。

このように、ポジショニングマップを考える上では固定観念を捨てて、まずマップ上での結論から戦略を策定してみる→現状からみて実行可能な戦略かを検討する、というステップを踏むと柔軟な戦略立案を行うことができます。



今回の例に挙げたポジショニングマップによる分析からとるべき戦略をマップ化すると、こんな感じです。

学校におけるポジショニングマップ

ちなみに、このようなポジショニングマップを用いた検討は、少なくとも軸を変えた3つ程度のマップを作って検討するべきです。今回の例では「学力」「校則」でポジショニングマップを作成しましたが、ほかの軸を使って分類すると意外な結果となることも多いです。特に「学力」の軸を取り払うと、ポジショニングマップががらっと変わることになります(実は本校の例では「部活動の種類」の軸を加えて分類してみたところ、戦略の方向性が見えやすくなりました)。

自分の学校にあった戦略策定をするために、複数のポジショニングマップを作り、活用して頂けたらと思います。最後にもう一度、学校においても競争や差別化といった概念は非常に大切です。



[まとめ]
・ポジショニングマップは軸の決定が重要。代表的な軸の例は「生徒の学力」「部活動」「学校行事」「校則」「入学金・学費」「サービス品質」など。
・2軸固定によるポジショニングマップだけでなく、他の軸によるポジショニングマップの検討も必ず行うべき


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