[サマリー]
・人件費比率とは、経常収入に対する人件費の割合である
・人件費依存率とは、学生生徒等納付金に対する人件費の割合である



学校法人の財務分析指標の代表例として、「人件費比率」「人件費依存率」が挙げられます。今回は、この2つの指標について、その意味や計算式、財務諸表のどの部分から分析できるのか、目安の値はどの程度かなどについて説明していきたいと思います。

人件費比率と人件費依存率

人件費比率とは?

人件費比率とは、学校が支出する人件費の水準を測る指標です。人件費比率が適正水準より大きくなると、収支の悪化につながる恐れがあります。

計算式で表すと、以下のようになります。

人件費比率の計算式

人件費比率=人件費÷経常収入

このような計算式で人件費比率を表すことができます。つまり、人件費比率とは経常収入に占める人件費の割合のことなのです。ここで経常収入とは、事業活動収支計算書の教育活動収入と教育活動外収入を足した値のことです。特別収入は含まないことに注意してください。


通常、学校において人件費は最大の支出額となる項目です(後程確認します)。このような背景から、人件費比率や人件費依存率を算出分析することが重要となるのです。

人件費依存率とは?

人件費依存率とは、学生生徒等納付金に対する人件費の割合のことを指します。

人件費の割合を見るという点では人件費比率と同じですが、人件費比率よりさらにフォーカスした指標となります。

先に計算式から確認しましょう。人件費依存率は以下のような計算式で求めることができます。

人件費依存率の計算式


人件費依存率=人件費÷学生生徒等納付金



このような計算式で求めることができます。計算式を比べてみると、人件費依存率との違いは分母であることが分かります。人件費比率の分母は経常収支でしたが、人件費依存率では学生生徒等納付金となっています。学生生徒等納付金の代表的なものは、授業料収入、入学金収入、実験実習料収入などがあります。このような項目が学生生徒等納付金なので、当然事業活動収支計算書の収入のメインになるものです(金額が大きいです)。

もっといえば、経常収入の項目の1つが学生生徒等納付金による収入です。つまり、人件費依存率は人件費比率に比べ、人件費と比べる対象を絞った指標なのです。


なぜ絞るのかといえば、人件費は本来、学生生徒等納付金で賄うことが理想的とされているからです。実際には、例えば高等学校では補助金が多く支給される関係から人件費依存率が低い値となりやすいですが、1つの目安として人件費依存率は重要な位置付けなのです。


それでは、実際に人件費比率と人件費依存率を計算し、目安と比較してみたいと思います。

人件費比率・人件費依存率の目安

下の貸借対照表は、学校法人明治大学のホームページ上で公開されている、2018年事業活動収支計算書です。計算に使用する部分だけ抜粋して使用しています。

事業活動収支計算書
事業活動収支計算書

では、人件費比率と人件費依存率について確認していきます。

まず、2つの指標で使用する部分を色枠で囲ってみます。

事業活動収支計算書による、人件費比率・人件費依存率の計算
事業活動収支計算書による、人件費比率・人件費依存率の計算

2つの指標で共通して使うのが青枠の「人件費」です。一方、人件費比率の計算にのみ使うのが「教育活動収入計」「教育外活動収入計」、人件費依存率の計算にのみ使うのが「学生生徒等納付金」です。

では、実際に計算してみます。


・人件費比率=30,970÷(52,885+443)≒58%

・人件費依存率= 30,970÷ 40,359≒77%



このような値になりました。では、この値は高い水準なのか、低い水準なのかを考えます。
一般的に、大学の人件費比率の目安は55~60%程度、人件費依存率の目安は80~85%程度といわれています(日本私立学校振興・共済事業団)。もちろん、学科や規模などで異なってくるため、大きな目安として考えてください。

先程の明治大学の例で言えば、人件費比率・人件費依存率ともに目安の範囲に収まっているので、人件費について財務的に健全な状態であるということが分かります。

以上、人件費比率と人件費依存率について、意味や計算式、目安を説明しました。学校法人の財務分析は一般企業と異なり、聞きなじみのない指標も数多くでてきます。1つ1つの指標の意味を知り、学校の経営状態の把握に役立てて頂ければ幸いです。

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また、当事務所は学校教職員の業務改善・業務負荷軽減にも精力的に取り組んでおります。詳しくは、こちらのホームページをご覧ください。
「学校の業務改善コンサルティング」

事務所代表プロフィール

名前:木村 成(きむら じょう)

保有資格:
・中小企業診断士(経営コンサルタントの国家資格者)
・行政書士(行政手続、法律書類作成の国家資格者)
・日商簿記1級
・認定経営コンサルタント
・ファイナンシャルプランニング技能士2級
・中学、高等学校一種教員免許(元高校教員)

業務内容:
首都圏を中心に、学校や教育関連企業等の中小企業支援を業務として行っている。経営コンサルタントとしては、教育現場の業務改善や販路開拓のコンサルティングなどを中心に活動。行政書士としては、会社設立の代理や営業許認可取得の代理を中心に活動している。中小企業診断士・行政書士の2つの資格を活用して、経営面と法務面の2つの視点から、組織・事業の業務改善と拡大支援に励む。

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