[サマリー]
・1号基本金とは、有形固定資産を自己資金で取得したときに計上される金額である
・自己資金以外で有形固定資産を取得した際は基本金未組入額として、貸借対照表に注記される

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学校法人会計基準の特有の考え方の1つに、基本金というものがあります。この基本金は1号~4号に分かれており、貸借対照表に記載されます。

今回は、この基本金について、1号基本金に注目して解説していきたいと思います。

学校法人会計基準における1号基本金

そもそも学校法人会計基準とは

学校法人会計基準とは、私立学校に適用される会計のルールのことです。
公立学校には国立大学法人会計基準や独立行政法人会計基準など、学校法人会計基準とは異なる会計基準が適用されるので注意が必要です。

学校法人会計基準の必要性の1つに、財務状態の開示があります。一般的な株式会社は、会社の利害関係者(株主や債権者)のために、財務諸表の開示が法定されています。しかし、学校法人は配当や納税という仕組みがないため、学校の外部関係者に対する財務状態の開示の重要性が、株式会社ほどは高くないと考えられています。そのため、財務諸表の開示も各学校の判断に任せられています。

それでも、学校法人会計基準という統一した会計基準が必要な背景として、私学助成金が関わってきます。助成金配分の1つの基準として、学校法人会計基準は重要な位置付けなのです。

少し細かくなってしまいましたが、学校法人会計基準について詳しく知りたいという方はこちらの記事をご確認ください。

学校法人会計基準とは?わかりやすく解説





さて、この学校法人会計基準ですが、学校法人会計基準に沿って作成が必要な財務諸表には、「貸借対照表」「消費収支計算書」「資金収支計算書」などがあります。1号基本金が計上されるのは主に貸借対照表となります。

例えば、このような形で計上されています。

貸借対照表における基本金の位置付け

上記の貸借対照表は、専修大学付属高等学校のホームぺージで公開されているものです。学校法人において財務諸表の公開は任意ですので、このようにホームページなどで広く公開されている学校法人は素晴らしいと思っております。

赤枠で囲った部分に、基本金が並んでいます。2号基本金はありませんが、1号基本金が先頭にあることがお分かりいただけるかと思います。


では、1号基本金とは何かということについて、説明していきます。



1号基本金とは

1号基本金とは、有形固定資産を自己資金で取得したときに計上される金額です。

ポイントは、「有形固定資産」「自己資金」という2点です。

学校において有形固定資産というと、代表的な項目として「建物」「校舎」「教育研究用機器備品」「図書」などが挙げられます。まず、1号基本金はこのような有形固定資産を取得したときに組み入れられる金額なのです。


次に、自己資金について説明します。
有形固定資産の取得資金は、当然ですが自己資金だけではありません。例えば、借入を行って資金を調達し、有形固定資産を取得するという方法もあります。

仮に、全額借入金によって有形固定資産の取得資金を賄ったならば、1号基本金に組み入れられる金額は0です


あくまでも、1号基本金は「自己資金によって」有形固定資産を取得した際に組み入れるものなのです。


先程の例は極端でしたが、逆に言えば一部でも自己資金を使って有形固定資産を取得したならば、1号基本金が組み入れられます。
例えば、1億円の建物を取得する際に、4,000万円を自己資金で、6,000万円を借入によって調達した資金で取得したとしましょう。この時、自己資金で取得したといえる有形固定資産は4,000万円ですから、1号基本金に組み入れる額は4,000万円となります。

更に、借入で調達した6,000万円についても、将来的に1号基本金に組み入れることになります



なぜなら、借入金を将来返済したとして、その返済資金は自己資金を使っているわけなので、結局は自己資金で有形固定資産を取得したのと同様と考えることができるからです。

したがって、先ほどの6,000万円(1号基本金に組み入れられなかった借入分)は「基本金未組入額」として、貸借対照表に注記されることになります。

貸借対照表における1号基本金の基本金未組入額の注記

これは、先ほどの専修大学付属高等学校の貸借対照表の注記です。赤枠で囲った部分に、「翌会計年度以後の会計年度において、基本金への組入れを行うこととなる金額」と書いてあることが分かります。これがまさに、自己資金以外で有形固定資産を取得した際に生じた基本金未組入額のことです。この中期には0円と書いてあるので、基本金未組入額は生じていないのだということが分かります。

以上、学校法人会計基準における1号基本金について、実際の貸借対照表を見ながら説明しました。 学校法人会計基準は一般的な会計基準と比べると異なる点が多いですが、その分興味深いものだと思っています。
項目や背景となる考え方を理解し、会計基準に慣れて頂ければ幸いです。

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名前:木村 成(きむら じょう)

保有資格:
・中小企業診断士(経営コンサルタントの国家資格者)
・税理士 ・行政書士(行政手続、法律書類作成の国家資格者)
・日商簿記1級
・認定経営コンサルタント
・1級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP1級)
・中学、高等学校一種教員免許(元高校教員)

業務内容:
首都圏を中心に、学校や教育関連企業等の中小企業支援を業務として行っている。経営コンサルタントとしては、教育現場の業務改善や販路開拓のコンサルティングなどを中心に活動。行政書士としては、会社設立の代理や営業許認可取得の代理を中心に活動している。中小企業診断士・行政書士の2つの資格を活用して、経営面と法務面の2つの視点から、組織・事業の業務改善と拡大支援に励む。




[まとめ]
・ 1号基本金とは、有形固定資産を自己資金で取得したときに計上される金額である
・自己資金以外で有形固定資産を取得した際は基本金未組入額として、貸借対照表に注記される