[サマリー]
・総資本回転率とは、総資産に対する売上高の割合のことを指す
・総資本回転率は、PLの数値だけでなくBSの数値も使うことで資産効率を表す指標であるということが、他の収益性指標と異なる点といえる
財務分析において「総資本回転率」という言葉があります。経営者や会社員の方なら耳にしたことがある方も多いかと思います。
この総資本回転率は「売上高総利益率」や「売上高営業利益率」と同じように企業の収益性を表す指標なのですが、少し性質が異なる指標でもあります。
今回はこの総資本回転率について、重要性や計算方法、目安を説明していきたいと思います。
総資本回転率とは?
そもそも収益性分析とは
収益性分析とは、会社の売上高や利益、資産を比べることで、利益を生み出す力が十分か否かを分析することを指します。総資本回転率も、収益性分析の指標のうちの1つです。
ではなぜ収益性というものを分析する必要があるのか考えましょう。
たとえば、営業利益が1億円の会社Aと10億円の会社Bがあったとします。
この金額だけを比べれば、会社Bの方が儲かっているな、という結論が出ますよね。しかしこれは利益額を比べているだけであって、収益「性」を比較しているわけではありません。
収益性とは、利益を生み出す効率性です。
例えば先ほどの例で、会社Aは5億円の売上高から1億円の営業利益を生み出しているのに対し、会社Bは100億円の売上高から10億円の営業利益を生み出していたとしましょう。そうすると、会社Aの方が効率よく利益を生み出しているということが分かりますよね。これが収益性です。
売上高営業利益率という指標を使えば、会社Aは20%、会社Bは10%という収益性になります。
つまり、会社の収益状況を理解する上では、利益額だけでなく収益性を分析する必要があるということです。
収益性について全体像が知りたい!という方はこちらの記事を確認してください。
→収益性分析とは?指標の例や計算方法をわかりやすく紹介
それでは、本題の総資本回転率について説明します。
総資本回転率とは?
総資本回転率とは、総資産に対する売上高の割合のことを指します。
「回転」という言葉のイメージが分かりにくいと思いますが、これは後程説明します。まずは、計算方法から確認していきます。
総資本回転率の計算方法
ずばり、これが総資本回転率の計算方法です。
「総資本回転率=売上高÷総資産」
これが計算式です。例えば総資産が10億円の会社が20億円の売上高を計上していれば、総資本回転率は2回となります(単位は回です)。
では、「回転」の言葉について考えましょう。この回転とは、総資産が何回転したのかという意味だと思ってください。先ほどの例で言えば、10億円分の資産が2回転することによって、20億円の売上高を生み出している、というイメージです。このように財務分析では、分子に売上高がくる指標には「回転率」という単語が頻繁に採用されています。式を丸暗記するのではなく、式の意味を考えて頂ければ幸いです。
では次に、総資本回転率の目安について説明します。
総資本回転率の目安
総資本回転率の目安は、業種によって異なってきます。特に大きな固定資産を保有する製造業では、総資本回転率は比較的小さな値になりやすいです。
そういった意味で製造業・非製造業で分けるのであれば、
・製造業は1回以上
・非製造業は2回以上
一先ずはこれを目安として、下回っていれば思わしくない状態だと判断の材料にして頂ければと思います。しかしながら、あくまで「目安」であることに注意してください。同じ業種の中でも資産保有状態は異なりますし、総資本回転率が高くても財務的に危険な状態という可能性もあり得ます。財務分析では、様々な角度から企業を分析することが重要なのです。
最後に
ここまで総資本回転率について説明してきました。
最後に、総資本回転率の大きな特徴について触れたいと思います。総資本回転率の特徴は
資産効率を図る収益性指標であること
です。これが売上高営業利益率や売上高経常利益率といったほかの収益性指標と大きく異なる点なのです。
売上高営業利益率や売上高経常利益率は、PL(損益計算書)の中の数字だけで求めるため、「売上」「費用」「利益」といった項目の比較です。
それに対して総資本回転率は「売上」というBSの数字と、「総資産」というBS(貸借対照表)の数字を使って計算するため、資産効率を図ることができるのです。
これが、他の収益性分析との大きな違いとも言えます。
以上、総資本回転率について、重要性や計算方法、目安を説明しました。財務分析を行っていく上ではただ計算するだけでなく、その指標の重要性や結果が持つ意味を多角的に考えていくことが大切です。
[まとめ]
・総資本回転率とは、総資産に対する売上高の割合のことを指す
・総資本回転率は、PLの数値だけでなくBSの数値も使うことで資産効率を表す指標であるということが、他の収益性指標と異なる点といえる
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