「留保金課税」という制度をご存じでしょうか。留保金課税とは特定同族会社について適応される税制なのですが、あまり聞き馴染みがないという方が多いのではないかと思います。そもそも、特定同族会社についても知らない方が多いのではないでしょうか。
そこで当記事では、「留保金課税」について、その適用対象となる特定同族会社の定義も含め解説します。なお、関連事項として、同族会社の定義や、新しく法人を設立した際に必要となる各種届出や申請の種類については下記リンク記事にまとめていますので、そちらをご確認ください。
留保金課税について
同族会社とは?
まず、同族会社の定義をざっくり確認してみましょう。法人税法第2条1項10号には、同族会社が次のように定義されています。
会社(投資法人を含む。以下この号において同じ。)の株主等(その会社が自己の株式(投資信託及び投資法人に関する法律(昭和二十六年法律第百九十八号)第二条第十四項(定義)に規定する投資口を含む。以下同じ。)又は出資を有する場合のその会社を除く。)の三人以下並びにこれらと政令で定める特殊の関係のある個人及び法人がその会社の発行済株式又は出資(その会社が有する自己の株式又は出資を除く。)の総数又は総額の百分の五十を超える数又は金額の株式又は出資を有する場合その他政令で定める場合におけるその会社をいう。
上記定義は非常にわかりづらいので、シンプルにまとめると次の通りです(詳細については、当記事冒頭で紹介したリンク記事を参照下さい)。
同族会社とは、「3人以下の株主、及びその株主と特殊な関係にある者」が発行済株式総数又は出資総額の50%超を保有している会社をいう。
つまり、株主が1人しかいない会社や、4・5人株主がいたとしてもそのうち数人が他の株主と特殊関係(親族関係など)にあるような会社のことを同族会社と呼びます(ほかにもケースがありますが、ひとまずはこのような理解で問題ありません)。
それでは次に、特定同族会社について簡単に解説していきます。
特定同族会社とは?
最初に、特定同族会社の定義を確認します。
まず結論を簡潔に述べると、特定同族会社とは、「1つの株主グループによって支配されている会社」のことをいいます。
同族会社の定義は前述の通り「3つの株主グループによって支配されている会社」だったので、同族会社の中でもさらに特定グループによる支配が強い会社のことを特定同族会社と呼ぶということが分かるかと思います。
それでは、特定同族会社について、条文を確認していきましょう。
特定同族会社は、法人税法第67条1項および2項において、次のように定義されています。
第六十七条1項
内国法人である特定同族会社(被支配会社で、…清算中のものを除く。…)の各事業年度の留保金額が留保控除額を超える場合には、その特定同族会社に対して課する各事業年度の所得に対する法人税の額は、前条第一項、第二項及び第六項並びに第六十九条第十九項…の規定にかかわらず、これらの規定により計算した法人税の額に、その超える部分の留保金額を次の各号に掲げる金額に区分してそれぞれの金額に当該各号に定める割合を乗じて計算した金額の合計額を加算した金額とする。…
2項
前項に規定する被支配会社とは、会社…の株主等…の一人並びにこれと政令で定める特殊の関係のある個人及び法人がその会社の発行済株式又は出資…の総数又は総額の百分の五十を超える数又は金額の株式又は出資を有する場合その他政令で定める場合におけるその会社をいう。
…非常にわかりづらいと思うので、かみ砕いて説明していきます。
まず、第1項は、当記事の本題である特定同族会社の留保金課税について規定した条文です(後ほど詳しく説明します)。「特定同族会社」という単語が出てきていることが分かります。そしてこの特定同族会社の定義として、「(被支配会社で、…)」と書かれていますね。この第1項の「被支配会社」の定義が規定されているのが、第2項なのです。
次に第2項を確認してみると、少しわかりづらいですが、株主等の1人と、その者と特殊の関係にある者(親族など)によって、株式の50%超が保有されている会社のことを「第1項の被支配会社」と規定していることが分かります。この第2項については、当記事の冒頭でリンク記事を置いておいた同族会社の定義の記事で類似の内容を解説しているので、わかりづらいという方はそちらもご参照ください。
まとめると、この法人税法第67条1項と2項より、特定同族会社とは、「1つの株主グループによって支配されている会社」のことをいう、ということが分かります。
ただし、第1項においては、次のようにも記載されています。
「(資本金の額又は出資金の額が一億円以下であるものにあつては、前条第五項第二号から第五号までに掲げるもの及び同条第六項に規定する大通算法人に限る。)」
つまり、「1つの株主グループによって支配されている会社である、という要件を満たしていたとしても、資金の額が1億円以下の法人については、特定同族会社には該当しない」ということになります。
実際のところ、小規模な会社の多くは「1つの株主グループによって支配されている」という要件を満たすと思われますが、この「資本金の額1億円以下」という要件もほとんどの法人が満たすことになると思うので、結果としてこれら法人は特定同族会社には該当しないこととなります。
それでは、最後に当記事の本題である留保金課税について解説します。
留保金課税とは?
留保金課税とは、特定同族会社が一定以上の利益を社内に留保した場合、その利益に対して課される税金のことです。
先ほどの特定同族会社の説明の際、留保金課税の条文を少し確認したので、既にイメージが湧いているという方もいるかもしれません。
改めて、条文を確認してみましょう。法人税法第67条1項は次の通りです。
内国法人である特定同族会社…の各事業年度の留保金額が留保控除額を超える場合には、その特定同族会社に対して課する各事業年度の所得に対する法人税の額は、前条第一項、第二項及び第六項並びに第六十九条第十九項…の規定にかかわらず、これらの規定により計算した法人税の額に、その超える部分の留保金額を次の各号に掲げる金額に区分してそれぞれの金額に当該各号に定める割合を乗じて計算した金額の合計額を加算した金額とする。
一 年三千万円以下の金額 百分の十
二 年三千万円を超え、年一億円以下の金額 百分の十五
三 年一億円を超える金額 百分の二十
いかがでしょうか。全文だと読みづらいので、細かい部分は「…」で省略しています。上記の条文を読むとわかる通り、特定同族会社に課される法人税は、「通常の計算によって算出した法人税の額」+「一定以上の留保金額に対して既定の割合を乗じて計算した金額」となることになります。この2つ目の項の部分が、留保金課税といわれる部分なのです。
そもそも、会社が生み出した利益を留保しただけで課税されるというと違和感があると思いますが、元をたどってみれば会社とは株主によって支配・経営されているものであり、会社が生み出した利益はこれら株主は役員、従業員に分配されるべきともいえます。留保金課税は、これらの分配を積極的に行わず、過剰に利益を留保してしまう会社に対して、このような行為を間接的に制限すべく作られた制度なのです。
以上、「特定同族会社の留保金課税」の定義について説明しました。もしこの記事を読まれている方がこれから会社を設立するという場合、ほとんどのケースでその会社は同族会社に該当することになります。一方、資本金の額1億円以下という要件により、特定同族会社には該当しないケースがほとんどで、留保金課税の対象とはならないと思われますが、同族会社には、「みなし役員」の規定をはじめとして、同族会社にのみ適用される税制(制限)等もありますので、税務リスク等につき慎重に検討していただくことが重要かと思います。
また、同族会社とは別の観点ではありますが、会社設立後の手続は税務関係のものだけでも多岐にわたり、難しいかと存じます。法人を新設後に提出する書類の代表例は青色申告承認申請書ですが、他にも消費税課税事業者選択届出や適格請求書発行事業者の登録申請(インボイス登録申請)についても提出が検討される一方、これら申請・届出は制度を理解するだけでも非常に難解であり、申請・届出にリスクが伴うものでもあります。我々税理士でも、これらの届出・申請を検討する際は、細心の注意を払って行っています。
この記事を読んだ方の中には、これら手続を行うのが難しかったり、手続をする時間がなかったりといった方も多いのではないかと思います。
もし、顧問税理士をお探しであったり、届出や申請についてご自分でのご判断や手続が難しい、時間がないという方は、我々税理士にお気軽にご相談いただければ幸甚です。顧問税理士として、上記届出・申請を行います。また、毎月の会計記帳や年度末の申告についても税理士が行います。
以下、当事務所に顧問業務をご依頼を頂いた場合の流れなどを説明します。
当事務所(税理士)へのご依頼について
資料のやりとりと記帳代行
当事務所は原則として、レシートや帳簿類を毎月ご送付いただき、それを基に毎月試算表を会社へ送付するという流れで業務を行っています。
したがって、いわゆる決算のみのご依頼というのは原則としてお受けしていません。決算のみのご依頼となると、決算前の会社の状態が分からないため税務相談に乗ることができないだけでなく、毎月処理すべき会計記帳などを1年分まとめて短期間のうちに処理しなければならないからです。ご理解下さい。(ごく小規模の事業者の方については例外もありますので、ご相談下さい。)
また、当事務所は、法人の申告とセットで記帳代行を基本としています。
記帳代行とは、複式簿記による会計帳簿を、会社ではなく当事務所で行うというものです。この記帳代行については、一切引き受けない税理士事務所も存在するなど、税理士が敬遠するケースも多いですが、むしろ当事務所はこの記帳代行を原則としてます。記帳を通して会社の現状を理解することができ、申告や税務相談に良い影響があると考えるからです。
したがって、「自分で会計処理を行っているので、決算だけお願いしたい」というようなご依頼は基本的にお受けしていません。会社の会計処理を当事務所で確認・修正するのに同等以上の手間や時間がかかるためですので、ご理解下さい。なお、従業員が相当数いる会社であったり、経理部がきちんとしている会社など、会社ご自身で会計記帳を行っていただいて何ら問題ないケース(すなわち自計化の方がよいケース)もありますので、ご相談下さい。
ご依頼いただいた場合の毎月の流れ
①月初の資料のご送付
前月1か月分のレシートや、売上台帳などの帳簿、通帳などの資料を当事務所にご送付いただきます。ご送付は、紙媒体の他、電子データのメール送付などでもお受けしています。
②当事務所での記帳処理
①でご送付いただいたデータを基に、当事務所にて会計記帳を行います。
③試算表の送付
②の当事務所での記帳処理が完了し次第、試算表(収益、費用、利益、資産、負債の現況や推移をまとめた表)を会社へ送付します。
④決算と申告
①から③を1年分繰り返したのち、当事務所にて決算処理及び申告を行います。
このように、依頼者の方(会社)とのやりとりを密に1年の作業を進めていきます。
当事務所に法人に関する申告や記帳代行等を依頼するメリット
当事務所に法人に関する申告や記帳代行をご依頼・ご相談される場合、自力でこれらを行う場合と比較して、以下のようなメリット・特徴があります。
専門家たる税理士として検討・申告を行うこと
当方は、税金に関する計算や手続の専門家たる税理士として活動しています。したがって、法人に関する申告や届出等の税務について、丁寧かつ適格に計算や手続の遂行を行うことが可能です。
中小企業診断士として経営の観点を有すること
当方は、経営コンサルタントの国家資格者たる中小企業診断士の資格も活用して業務を行っているので、事業に関する経営面から知見から、相談等に対応することが可能です。
行政書士として各種許認可に関する相談にも乗ることもできること
当方は上記資格に加え、各種許認可申請の専門家たる行政書士としても活動しております。したがって、開業や新規事業に当たって必要となる許認可などの相談にも専門的知見からご相談に乗ることができます。
依頼者の方が抱えられている不安を少しでも解決できればと、その一助になれればと思っております。
大きくこの3点が、当事務所に法人に関する申告や記帳代行等を依頼するメリットだと自負しております。
当事務所へご依頼いただいた場合の料金
当事務所は、法人に関する申告や記帳代行として、次の通り料金を頂いています。
1.基本料金
以下、毎月の記帳代行や決算申告の料金となります。なお、会社規模や取引規模に応じて増額しますので、詳細につてはご相談下さい。
・毎月:2万円~
・決算及び申告:毎月の料金の5か月分
2.その他料金
・法定調書、償却資産税申告:1件あたり1.5万円
・年末調整:1人あたり3000円
なお、給与計算、税務調査立会など、その他業務については実態に応じて金額を検討しますので、ご相談下さい。
法人・個人に関する申告や記帳代行は当事務所にご相談ください
以上、消費税の簡易課税制度や、当事務所にご依頼いただいた場合の流れや料金等について説明いたしました。
当方は、税務の専門家たる税理士の資格を中心として、中小企業診断士や行政書士など各種分野の専門家たる資格を活用して業務を行っております。また、依頼者の方とのコミュニケーションを重視して業務を遂行しています。
一般的に、税理士への法人に関する依頼となると、長い付き合いとなることも多く、初めてのご相談やご依頼には不安も大きいと思われますが、どうぞ安心してご相談・ご依頼頂ければと思っています。
申告や記帳代行など、法人の税務に関するご依頼はぜひ当事務所にお任せ下さい。
業務のご依頼やご相談は、下記お問い合わせフォームからお待ちしております。
お問合せをお待ちしています。
事務所代表プロフィール
氏名:木村 成(きむら じょう)
保有資格:
・税理士
・行政書士(行政手続、法律書類作成の国家資格者)
・中小企業診断士(経営コンサルタントの国家資格者)
・1級ファイナンシャル・プランニング技能士(FP1級)
・気象予報士
業務内容:
東京都銀座にて、中小企業・小規模事業者の方の支援を業務として行っております。税理士としては法人や個人の申告代理、相続関連業務など、行政書士としては告訴状作成、会社設立に係る定款作成認証や営業許認可申請の代理など、中小企業診断士としては経営コンサルティングを中心に活動しております。税理士・行政書士・中小企業診断士の3つの資格を活用して、税務面・法務面・経営面の3つの視点から、依頼者の方の支援を行っております。
誠心誠意、迅速かつ丁寧な対応をモットーに活動しております。
皆様のご相談、ご依頼をお待ちしております。