令和3年(2021年)6月1日から、新たな「営業の許可制度」「営業の届出制度」が始まることをご存知でしょうか。営業許可制度は全ての飲食店に関わるものですので、大変重要な改定であるといえます。

当記事では、この新たな「営業の許可制度」「営業の届出制度」について分かりやすく解説していきたいと思います。

なお、営業許可申請の行政書士による代行については、以下のリンク記事をご覧ください。



新たな営業許可制度・届出制度とは

営業許可制度とは

営業許可制度とは、飲食店などを開業する際に保健所に対して申請を行う制度の事をいいます。

特に飲食店の場合は「飲食店営業許可」の申請手続を行う必要があります。このブログを読まれている方で、飲食店を経営されている方は一度はご経験したことがあるのではないでしょうか。


この営業許可制度が、平成30年の食費衛生法改正に伴い、変更されることとなりました。具体的に説明していきます。

新たな制度の内容

新たな制度の重要となるポイントは、「営業許可制度」「届出制度」の2つに分類されます。順番に解説していきます。

新たな「営業許可制度」について

新たな「営業許可制度」と現行の営業許可制度の変更のポイントは、

①食品衛生法の「要許可業種」の変更
②施設基準の変更

この2点です。

①食品衛生法の「要許可業種」の変更

ポイント(概要)

現在の要許可業種がどのように変わるのかなどのポイントは、以下の通りです。


(1)飲食店営業と喫茶店営業が統合され、「飲食店営業」になります。

(2)菓子製造業とあん類製造業が統合され、「菓子製造業」となります。

(3)みそ製造業としょうゆ製造業が統合され、「みそ又はしょうゆ製造業」となります。

(4)「水産製品製造業」「複合型そうざい製造業」「漬物製造業」「複合型冷凍食品製造業」が新設されます。

(5)乳類販売業や弁当等人力販売業、行商、給食供給者などが許可から「届出」制に変更となります。


以上がポイントです。とくに(1)の飲食店営業に関する変更は関係する事業者の方も多いと思いますので、チェックが必要と言えます。

内容(詳細)

現行の要許可業種(許可をとる必要がある業種)は34種あります。しかし、先ほど説明したような統合や廃止などにより、新たな制度では32種類に変更されることとなりました。

特に重要な業種とその内容をまとめたものが、以下の表になります。


・飲食店営業:食品を調理し、又は設備を設けて客に飲食させる営業
・調理の機能を有する自動販売機により食品を調理し、調理された食品を販売する営業:①部品等が直接食品に接触する機種であって、自動洗浄装置等の危害発生防止のための高度な機能を有してない機種による営業、②部品等が直接食品に接触する機種であって、自動洗浄装置等の危害発生防止のための高度な機能を有しているが、屋外に設置されている機種による営業
・食肉販売業:鳥獣の生肉(骨及び臓器を含む。)を販売する営業。食肉を専ら容器包装に入れられた状態で仕入れ、そのままの状態で販売するものを除く。
・魚介類販売業:
店舗を設け、鮮魚介類(冷凍したものを含む。)を販売する営業。魚介類を生きているまま販売する営業、鮮魚介類を専ら容器包装に入れられた状態で仕入れ、そのままの状態 で販売する営業及び魚介類競り売り業に該当するものを除く。
・菓子製造業:
菓子(パン及びあん類を含む。)を製造する営業。社会通念上菓子の完成品とされる食品 を製造する営業をいい、いわゆる菓子種の製造業は含まれない。
・乳製品製造業:
粉乳、練乳、発酵乳、クリーム、バター、チーズ、乳酸菌飲料その他の厚生労働省令で定める乳を主原料とする食品を製造(小分け(固形物の小分けを除く。)を含む。)をする営業
・清涼飲料水製造業:
生乳を使用しない清涼飲料水又は生乳を使用しない乳製品(飲料に限る。)の製造(小分けを含む。)をする営業
・食肉製品製造業:
ハム、ソーセージ、ベーコンその他これらに類するもの(食肉製品)を製造する営業又は食肉製品と併せて食肉若しくは食肉製品を使用したそうざいを製造する営業 
水産製品製造業:
魚介類その他の水産動物若しくはその卵(水産動物等)を主原料とする食品を製造する営業又は当該食品と併せて当該食品若しくは水産動物等を使用したそうざいを製造する営業。あじの開きや明太子などの他、改正前の魚肉練り製品製造業の対象であった、蒲鉾やちくわなどの食品も本営業の対象 
みそ又はしょうゆ製造業:
みそ若しくはしょうゆを製造する営業又はこれらと併せてこれらを主原料とする食品を製造する営業
豆腐製造業:
豆腐を製造する営業又は豆腐と併せて豆腐若しくは豆腐の製造に伴う副産物を主原料とする食品を製造する営業
そうざい製造業:
通常副食物として供される煮物、焼物、揚物、蒸し物、酢の物若しくはあえ物又はこれらの食品と米飯その他の通常主食と認められる食品を組み合わせた食品を製造する営業。
複合型そうざい製造業:
そうざい製造業を行う者がHACCP に基づく衛生管理を行う場合に限り、そうざい製造業と併せて食肉処理業、菓子製造業、水産製品製造業(魚肉練り製品の製造に係る営業を除く。)又は麺類製造業に係る食品を製造する営業
冷凍食品製造業:
そうざい製造業に係る食品を製造し、その製造された食品の冷凍品を製造する営業。対象はあくまで「食品、添加物等の規格基準」において規格基準が定められている冷凍食品の製造であり、製造に当たっては当該規格基準に適合する必要がある。
複合型冷凍食品製造業:
冷凍食品製造業を行う者がHACCP に基づく衛生管理を行う場合に限り、冷凍食品製造業と併せて食肉処理業に係る食肉の処理をする営業又は菓子製造業、水産製品製造業(魚肉練り製品の製造に係る営業を除く。)若しくは麺類製造業に係る食品(冷凍品に限る。)を製造する営業
漬物製造業:
漬物を製造する営業又は漬物と併せて漬物を主原料とする食品を製造する営業 
密封包装食品製造業:
密封包装食品(レトルトパウチ食品、缶詰、瓶詰その他の容器包装に密封された食品)であって常温で保存が可能なものを製造する営業
食品の小分け業:
専ら菓子製造業、乳製品製造業(固形物の製造に係る営業に限る。)、食肉製品製造業、水産製品製造業、食用油脂製造業、みそ又はしょうゆ製造業、豆腐製造業、納豆製造業、麺類製造業、そうざい製造業、複合型そうざい製造業、冷凍食品製造業、複合型冷凍食品製造業及び漬物製造業において製造された食品を小分けして容器包装に入れ、又は容器包装で包む営業

②施設基準の変更

新しい制度においては、許可を取得する場合、施設が第1の基準「各営業に共通する基準」を遵守するのに加え、業種に応じた第2の基準「営業ごとの特定基準」にも合致する必要があります。その他、生食用食肉やふぐを取り扱う施設は第3の基準も満たす必要があります。

第1の基準「各営業に共通する基準」

「各営業に共通する基準」は、営業の態様に関係なく全ての事業者の方に関わる基準となります。以下、例を紹介します。


・従事者の手指を洗浄消毒する装置を備えた流水式手洗い設備を必要な個数有すること。なお、水栓は、洗浄後の手指の再汚染が防止できる構造であること。

・冷蔵、冷凍、殺菌、加熱等の設備には、温度計を備え、必要に応じて圧力計、流量計その他の計量器を備えること。

第2の基準「営業ごとの特定基準」

「営業ごと特定基準」は、営業の態様によってそれぞれ異なる基準となります。以下、例を紹介します。


・菓子製造業
原材料の保管及び前処理並びに製品の製造、包装及び保管をする室又は場所を有すること。なお、室を場所とする場合にあっては、作業区分に応じて区画されていること。

・水産製品製造業

生食用鮮魚介類を取り扱う場合は、生食用鮮魚介類の処理をする専用の器具を備えること。

第3の基準「生食用食肉の加工又は調理をする施設、ふぐを処理する施設の基準」

「生食用食肉の加工又は調理をする施設、ふぐを処理する施設の基準」は、文字通り、生食用食肉の加工又は調理をする施設とふぐを処理する施設にのみ求められる基準となります。以下、例を紹介します。


・生食用食肉の加工又は調理をする施設

生食用食肉の加工又は調理をするための専用の機械器具を備えること。

・ふぐを処理する施設

除去した卵巣、肝臓等の有毒な部位の保管をするため、施錠できる容器等を備えること。

新たな「届出制度」について

新たな届出制度を簡単に説明すると、「今まで届出がいらなかった営業も、届出が必要となる」といったイメージとなります。

問題は、その届出が必要となる営業についてですが、いわゆる控除法により定義しているため、「これとこれ!」のように列挙することができません。控除法による定義とは、具体的には以下のようなものです。


届出が必要となる業種=全業種-食品衛生法上の要許可業種-食品衛生法上の要届出業種

ここで、「食品衛生法上の要許可業種」とは、先ほど解説した飲食店営業や菓子製造業のことをいい、「食品衛生法上の要届出業種」とは野菜果物販売業や集団給食などのことをいいます。つまり、これらに当てはまらない全業種が届出の対象となるという事です。
例えば、「食品の輸入をする営業」「運搬業」「容器包装に入った長期間常温で保存可能な食品の販売」などがこの届出の対象となるといわれています。


事業者側からすると大変分かりにくい印象となりますが、新たな業種に対して規制をし、食品の衛生を守るためには理にかなった制度ともいえるのでは、と感じております。


現在営業している事業者はどうすればよい?

ここまで、令和3年6月からスタートする新制度について説明してきました。この記事を読まれている方が最も気になるのは、「自分もまた新たに営業許可を申請したり、届出をしたりしなければならないのか?」という点かと思います。


まず、原則的な考え方について説明します。今回の改正では、新たな許可制度が施行されるため、現在営業している方であっても、原則、新規で許可を取得又は届出をする必要があります。
ただし、事業者の方の事業継続に配慮し、業種等に応じて、一定期間、新規許可の申請を猶予するなどの経過措置がとられています。

ここでいう「一定期間」とは業種によって様々ですが、最も代表的な例は以下のものです。

現在、飲食店営業(法の許可)を取得しており、令和3年6月1日以降も引き続き営業する場合

・現在法許可業種を営業しており、今回の改正でも法許可に区分される業種については、現在取得している許可の有効期間の満了(下の例では令和9年3月31 日)まで、新規の許可取得は不要です。
・ただし、有効期間の満了日までに、新たな許可制度に基づく新規の許可申請を保健所に行い、施設の検査を受け、許可を得る必要があります。

(東京都福祉保健局健康安全部食品監視課 資料より抜粋)


簡単に要約すると、現時点で飲食店を営んでいる方は、新しい営業許可の申請や届け出をする必要はありません。ただし、次の更新の際には、新しい基準に沿って新たに営業許可の申請をする必要があります。

ほっと一息、という感じですよね。現時点で飲食店をやっている方が6月になったら営業許可を取り直さなければならないというのは大変な負担であるため、行政側が配慮した形となっています。したがって、事業者の方は安心してお店を続けることができるのです。しかし、次回更新の際は、いつものような簡単な更新手続きではなく、新たな制度に沿った申請が必要となる点に注意して頂ければと思います。


飲食店関係の営業許可は行政書士にお任せ下さい

飲食店の営業許可申請


以上、新しい「営業許可制度」「届出制度」について説明いたしました。

営業許可申請は、お一人の方がこれから何度もするような性質のものではありません。依頼者様の大事なお店の営業を開始する時のみ、手続きを行うものです。知識や計画などが十分ではない状態で自力での営業許可申請は、大きな失敗を招きかねません。新しいスタートをしっかりと切り、お店を前向きに経営していくためにも、営業許可申請をお任せいただければと思います。


飲食店の営業許可申請代行は、営業許可申請の専門家である行政書士にお任せ下さい。

令和3年6月1日以降に営業許可の期限が切れるため、新たな制度に基づく許可申請をしなければならないといったケースにも対応しております。皆さまのお店・事業の継続と発展の一助となれれば幸いでございます。


飲食店営業許可申請(カフェや喫茶店の営業許可申請)の代行については、報酬として1店舗あたり料金6万円を頂いております。

この料金の中に、初回の打ち合わせから営業許可証が交付されるまでの全工程が含まれておりますので、ご安心頂ければと思います。別途、当該業務に関して相談料を頂くという事はございません。また当然ではありますが、この料金(6万円)については開業に関して発生した支出であるため、依頼者の方で経費処理(開業費として繰延処理も可)することができます。会計処理についても、ご不安がればご相談頂ければと思います。


業務に関するご依頼やご相談は、以下のお問い合わせフォームからお待ちしております。



当事務所について

代表氏名:木村 成(きむら じょう)

保有資格
・税理士 ・行政書士(行政手続、法律書類作成の国家資格者)
・中小企業診断士(経営コンサルタントの国家資格者)
・日商簿記1級
・認定経営コンサルタント
・1級ファイナンシャルプランニング技能士

業務内容
首都圏を中心に、中小企業・小規模事業者の方の支援を業務として行っております。行政書士としては、飲食店営業許認可取得の代理や会社設立の代理を中心に活動。経営コンサルタントとしては、販路開拓や補助金申請、創業融資支援などを中心に活動しております。中小企業診断士・行政書士の2つの資格を活用して、経営面と法務面の2つの視点から、依頼者の方の事業拡大を業務として行っております。