[サマリー]
・労働分配率とは、会社が生み出した付加価値に対して、どの程度人件費として支出しているかを示す指標である
・労働分配率を下げるには、人件費を下げるか付加価値を大きくするかだが、実際は簡単なことではないといえる



会社で働く方や経営者にとって、賃金水準というのは大きな関心があるかと思います。そこで今回は、賃金水準の妥当性を測る指標である「労働分配率」について、計算方法や会社規模による平均などを考えていきます。


労働分配率の計算と平均値

労働分配率とは?

労働分配率とは、会社が生み出した付加価値に対して、どの程度人件費として支出しているかを示す指標です。細かいですが、「率」とついている指標は何かを何かで割った値であるので覚えておくと便利かと思います。


この労働分配率を分析することにより、会社が適正な人件費を支出しているか否かを判断することができるのです。

それでは、労働分配率の計算式を説明します。

労働分配率の計算式

労働分配率は、以下の計算で求めることができます。

労働分配率の計算式


「労働分配率=人件費÷付加価値」


です。「率」の指標なので、単位は%になります。たとえば、会社が5,000万円の付加価値を生み出していて、2,000万円の人件費を支出しているのなら、労働分配率は40%といった具合です。

ここで、人件費についてはイメージが湧くと思いますが、付加価値については具体的にどのようなものなのか分かりづらいですね。
付加価値とは、


「会社が事業によって生み出した製品やサービスの中で、会社が付け加えた部分」


のことです。4,000円のものを仕入れて6,000円で売ったなら、生み出した付加価値は2,000円というイメージです。非常にざっくりとしたイメージを説明しましたが、詳細は以下の記事で説明しているので、詳しく知りたい方はこちらをご覧ください。
付加価値とは?計算式と生産性との関係



では、日本における労働分配率の目安(平均)について説明していきます。


日本企業の労働分配率

日本企業における労働分配率の推移について考えます。
以下のグラフは、内閣府が発表しているものであり、財務所の法人企業統計調査を出所としています。

日本企業における労働分配率の推移


青色の折れ線グラフが、日本企業の労働分配率の平均値です。直近の値は2012年度で終わってしまっていますが、約72%という値となっています。
おさらいですが、労働生産性=72%というのは、


生み出した付加価値のうち、72%を人件費に分配している


ということです。「ちょっと高いんじゃない?」と思った方、全企業の平均だけでなく、企業規模ごとの平均値を見てみましょう。

この調査結果を見ると、資本金10億円以上の企業の労働分配率は約61%であるのに対し、資本金1億円未満の企業の労働分配率は約80%となっています。
つまり、

企業規模が小さいほど人件費負担が重くのしかかっている

ということです。逆に言えば、企業規模が小さい会社の高労働分配率によって、全体の平均も高くなっているとも言えますね。


ここまでの内容では、

「労働分配率が高くて負担が重いから、労働分配率を下げよう」


という風に思う方が多いかと思います。しかし、労働分配率を下げるのは大変なことです。労働分配率は人件費÷付加価値なので、労働分配率を下げるには2つの方法があります。


①人件費を下げる
②付加価値を大きくする


この2つです。しかし①の人件費の削減についてはそう簡単なことではありません。単純に1人あたり賃金を下げる所謂不利益変更は難しいですし、従業員数を減らしてしまっては付加価値が小さくなってしまう恐れもあります。


同様に、②の付加価値を大きくするというのも、言葉すれば簡単ですが、実際は難しいものです。製造業であれば手待ちや歩行のムダ削減、サービス業小売業でられば関連購買促進による客単価向上など、様々な分析・改善を試行錯誤して付加価値を増やしていく必要があります。



以上、労働分配率について、計算式と日本企業の平均値について説明しました。
自社の現状を正しく知るためにも、ぜひ労働分配率や付加価値の指標を計算・分析して頂ければと思います。


[まとめ]
・労働分配率とは、会社が生み出した付加価値に対して、どの程度人件費として支出しているかを示す指標である
・労働分配率を下げるには、人件費を下げるか付加価値を大きくするかだが、実際は簡単なことではないといえる


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